参加リポート:【オンライン】JBUG広島&JBUG岡山 #共同開催 「越境」
こんにちは。2020年6月21日にオンライン開催のセミナー
【オンライン】JBUG広島&JBUG岡山 #共同開催 「越境」に参加しました。
Backlogを通じたプロジェクトマネジメントの知見をリポートします!!
What's JBUG?
初めましての方にご紹介。
JBUG(Japan Backlog User Group)は、Backlogを通じて、プロジェクトマネジメントの知見やノウハウをシェアし、「働くを楽しくする」を目指す仲間の集まりです。
・ヌーラボさんの拠点、福岡・東京にとどまらず、大阪、高知、宮崎、沖縄、静岡など津々浦々に拠点があります。
・今回は、岡山と広島のメンバーが共同でオンラインでセミナーを開催しました。
講演1:『KSFを支えるbacklog』
株式会社ドリーム・アーツ、帆足 亮さんの講演でした。
・帆足さんのイメージするプロジェクトマネジメント
信頼がベースである。
信頼関係を実現するために、「一体感が得られる環境」が必要である。
でした。
・そのためには、
心理的安全性
率直さ
素早いフィードバック
良質なコミュニケーション
を実現しなければなりません。
・しかし、メンバーが一つのプロジェクトルームに集まることはなかなか難しいです。
・そこで、基盤として、Backlogを導入しました。
・帆足さんは、次の工夫をしました。
・All Open→とにかく全員をBacklogのメンバーにしました。全員がプロジェクトの状況を見ることができます。
・カテゴリーの工夫
課題のカテゴリーに、「気づいた・気になる」、「議論したい」を設けました。このカテゴリーでBacklogに対しての敷居が低くなり、積極的に意見が集まるようになったそうです。
・コメントの活用
作業の進捗状況を課題のコメントとして登録する運用を行いました。進捗の見える化が実現できました。
・今後のテーマ
帆足さんは、さらにBacklogを社内に浸透させるため、今後、以下のアクションを自分から行いたいと考えています。
①Backlogのノウハウの共有レクチャー
②コミュニケーション計画とのリンク
③APIを活用した他ツールとの連携強化
・たかくの感想
プロジェクトマネジメントに必要な「情報の見える化」、「情報の一元化」、「一体感の醸成」を押さえた上で、Backlogを導入した足跡が見えました。
講演2:『ちいさくはじめるBacklog』
株式会社クレオフーガ 逸見 誠さんの講演でした。
社内にBacklogを普及するために行った工夫について、お話しされました。
まず、Backlog導入前の問題をまとめました。
・コミュニケーションには、チャットを用いていた。
・開発チーム、営業、広報とチャットルームが個別に設けられていた。
・チャットルームが縦割りになり、相互間の情報交換が不自由になる。
・どのチャットルームに投稿してよいか迷う。
・チャットのコメントが多く、大事なコメントが放置される。
・質問と回答が混ざり合い、埋もれてしまう。
などでした。
そこで、Backlogを導入し、「開発部質問用」プロジェクトを設けました。
・「開発部質問用」プロジェクトの効果
①タスク一覧参照できるので、すべての質問を把握できる。
②タスクの中にコメント入力できるので、混線が起きない。
③現状把握がすぐできる。
でした。
・営業チームの課題解決
次に、逸見さんは、営業チームにBacklogを導入しました。
・営業チームは、チャットでのコミュニケーションで次のような課題を抱えていました。
①1つの案件で、やり取りが多く、大事なコメントが埋もれたり、コメントが混線し、情報がわからなくなる、情報を取りこぼす。
②情報を落とさないために、過去のコメントをコピペして、投稿する。そのため、1つのコメントの情報量が多くなり、手間がかかる。
・小さく始める
①まず、上長への案件確認依頼のためのプロジェクトを作り、小さくスタートしました。
・結果は上々
①営業チームからは、「確認が楽になった。」、「誰がボールを持っているかがすぐわかるようになった。」との声が上がりました。
②他チームからもBacklog導入の引き合いが起こりました。
③社長もBacklogのメンバーになったそうです。
④複数のチームが横断したBacklogプロジェクトもできたそうです。
・立ち上がりのサポート
逸見さんは、
①最初にBacklogのレクチャーを行う
②プロジェクトのメンバーに加わり、運用しながらアドバイスする
を行うことで、スムーズな導入を実現したそうです。
・たかくの感想
小さく、ハードルを低く、部分的に始めることは、心理的障壁を下げ、新しいツールの導入の王道だと思います。
LT1:小栗 潤一さん
10年以上、アナログ(主に紙メモ)でプロジェクトマネジメントを行っていた組織にBacklogを導入する。
そこから得た知見(チームの変化、ツール導入のポイント)について、お話しをされました。
LT2:上谷 崇広さん
工期:1ヶ月、要員:1.5人の短期スケジュールのプロジェクトを乗り切るために、Backlogを導入する。
その工夫とそこから導き出された気づきについて、お話しされました。
『Backlog World 2020 re:Union Episode. 0』
いよいよ、今回のメインイベント、広島修道大学 佐藤 達夫先生 の講演です。
ご存知の通り、佐藤先生は、4月18日の『Backlog World 2020 re:Union オンライン』に『プロジェクトリスク&クライシスマネジメント』をテーマに講演されました。
今回は、Epsode.0 として、佐藤先生が、今に至った、若き頃のエピソードをお話しになりました。
4月18日佐藤先生の講演アーカイブは、こちらです。まだの方、是非見てください。2時間10分頃からスタートします。
では、佐藤先生の講演をリポートします。
・おさらい
前回の佐藤先生の講演をさらっとおさらいします。
①プロジェクトマネージャのミッションは目標を達成すること
②そのためには、トラブルは潰す
③プロジェクトマネージャは自分に求められているものを知ること
④プロジェクトマネージャは自分ができないことを知る
⑤プロジェクトマネージャは、他に知見を求めるべき
です。
では、佐藤先生がこのような知見に至った、Episode.0、スタートです。
・責任をとるということは、自分でやることではない。
これは、佐藤先生が駆け出し時代に常駐先のマネージャーに言われたコトバです。
このコトバの経緯はヘビーです。
某大企業の工場の生産管理システムの改修を担当する。
要員は、佐藤先生+プログラマ2名
カットオーバーは4月20日!
