『死刑刑事』(4)♯リレー小説参加
拙い文章ですが自分らの活動の宣伝がてら参加させていただきます。
ハネイサユさんのリレー小説参加作品です。まずはそちらをお読み下さい。
⑴ ハネイサユさん(https://note.com/8135/n/nf0b8efae0ef2)
⑵福耳の犬さん(https://note.com/fukumiminoinu/n/ne3cceb57c362)
⑶ハネイサユさん(https://note.com/8135/n/n259c0bb40c13)
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奴に言われるのも癪だが、確かに捜査の基本は足だ。
俺はもう一度今回の事件の現場を一つ一つ回ってみることにした。
「やはり目新しい発見はない…か。」
それもよくよく考えてみれば当たり前な話で、この現場ではすでに何人もの警察関係者が捜査を行ったのだ、今更俺一人注意深く現場を洗い直したところで何も見つかるわけがない。
聞き込みなんかも行ったが、やはり参考になる情報などは何一つ出てこなかった。
「結局のところ無駄足か…。」
結局その日、俺は一日現場を回っただけで、何一つ得るものもなく署に戻ったのだった。
「なんだかお疲れみたいですね。」
一日中歩き回った疲れと、自分の不甲斐なさに落胆する俺に声をかけてきたのはショートヘアで長身の女性だった。
彼女、上野田 愛はつい最近ここに配属になった新人警官で、最初に勝手がわからず廊下を右往左往していたのを案内してやったら妙に懐かれたのだ。
「まあな。」
「あんまり根詰めすぎるのも良くないですよ。そうだ、今先輩が受け持ってる事件、少し手伝わせてくださいよ。」
「馬鹿言え、お前みたいな新人が自分以外のことに首突っ込んでる余裕があるかよ。」
そっけなく返答をすると、彼女は拗ねたような様子で一度去っていく。何をするものかと思いぼんやりと見守っていると、デスクから何かを取るとすぐに帰ってきた。
「もうやるべきことは終わらせました!ほら、私のやってることって書類整理くらいなんですよ!私だって世のために事件の解決がしたいんです!」
整理の済んだ書類を見せて勝手なことを言う彼女に、俺は嘆息する。
長い付き合いではないが、もとい、長い付き合いではないのにも拘らず、こうなった彼女がとても面倒なことを俺は学んでいた。
「わかったよ。どうせ今回も言っても聞かないんだろ?また四六時中付きまとわれちゃ迷惑だし、手伝ってもらうよ。ただし、本当に少しだけだからな。」
「やった!」
彼女は小さくガッツポーズをとる。ダダを捏ねれば折れるとわかってるから付きまとわれるんだろうなと思いながら、俺は彼女に今回の事件の概要、山下と話した内容、そして今日の捜査の結果を淡々と話した。
「なるほど、でもなんだか不思議ですね。警察ですら誰も真相にたどり着けなかったのに、それを模倣できる人がいるなんて。」
「だからこそ、俺は奴が裏で何かやっていると睨んでいたんだが…。」
「本人も関与を否定、状況証拠的にも物的証拠的にも彼が絡んでいる可能性は低いと。」
「まだ、0じゃないけどな。俺はまだ何らかの手段で奴が犯行方法を書いたメモを誰かに渡したとか、そういうのを疑ってる。」
「でも、仮にそうだったとしたら彼と関係ない人物にも犯行方法が渡り得ますよね。結局捜査の手掛かりにはなりそうもないですね。」
俺は今一度大きなため息をつく。
「それにしても、例の彼は随分先輩のこと買ってるんですね。」
唐突な彼女の言葉に少し苛立つ。奴が俺のことを買ってるだって?社会のゴミみたいな連中に良いものであれ悪いものであれ評価されていると思うだけで反吐が出る。
「どういう意味だ?」
「だって、他の警察の誰も手掛かりを見つけてないから自分の所に先輩が来たってわかってるはずですよね?なのにヒントはあるかもしれないから、その足で捜査してこいだなんて、先輩なら見つけられるって信用されてるってことじゃないですか。」
「馬鹿言え、ただの挑発——」
その時俺は急な違和感を覚えた。奴は俺と初対面なはず。奴が俺を買っているなどとは上野田の想像に過ぎない。であれば奴はなぜわざわざ『捜査をし直せ』や『捜査を続けろ』ではなく『“その足で”捜査をしてきな』などという言葉を使ったんだ?
「その足で…。」
「先輩?」
上野田の心配そうな声を聴くや否や俺は椅子から勢いよく立ち上がった。
「上野田!出来した!今回ばかりは助かった!」
「あ、ちょっと先輩待ってくださいよ!どこに行くんですか!」
俺は居てもたってもいられずに、上野田の声を背中に受けながらまた現場へと繰り出した。