「あなたのため」と言ってくる人の99%は、あなたのために言ってはいない。
「誤解を恐れずに言うんだけど」という人は、どう考えても誤解されるようなことを言ったりする。
「失礼を承知で言うんだけど」という人は、明らかに失礼なことを言ったりする。
「恐れ入りますが」「大変申し訳ないのですが」といった枕詞はクッション材としての役割を果たしてくれるけれど、特定の枕詞に関しては、その人が本当にこれからも一緒にいる価値があるのかをフィルタリングする効果があると思う。
「誤解を恐れずに言うんだけど」とか「失礼を承知で言うんだけど」というのは、割とわかりやすく「これまずいな」ってアンテナが立つ枕詞だけど。
「あなたのためを思って言うんだけど」
この枕詞は、一見優しく見えるから、見破るのに時間がかかってしまった。でも間違いなく、この枕詞もヤバいワードだと思う。
例えば学生の時なら、「あなたのためを思って言うんだけど、ちゃんと勉強したほうがいいよ」とか。(大抵はそれを言う大人が成績を上げてほしいと望んでるだけ)
社会人になったら、「あなたのためを思って言うんだけど、ベンチャーになんて就職(転職)しないほうがいいよ」とか。(大抵はそれを言う大人が自分の勇気の無さや甲斐性の無さを認めたくなくて足引っ張ってるだけ)
世の中には優しさのフリをした優しくもなんともない行為がたくさん溢れていて、私たちはその中で優しくないフリをした本当に優しい行為をちゃんと見極めながら生きていく必要があるんだけど。
割と優しさのフリをした優しくもなんともない、自分勝手な言葉に振り回されてしまうケースって多いと思う。かく言う私の身の回りにも、そんな話で溢れてる。
私が新卒で入社した会社に就職を決めた理由は、OB/OG社員の人たちが優しかったからだ。彼らは私が就職活動で悩んでいるときに、「最後ははるぽんが信じた道を選べばいいと思うよ」と口を揃えていってくれた。
就職活動に携わるOB/OG社員はリクルーターと言って、採用活動を担ってもいるので、本来であれば自社を売り込む立場なんだけど。それでも自社のことをゴリ押しせず、私の思いを尊重してくれることが「本当の優しさだ」と思った。この人たちと働いてみたいと思って、その会社に入社した。
そして1年が経ち、今度は私がOG社員として後輩と話す立場になった。そのサークルの後輩は仲が良くて、一緒に仕事ができたら楽しいだろうなと思っていた子だった。私は先輩たちがしてくれたように「最後は○○が信じた道を選べばいいと思うよ」と伝えた。
蓋を開けてみると、彼女は別の会社を選んでいた。理由を聞いてみると、
「○○社の先輩から、まずは○○社に入るべきだと言われた。△△社(私のいた会社)には○○社に入ってから転職するルートもある。でも○○社には新卒の方が入りやすいから、○○社に入ったほうがいい、と言われた。」とのことだった。
彼女は「○○社の先輩が私のことを思って言ってくれたんです。だから決めました。」と言っていた。
私が聞く限り、○○社の先輩は「あなたのためを思って言っている」わけではなかった。○○社も△△社も、新卒だって転職だって入りやすさは似たようなものだった。正直、○○社の業界の方が忙しく、パワハラやセクハラも多いと聞くような業界だった。
何が悔しいって、彼女が選んだ別の道は、彼女自身の意思で決めたものではなく、その先輩の言葉によって決めさせられたものだったことだ。
そして何より悔しいのは、彼女の本当の意思を引き出す力もなく、みすみす別の会社へ言いくるめられてしまうような、自分の不甲斐なさだった。
「あなたのためを思って言ってる」という枕詞でオブラートに包み、自分の考えを押し付け、自分が思う通りに相手をコントールすることは、優しさでもなんでもない。それはただのエゴだ。
本当に優しい人は、「あなたのためを思って言ってる」なんて言わない。相手が本当に輝ける道を共に探し、共に歩もうとするだろう。時には嫌われる覚悟で、手厳しいことだって言うだろう。
優しいフリをしている人は、残酷な真実を提示する勇気はない。自分が嫌われてしまうのが怖いから。相手より自分のことが一番かわいいから、嫌われることなんて言おうとはしない。
だからあなたがもし、就職や転職、進学や留学といった新しい道を選ばなければならないときに、優しいフリをしている人に騙されないでほしい、と強く願う。
新しい道を選ぼうとしているあなたの背中を押さずに、「あなたのためを思って言ってるけど、そっちにはいかない方がいい」なんて言ってくる人がいたら、その人はあなたが付き合い続けるべき人ではない。
辛いけれど、新しい道を選べば新しい出会いがある。その新しい道を、自分の意思を、周りの声に左右されないで選んでほしいと思う。
「あなたのためを思って言ってる」という言葉を聞いたら、それは本当の優しさではないことを思い出してほしい。
もしあなたが選んだ道を周りの人が1人も応援してくれなかったとしても、私は応援するよ。きっと、その道の先で出会える人たちも、応援してくれるはずだから。自分を信じて進んでほしい。
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