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料理が先か器が先か

朝目が覚めた時から、その日に食べたいものが決まっていることがある。
だけど、今日はいつもと違っていた。
私の意志ではなく器たちの意志だった。
うちには150年ほど前に作られた韓国白磁が3点ほどある。
本当に150年も前に作られたものかどうかを見極める目は持っていない。
それでも、そうなんじゃないかなと思っている。
それは、その子たちが「話しかけてくる」からだ。
実際に声を発しているわけではなく、私の頭の中だけに聞こえてくるといったほうが正しい。
長い年月、使われてきた道具や器は自分の意志を持つようになることもあるのだとか。いわゆる「付喪神(つくもがみ)」だ。
うちの付喪神たちは結構おしゃべりで、3人(?)がバラバラなことを話していることも多いのだが、今日に限って3人とも
「今日は肉じゃががいい!」と声をそろえた。もちろん、声を無視して違う料理を作ってもいいが、そうなると後がうるさい。
「なんで違う料理にしたの、いじわる!」とか
「可愛げがない」とか。
この日は特に食べたいものが決まってなかったので、希望通りの肉じゃがを作った。
盛り付けると3人は大喜びした。
どの器に盛り付けるかは順番を決めている。3人が喧嘩をしないためだ。
ご機嫌な3人は「美味しそう」とか「いい感じに味が染みてそう」と
褒めてくれる。こんなに褒めてくれるなら、また3人のリクエストに応えて作るのもありかな。


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