拝啓、根明人間さま

お元気ですか？
お元気でしょうねぇ、毎日明るく楽しくハッピーに、大勢のご友人に囲まれて過ごしていることでしょう。

さて、今回この文章を書かせていただいたのには、理由がございます。
この駄文を最後までお読みいただければわかると思いますので、しばしお付き合いを。

先日、あまりにも気分が落ち込んで、「根明の人ってどうやって生きているんだろ？」と思ったのでググったところ、こんな記事を見つけました。
『明るい人の特徴まとめ』

驚きました。『明るい人すげえな？』って思う箇所ありまくりでしたよ。
この記事では８つのポイントが紹介されていたのですが、全部光り輝いて見えました。ええ、まじで。

だって無理じゃないすか？
毎日ニコニコしつづけて、表情筋が筋肉痛になったことないんですか？私はありますよ。大学生時代、コンビニバイトを始めたての時、なれない作り笑顔し続けたせいで口角が痛くて仕方なかったこと。そのあとは幼女と美少女が来た時以外、ずっと真顔でレジ打ってました。
行動だって、したくない日もあるでしょうに。あるでしょう？人と接したくない日。家を核シェルターばりに活用したっていいじゃないですか。人間に対してだって、グイグイいきすぎると『近いよう……怖いよう……』と引いてしまう、私みたいな臆病者だっているんですから、そんな前のめりにならなくてもいいんですよ？
あと、そのポジティブな思考回路ってどこで手に入れたんですか？私もあなた方のその素晴らしいスタンスを見習って会得しようと試みたのですが、どうあがいても『負け惜しみシンキング』くらいにしかならなかったんですけど。どこにいくらで売ってました？ポジティブシンキングって。

あなた方は素晴らしい。いつでも明るく、笑顔で、前向きで、たくさんの人に愛され、自分のこともちゃんと愛してあげられる。私の憧れの存在です。
でも、あなた方がよくできすぎているせいで、私のような劣等感と敗北感の混合物の塊は、そのままの姿でいると『ダメなやつ』の烙印を押されるのです。

基本的に、ネガティブ思考の根暗人間は自分に対してもネガティブ。
暗い自分が嫌いでたまりません。
自分のいいところなんて見つかりやしません。自分に魅力を感じないから自信が持てないし、他者と仲良くなれる見込みも飛び込む勇気も湧きません。

しかし、ありのままではダメだということはわかっています。
小学校のクラスで掲げる目標には、どのクラスも狂ったように『明るく楽しいクラス』が謳われていました。
つまり、それが世間の求めることなのでしょう？いわゆる『正義』なのでしょう？その正義を、私ごときがわがままを言って、足並みを乱すなんてできないんです。そこまでこの生き方にポリシーがあるわけでもないし、ずっと独りきりなんて嫌だし、普通に友達が欲しいし。

だから、私は自分の心に鞭打って生きてきたんです。
本当は、人に話しかけるのは苦手だけど、新学期・新生活にはもれなく自分から話そうと必死になるんです。加減がわからなくて、明るく振る舞いすぎて変人ないし狂人扱いされることもありましたが、なんとかお友達を増やすことはできました。ある程度仲良くなれれば無理なく喋れるようになるので、仲を深められるように努力しました。
おかげで友達はいます。多くはないけれど、ちゃんと嘘なく話せる友達が。

でも、基本スタンスが変わらないので、まだまだ苦労も絶えません。
いまだに知らない人がたくさんいる現場では愛想笑いしかできませんし、「断られるのが怖い」「相手は私となんか遊びたくないかも」「というか連絡来た時点で気分を害するかも」と考え込んでしまい、仲良くなった友達を遊びに誘うのも相当な勇気のいることのままです。

だから私は思うのです。『根暗な私にも生きやすい世界であれ』と。
ええ、そうです。あなた方への僻みです。やっかみです。八つ当たりです。
でも許してください。たまにはこうして暗さを押し出していかないと、普段意気込んで明るく振舞っているのと帳尻が合わなくなるというか、バランスが取れなくなるというか……。
とにかく身体に毒なんです。

私は明日も人に嫌われまいとヘラヘラ笑い、楽しそうに振る舞うと思います。
そんな時、「あいつ無理してるな」とか「根暗のくせに、嘘ついてらぁ」とか思わず、「頑張り屋さんだなぁ」と優しく微笑んでください。あなたのポジティブシンキングで救われる擬態根明人間がいることを忘れないでください。
また、根暗を全面に押し出しているタイプの根暗がいても、決して苛むことなく、適度な距離感を保ってあげてください。彼らはワイワイはできないかもしれませんが、少人数でいることは割と好きだったりしますので、ゆっくりゆっくり近づいてあげてください。

長文失礼いたしました。次に会うときはもう少し自然な笑顔を出せるようにしたいです。それではまた。

敬具
根暗人間より