おでかけやさんに気をつけて!〜新宿末広落語編〜
昨今はあれですな、こんなに日本中が数を気にすることは歴史でも無いんじゃ無いんですかね。病人の数を数えるってえとちょっと物騒ではありますが、命のことでございますから気になるのも無理はないのかもしれません。さて、世界中がこんなことになるなんて思っても見なかった2020年年始のこと、新宿の片隅で売り上げっていう数字を気にしている近藤って男と、下っ端で呑気に数字のことなんてなあんも考えていない小林って男が、新宿伊勢丹裏の要通りにあるオイスターバーに働いておりました。17時ごろからオープンして早数時間、客は人っ子一人現れません。
小林:正月からシフトなんてついてねーなー。
近藤:何言ってんだ、元旦は休んだろうが。
小林:元旦だけじゃあねえ。お客さんだって1月2日の夜なんかきませんよ。
近藤:去年は来たんだがなあ。どうも最近、台湾のお客が来ねえ。
小林:一本通りを挟んだ和風居酒屋みたいなとこ、あそこは列ができてましたよ。
近藤:和風居酒屋じゃねえよあそこはなあ…
と言いかけたところでお客さんが来たのか笑顔を作って
近藤:ぃらっしゃいませ〜
小林:おっといけねえ。準備をしねえとっとうわあ!
近藤:何やってんだ!
小林:ドレッシングが襲いかかってきたんですよ!
近藤:食べ物が人間を獲ってって食うわけないだろうが!うわ!酢臭えなあ!制服の替えはもうねえぞ、どうすんだ。
小林:ギャルソンエプロンですし、ちょっと尻は出るけどだいじょう…
近藤:馬鹿野郎、ちょっと尻を出して接客するアホな店がどこにあんだ。白いパンツならなんでも良いから探してこい!!
と正月の夜の街に放り出されたは良いが、いくら眠らない街新宿でも正月くらいはみんな店を早じまいさせている。途方に暮れて要通りをふらふらしていると、不意に営業中という電光掲示板が目の前に現れた。一昔前の喫茶店を思わせる店内に白いパンツとニットのセーターを着たマネキンが立っている
小林:こんなところに服屋なんてあったけか?まあ良い。あそこのマネキンに着せてる服をちょっと貸してもらえれば良いんだ。(扉を開けてなかにはいり)あの、お店、まだやってますかねー?
奥から出てきたのはVネックの黒いセーターを着た着た色っぽい女性である。
謎の女:はあい。開いてますよ。何をお求めで?
小林:あの、そこのね、マネキンが着ている白いパンツをね、ちょっとばっかし貸して欲しいんでさ。
謎の女:そこにあるやつかい?いいよ?
小林:助かります!でおいくらで?
謎の女が言った値段を聞いて小林が飛び上がる
小林:そんな安くていいんです?
謎の女はそれに答えて妖艶な笑みを浮かべた。カウンターに寄りかかった際に深いVネックから白いデコルテと胸の谷間がチラリと見える
謎の女:ええ、ただし、私がこれから提案する「おでかけ」をしてくれたらね?
小林:へ?
謎の女:明日の午前11:00、この紙に書いてある場所に来てもらうのがその服を貸し出す条件よ…
小林:(間髪入れず)わかりました!
謎の女:そんなにあっさり納得してもらうと、こっちも拍子抜けするわね
小林:へへへ、よくそう言われます。
謎の女:褒めてないわよ。明日、必ず来て頂戴ね。
次の日小林が紙に書かれた場所に来てみると……
後半へ続く!