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【レビュー】24菊花賞 ~戸崎が化けた トサキが差した~

この秋、戸崎はトサキに変わった。変わったというよりもトサキに化けた。

推奨 ヘデントール 4人気2着 240円

いつごろだったか。ユーイチ調教師がまだ現役の頃である。GIなんて検討しなくても「『ガイジン・ガイジン・武・福永』を買ってりゃ勝てる」と言われたことがある。実際に、真剣に検討していた私よりもそのいい加減な馬券術の方が回収率がよかったので、それは正しい格言だったのだろう。素直な私はもちろんその馬券術も取り入れた。そしていくつかのレースでおいしい思いをした。

なぜこんなことを思い出したのか。今日も「ガイジン、ガイジン、武」で決まったからだ。「戸崎はガイジンちゃうで」と訝しく思ったあなたは、以下の【予想もどきのエッセイ】を確認すればよろしい。戸崎がトサキに化けた経緯が確認できるうえに競馬の見方が変わること請け合いである。そして馬券で勝てるようになる。かもしれない。なってほしい。

さらに、昨日の富士STの【レビュー】も合わせ読んでくれたら鉄板だ。

今日もトサキは同じことをやった。それ以上でもなくそれ以下でもなく、今秋、自らが化けた騎乗を今日も繰り返した。この駄文がその必要性を書き散らかしてきた「知性」が備わったかのように。戸﨑の淀の成績がひどいとかなんだかんだとか、過去の傾向にすぎないデータ≒反知性的な切り口を根拠にした批判をあざ笑うように。

これほどまでに貴重で有意な分析視角による「トサキ論」を無料で公開したことを惜しむほどだ。でも大丈夫。11月からはちゃんと有料で読んでくれるから。知性あるあなたは、知的コンテンツへの課金を決して惜しまないことを私は知っている。

話を戻す。今日は現場に行かなかったのでTV観戦だった。NHKで観た。今までの鈴木康弘元調教師の歯切れのよい語彙の豊富な解説に慣れてたので、パドックのさしさわりのない解説をちょっと残念に思った。まぁこれからどんどん良くなっていくのだろうね。なんてったってダービージョッキーだもの。次に期待。次は天皇賞・秋だね。来週じゃん。

ゲートインを渋ったあとのスタート。カメラアングルが斜め後ろからだったから(菊花賞はこのアングルで仕方がない)ちゃんと出たのかどうかよくわからなかった。そう、出遅れ癖がついていた⑯のスタートのこと。【予想もどきのエッセイ】に書いたとおり、木村厩舎のスタッフさんの渾身の躾(←仕上げではなくあえて躾と言っている)やぞ。大丈夫に決まっているさと思ったとおりに大丈夫だった。

そのあとの位置取り。パトロールビデオで見ないと確かなことはわからないから(いつもいうとおりここではスクショは貼れない)各自で確認してほしいけど、⑯はちゃんとトサキにエスコートされてインに進路を取って、武さんと仲良く後ろに位置したことがわかる。TVで見る横からの映像では「後ろすぎひん?」となったかもだけど無問題。

そう。トサキの横にいるのが武さんなのでなにも心配することはなかった。大きなレースになればなるほど、武さんやルメールの近くは安心地帯だ。今日もそのとおりになった。

逆に心配してあげないといけなかったのは、インの好位を取ったように見えた1人気のノリさんの④だったんだ。これについては最後にまとめて書く。

ごちゃつくインとオンデマンドのバリ取りができるアウト。勝敗を分けたのはこんな言葉で説明ができるように各コーナーの位置取りにあったかもしれない。そんな各コーナーが菊花賞は6回もある。そこの攻防にこそ結果を分かつ複雑性があるから、ちゃんとそこをみて勝因、敗因、タラレバを見出しましょうというのがこのレビューの目的。

よく見ればわかるのだけど(よく見ないとわからない)、ちょうど1回目のゴール板を過ぎたあたりでヨシトミ先生の①が思いっきりヨレた(1:18辺り、レースの時計ではなくJRA映像データの時計。以下同じ)。あやうく⑮のオヤジにぶつかりかけたほど。こんなところに5Gの戦いがあったんだ。ちょうど④のノリさんの目の前で起こったことで、幸いに④には直接の不利を与えることはなかったけども、もしかすると心理面での影響があったかもしれないと思わせるくらいの突発事態。

