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活動履歴(2023)

作家二年目。2022年と比べ、勝手がわかってきたようなきてないような。


【小説・文章】

『ハチ子、熒に吠ゆ!』 小説すばる2023年2月号掲載(中篇)

極限環境である火星で、行政に娯楽に多様な広がりを見せるメタバースプラットフォーム〝熒〟。主人公は〝熒〟で、犬耳少女型の古い電子生物を相続するが、そいつはメタバース内で急激に増殖し始めて……

2022年の『【加藤直人×榛見あきる 創作会議】起業家と小説家が本気でメタバースSFを考えてみた』で作成した二つのプロットの内、もう一つの方。『メタバース』に存在する一つの限界として〝光速〟がある。メタバースの理念の内にあるのは全地球的な共時性だと思うのだけど、それを地球外(今作ではもっとも身近な惑星として火星)まで拡張したらどうなるのか。つまりは〝光速〟では遅すぎるほどのラグにより共時性という理念が保てなくなってメタバースに置いて生まれる文化的隔絶はどうなるか、という考えが元になっている。

『天国の配信にふさわしいさよならで』 「トランジ 死者と再会する物語」掲載(短編小説)

〝皆さん、こんにちは! みんなの祈りで今日も冥福、死者系配信者のサカイ・ユウです!〟
「みんなどうも~、生者兼妹、サカイ・メィです」
 二人が並んで座っているロングソファは、中央を境に、座面の片側が〈この世〉であり、もう片側が〈あの世〉になっている。
〝この番組は、死別系姉妹が、世界中の〈共同墓地〉からお届けする、ふんわり〈あの世〉旅行実況です〟

じつはとても長い時間がかかっている短編。というのも、これは某えぬ氏が発案し、ハヤカワSFコンテストに応募した作品が元になっている同人誌だからだ。
シェアワールドとして描かれたこの本には企画段階から参加していたが、ハヤカワSFコンテスト応募時点では僕が他の商業依頼が重なり時間が捻出できなくなっていた。
その後、同人誌化されるにあたり、ありがたいことに再び声をかけていただき、作品を寄稿することができた。
個人的にかなり実験した作品だったが、SNSなどで好意的な意見をいただけた。嬉しい。


『冬は虫になり夏は永遠になる』 「Sci-Fire2023」掲載(短編小説)

 七本もある指の先まで、ある種の蔦植物とヤスデの仲間の共生系が疑似的な筋肉として詰まっていた。作業筐体は目的に応じたフェロモンを腕部外装の内部に放出することで蔦とヤスデの共生系を操作して腕を動かす。
 宝探しのために。

虫が書きてぇ、となった作品。虫によって身体を動かす半生体ロボットはめっちゃいいアイデアだと思っている。
榛見あきる、人体を分割しがち。
書いててとても楽しかったので逆に言うことがない。文フリで仲良くなった武石勝義さんに読んでもらえたのも嬉しみポイント。


『ヲタロポリス・アンバランス ―サイレント・ヴォイス・アクター―』 「5GⅡ」掲載(短編小説)

 星が降りしきる前方甲板で、声のASMRをひとり聴いてた。
〝今日も一日がんばったね。えらいえらい〟
 苛烈な表現規制が敷かれた大陸の日常の中で、その声だけがシオンの生きる理由だった。儚げなウィスパーボイスが言外に発する休息への誘いとは裏腹に、彼は額のバンダナを強く結び直す。
 今から戦いに行くつもりだった。シオンの日常から突如消えてしまった〝声〟を取り戻すための戦いに。

 書くのが楽しすぎた。結果、最大15000字のはずが、初稿で40000字を超えていた。流石にNGということでめちゃくちゃ削ってしまったので、いつか完全版を出したい。
 意図的なパロディをやるということで、パロディをする作品を年代と知名度(発行部数等を基準)を軸に分類して、戦略的にパロディを作品に組み込もうとした。たぶんその選定方法は間違っていないのだけど、それを短編でやるのが間違っていた説はある。



『あなたのメタバース探求:「ハレ」と「ケ」を探る』 「技術と文化 Vol.1 特集「メタバースの〈ハレ〉と〈ケ〉」」掲載(インタビュー)

 L4仮想生活研究所「ぱららぼ」さんが出している同人誌。中の人のひとりであるよーへんさんからお話をいただいて、インタビューを引き受けた。
 様々な分野の人々から見たメタバース空間について、
「〈ハレ〉と〈ケ〉」という軸で話をしていく企画で、僕はSF作家担当。
 よーへんさんの応答がとても的確で、すごい楽しいインタビューだった。楽しすぎて載っていないことを話しまくったのだが、よーへんさんが良い感じにカットしてくれた。感謝。


【小説・文章以外】

第61回日本SF大会『Sci-con 2023』:①『SFデンポー!』

人間六度さんに誘っていただいた企画。
人間六度さんの家に遊びにいった時、通常の「デンポー!」をプレイし、その場でSF縛りにしたら面白いのではと誰かが言い出したのがきっかけ。
その時はスケジュールの都合で参加できなかった長谷川京さんと今回こそ合流して、様々なSFファンダムの方々と交流できた。
というか、普通に遊んでいただけでは……? 


第61回日本SF大会『Sci-con 2023』:②『国外の土地を描くSF:台湾とチベット』

渡邉清文さんに誘っていただいた企画。
企画者の渡邉清文さんを司会に、溝渕久美子さんと榛見がそれぞれ台湾とチベットを、河野咲子さんが進行を務めてくれた企画。
国外を舞台にするにあたって気を付けていることや、書いていて面白いこと、どうやって読者に情報を開示していくか、などを話すことができた。
溝渕さんは現役の研究者ということもあり、本当に興味深く榛見的にためになる情報を教えてくれた。現地のSNSを活用するとか。


『ホルダンモリの「モンゴルの野を駆ける――アジアを巡る歴史と文字」』(ゲスト出演)

『榛見あきるさんと語る、モンゴル・チベットとSFの親和性』

仲良してもらってる在野研究者のホルダンモリさんが始めたシラスの番組
『ホルダンモリの「モンゴルの野を駆ける――アジアを巡る歴史と文字」』にゲスト出演。
ノンストップでチベット・モンゴルについて色々喋ってしまった。ホルダンモリさんの知識量は普通にヤバくて、ダライ・ラマ五世とか六世とかの話を振っても普通に返ってくる。あと森林限界の話とかめっちゃ面白かった。


Radio Moonside season2

藍銅ツバメさんとやっているWebラジオ。season2になって画面構成とかが色々変わった。
編集作業で榛見がノックアウト寸前になることもある。
season2となってゲストさんがぐっと多彩になったのがとても嬉しい。2023年のゲストは、
猿場つかささん、河野咲子さん、渡邉清文さん、人間六度さん、長谷川京さん、久永実木彦さん、十三不塔さん。
SF小説界の若手俊英が揃っている。豪華だ。


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