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40代からはじめる認知症予防 - 意外と知らない3つの視点
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「認知症は他人事」
そう思っているあなたの脳では、すでにその兆候が始まっているかもしれません。
世界の最新研究が示す衝撃的な事実――認知症は40代から静かに発症し始めているのです。
しかし、この事実は危機感を煽るためではありません。
むしろ、希望につながる発見なのです。
なぜなら、40代からの適切な予防措置で、その進行を大きく抑制できることが分かってきたからです。
第1章:切実な現実 - なぜ40代から始めるべきか
◆静かに進行する脳の変化
「僕に限らず多くの人たちは40代から認知症がはじまっているのに気がつかない、いや、気がつかないふりをしているに過ぎない」
著者の高城剛氏は、このように警鐘を鳴らしています。
超高齢化社会を迎えた日本において、認知症は既に「国民病」と呼べる存在になっています。
しかし、最も注目すべきは、その発症時期についての認識の差です。
日本では依然として「認知症は高齢者の病気」という認識が主流ですが、世界的な研究では「認知症は40代から発症する」という見方が標準となっています。
この認識の違いは、予防への取り組み方を大きく左右します。
◆世界標準との認識の差
特筆すべきは、従来信じられてきた「アミロイドβ仮説」が見直されている点です。
アミロイドβタンパク質の蓄積が認知症の主な原因とする考え方は、世界的には既に覆されています。
これは、予防と治療の方向性を大きく変える転換点となっています。
予防医学の観点からも、40代からの取り組みは理にかなっています。
なぜなら、この時期からの予防的措置が、数十年後の大きな差となって現れるからです。
第2章:食事からの予防 - 糖質との向き合い方
◆糖質制限の重要性
認知症予防において、食事の役割は想像以上に大きいものです。
特に注目されているのが、糖質の摂取量です。
現代の日本人の食生活では、1日に約300gの糖質を摂取していると言われていますが、これは推奨量の5倍にも及びます。
小田医師は、具体的な数値を示しています:
「1食の糖質は20gが目安。1日60gまでならよしとしています」
この差は驚くべきものですが、ただ糖質を制限すればよいというわけではありません。
重要なのは、脳のエネルギー源を適切に確保することです。
◆ケトン体という味方
ここで注目したいのが「ケトン体」です。糖質制限によってブドウ糖の供給が減少すると、体はケトン体を代替エネルギー源として利用し始めます。
実は、これこそが人類本来のエネルギー利用方法だったのです。
著者は興味深い指摘をしています:
「人類がケトン体中心から糖をエネルギーに変えたのは、今からわずか数千年前のできごとだ」
この視点は、現代の食生活を見直す重要な示唆を与えてくれます。
◆薬との関係に要注意
認知症予防において、日常的に服用している薬にも注意が必要です。特に以下の薬は要注意とされています。
コレステロールを低下させる「スタチン」
胃酸の分泌を抑える「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」
「ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)」
頻尿などで処方される「抗コリン剤」
これらの薬は、認知機能を低下させる可能性があることが指摘されています。
実際、これらの薬の使用を中止することで、認知症の症状が改善したケースも報告されています。
第3章:歯の健康が脳を守る
◆意外な関係性
歯の健康と認知症の関係は、近年特に注目を集めている分野です。
特に重要なのが「歯周病」との関係です。驚くべきことに、歯周病菌が認知症患者の脳内からも発見されているのです。
具体的には、以下の3種類の細菌が問題視されています。
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)
タンネレラ・フォーサイシア(Tf菌)
トレポネーマ・デンティコーラ(Td菌)
これらは「レッド・コンプレックス」と呼ばれ、最も危険な歯周病菌として知られています。
◆噛む力が脳を活性化する
さらに重要なのが、咀嚼力と脳の関係です。
歯の根の周りにある「歯根膜」は、噛むたびに血液を脳に送り込むポンプの役割を果たしています。
1回の咀嚼で約3.5ミリリットルの血液が脳に送られ、1食あたり約600回の咀嚼で、実に2リットル以上の血液が脳に届けられるのです。
◆日本の歯科医療の課題
世界的に見て、日本の歯科医療には大きな課題があります。
80歳時点での残存歯数を比較すると。
日本:10本弱
イギリス:15本
アメリカ:17本
スウェーデン:20本
この差は、予防的な歯科医療の普及度の違いによるものです。
スウェーデンでは3か月に1回の定期検診を90%以上の人が受診しているのに対し、日本の受診率はわずか23%です。
第4章:予防の新常識 - 正しい歩行の重要性
◆脳を活性化させる歩行
運動、特に歩行は認知症予防に重要な役割を果たします。
人間の脊髄にはCPG(Central Pattern Generator)と呼ばれるリズム発生器が備わっており、これが安定した歩行リズムを作り出しています。
しかし、加齢や疾病によってCPGの機能が低下すると、歩行が不安定になり、転倒のリスクが高まります。
これは単なる怪我の問題だけでなく、認知機能の低下にも影響を与える可能性があります。
◆気持ちよく歩くことの重要性
歩行によって分泌されるドーパミンは、脳の健康に重要な役割を果たします。
特に「気持ちよく歩ける」状態を維持することが、ドーパミンの分泌を促進すると考えられています。
また、歩行には以下のような効果があることが分かっています。
足裏からの刺激による脳の活性化
脳のアセチルコリン神経の活性化
インスリン抵抗性の改善
脳の血流改善
第5章:明日からできる具体的な対策
◆食事の見直し
まずは、現在の糖質摂取量を把握することから始めましょう。
著者は「フリースタイル・リブレ」などのデバイスを使用して、自身の血糖値の変動を把握することを推奨しています。
具体的な目標
1食あたりの糖質を20g以下に抑える
良質なタンパク質とMCTオイルを積極的に摂取
空腹時血糖値110以下、HbA1c 4.85を目指す
◆口腔ケアの実践
歯周病予防は認知症予防の重要な要素です。
以下の対策を心がけましょう。
定期的な歯科検診(3か月に1回が理想)
適切な歯磨きと口腔ケア
必要に応じて古い金属の詰め物を最新の材料に交換
噛む力の維持・改善
◆運動習慣の確立
歩行を中心とした運動習慣の確立が重要です。
毎日30分以上の歩行
正しい姿勢での歩行
転倒予防のためのバランス運動
歩行の質にも注目(気持ちよく歩けることを意識)
◆◆おわりに◆◆
認知症予防は、決して難しいものではありません。
日常生活の中での小さな意識の積み重ねが、将来の大きな差となって現れます。
著者が指摘するように、これは「健康投資」なのです。
特に重要なのは、以下の3点です。
糖質摂取量の適正化
口腔内環境の改善
質の良い運動習慣の確立
今日から、できることから始めてみませんか?
その一歩が、数十年後の健康な人生につながっているのです。