その結果①はかかってしまい、おとなしく先頭を走ろうとした3人気⑩に競りかかっていき、⑩までが「やるのか①この野郎」とかかってしまった。その時点で⑩の菊花賞は終わったね。ダービーの除外といい、⑩はつくづく運の悪い馬だけど、どこかの大きなところできっと挽回できると思う。オーナーの人間性がそれを後押ししてくれるはず。来年あたり、気性が成長した頃合いのジャパンカップで逃げると面白いのかも。そう、ロジャーバローズ(19ダービー)で逃げた浜中の再現だよ。楽しみに待ちたい。

そんな感じでごちゃつく先頭やインをやり過ごしながら、向こう正面に差しかかるあたりで⑰が位置を上げるのに合わせて⑯も位置を上げた(1:50~10秒くらい)。思うままにペースアップできる位置を取れていた⑰武さんとそれをマークしていた⑯トサキ。ここが勝負のあやのひとつだった。

注目したいのは、ちょうどアウトを上がってくる武さんの⑰を横目で確認したときの最内の④ノリさんの動きなんだ。刀を鞭を抜いて気合をつけたことがわかる(2:03あたり)。⑰⑬⑯という強敵が自由に動ける位置にいたのが一目に確認できたことだろう。でも、インで閉じ込められているノリさんとしてできるのは気合を入れることだけだったのかも。そんなことを思う。

④がここで動ける位置にいたら結果はどうだっただろう。ゴールから遠いこんなところにもレース結果を分かつ本質的な要因が見て取れる。競馬の結果は、特定の一つの要素では決して分析し得ない複雑性に支配されることをあらためて痛感する。

④ノリさんが動けなかったのと対照的に自由についていけたの⑯トサキ。⑰についていったら、おまけのように⑬までを射程に入れることができたからね。この2回目の坂越えが始まるコーナーのバリ取りがそのまま勝敗を分けた。

今年の菊花賞は、坂を下り切った最終コーナーで前にいなきゃ勝負にならなかった。前にいた中で⑫松山だけが苦し紛れにインを取った他は、有力どころはすべて真ん中から外にバリ取りをした。

坂を下りた直後に先頭にいたのは武さんだった。そんな位置にいる武さんほど馬券を買ってる側からすると安心できるものはない。淀の外回りコースを好位で下りる武さんの雄姿は記憶に焼き付きすぎているから、その時点では武さんが勝ったと思ったもの。そういや武さんが初めてG1を勝った88菊花賞のスーパークリークも⑰ゼッケンだったな。

昔話はさておき、武さんを計ったように差し切ったルメールはやっぱしすごいし、それ以上にびっくりしたのはそんな武さんを差して2着になったトサキってガイジンジョッキーだよ。確かに「トサキ差せ!」を連呼したけど、まさか武さんを差すとは。びっくりしたけど、どうせなら1着までぶっこ抜いてほしかったぞ。

そんなトサキの⑯はさすがにゴール前は余力がなかったのかヨレていたけど、それでも2着に差したトサキはえらい。繰り返すけど、どうせなら1着までぶっこ抜いてほしかったぞ。

でね、そんなトサキのこと以上にちゃんと書いておきたいことがあるんだ。それはノリさんの④のことなんだ。

最後の直線では⑯しか見ていなかったから、ノリさんはレースに参加できていなかったかのようにみえて「そういやノリさんどこ行った?途中で流したんちゃう?」そんなことを思った私を恥じる。私の目は今日も節穴だった。

このレース、一番強い競馬をしたのは④ノリさんだった。最後の直線でダービー馬をちゃんと輝かせてくれた。どれくらいのものだったかは、横からの映像よりも正面からのパトロールビデオを見たほうが良い。

閉じ込められ続けた④を、坂の下りの推進力を利用しながら外に出し、絶望的な位置から差してきた。ノリさんがノリさんたる所以、ダービー馬がダービー馬たる所以を最後に見せてくれた。3000メートルを走る最後にそんな脚を使うか?というほどのもの。どれほどのスタミナなんだ。どれほどのポジションの不利だったんだと思わずにはいられない。

④の次のレースは有馬記念であってほしい。なぜなら、最後の差し脚に私には年末に再度ノリさんとダービー馬が輝く未来が見えたから。

昨日落馬してこのレースに乗れなかった川田さんも無事だったとのことで一安心。全馬無事でありますように。

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