クズライフハック

5月15日
早起きをしてバイトへ向かった。

『やることは簡単だから』と言われたが、立食パーティーの食器下げはトレーを持つ左腕の筋肉を破壊するのでただただ重労働である。痛みに苦しみながら下げものをしていると、私以上によたよたしている女性スタッフがいた。同い年か、年下に見受けられる彼女は、他のスタッフから指示を受けてもどこかぽやんとした印象だった。指示に対し返事をするも、すぐに動けずに立ち尽くしては先輩に注意されるなどうまく動けていないように見える。
「このホテル、よくシフト入るんですか?」
彼女のパッとしない動きの原因を突き止めるため、質問を投げかける。もしかしたら、このホテルのやり方に慣れていないだけなのかもしれない。
「いえ全然。まだ2回目です。この仕事始めてからまだ1ヶ月も経っていなくて……」
彼女は申し訳なさそうに答えた。なるほど、単純にまだ仕事内容を覚えていないから、指示を受けても訳がわからず立ち尽くしてしまうのだろう。
「わからないことがあったら、分かる人にスッと聞いたほうがいいですよ。わからないせいで動けなくて怒られたり、間違えて怒られたりするの嫌じゃないですか」
当たり前の助言をしたが、彼女はどこか納得していない。
「でも、みなさん忙しそうで声かけにくいんです……」
わからないことはない。忙しい時にベテランに仕事聞くと『なんでそんなこともわからないだ』顔されるもんね。
「サクッと聞けばみんな快く教えてくれますよ。もし嫌な顔されたとしても、怯むことなく『全部わかんねえよ新人なんだから』くらいの態度で聞けばいいと思います。わかったフリで詰むのは圧倒的に自分ですし、そもそも私たちには教えられる権利があるんで。」
極論を交えつつ、私的現場での振る舞い方講座をすると、彼女の顔が『そんな簡単でいいんだ!』と言っているかのように晴れた。
「もちづきさんってしっかり者というか……お強いんですね」
ええ、『我』がめちゃくちゃ強いです。

バイトを上がって、次は新宿の劇場へ。
ありがたいことにいただけたライブスタッフのお仕事だ。
本日の出演者数も大人数(EDとか全員ステージに乗れてなかった)で、お仕事をしながらたくさんのネタを袖で見ることができて幸せな時間だった。

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