3月31日でプログラマ2名は、業務を離れる。
ここからが問題なのです。
2名が離れた後で、プログラムをチェックすると、行われるべき修正が行われていなかったのです!
これだけでも、💦💦です。
若き日の佐藤先生、ここから
定時後に夜中までプログラムのメンテ
土日出社してプログラムのメンテ
とガンバりましたが、ついに限界。
上位会社のマネージャーに状況を報告。
そして、上位会社のマネージャーは、「早く言ってくれよー。」と人をアサインして、プログラムの修正は進みました。
そして、迎えたカットオーバー当日、
午前中何もなく、ホッとしたのもつかの間、午後になるとトラブルの電話でオフィスの電話がパンクしました。ワールドワイドなシステムだったので、時差により、海外の工場から時間差で問い合わせが殺到したのです。
後日、辛い気持ちを抱えた佐藤先生を赤提灯に連れて行った、上位会社のマネージャーが言ったのが、「なんでお前は片意地はってんだ。責任をとるということは、自分でやることではない。」でした。
佐藤先生の
・他人を集める
・できないことを知り、他の知見を求める
という知見は、こんな出来事から生まれたのです。
・マネジメントは素でやるな
このコトバは、佐藤先生が所属していた会社の社長から言われたことがきっかけで得た知見です。
当時、佐藤先生はプロジェクトマネジメントで実績をあげ、会社でも知る人ぞ知る存在になっていたそうです。
で、佐藤先生に突然、社長が話をしたいと言ってきたそうです。「なんだろう?」と訝しげに社長に会うと、社長は開口一番
「人を使うのは好きか?」
そこで、佐藤先生「いいえ。仕事だからです。」と答える。
すると社長、「だよな、人を使うなんて、ろくなもんじゃない。」と一言。
ここから、佐藤先生は
・プロジェクトマネジメントは仕事として行う
・人は信用しない
・人の仕事を評価する
という知見を得たそうです。
・ちゃぶ台は一度だけひっくり返す
さて、「ちゃぶ台って何?」と思ってる平成生まれの方へ。「ちゃぶ台、そして、ちゃぶ台返し」とは、こういうものです。
では、佐藤先生の「ちゃぶ台返し」エピソードです。
佐藤先生の会社は、某金融機関のシステム開発に参画していました。
プロジェクトは難航し、会社の中でプロマネだった佐藤先生は、矢面に立ちながら、残業、土日出勤を繰り返していました。
そんな中で、事件が起こります。
上位会社のエンジニアがバックアップの取得に失敗し、佐藤先生のチームが作ったソースコードが消失してしまったのです。
それを進捗会議での報告で知った佐藤先生、「やってられっか!」と思い、「この状況では、これ以上、協力できません。」
「引き揚げさせていただきます。」
というだけでなく、ホントにチームで引き揚げてしまったのです。
慌てた上位会社は、すっ飛んで謝罪に来て、コードの復元も上位会社の担務として行われたそうです。
この時から、それまで居丈高だった上位会社が対等の関係になったそうです。
「怒るべき時には怒る、ただし、それは最後の切り札!」というのが、ボクの思ったことです。
・圧力に屈しない
大事なことです。では、佐藤先生のエピソードを紹介します。
佐藤先生が携わる新規プロジェクトのメンバーに、国の機関に出向しているメンバーがいました。佐藤先生は、キックオフには戻ってきている前提で、メンバーの頭数に入れていました。
ところが、キックオフ直前に、その国の機関のお偉いさんがやってきて、
「出向期間をもう1年延長してほしい。」と言い出したそうです。
で、佐藤先生に向かって、「ここで、話を呑まなければ、私、上(上司)に話しますよ。」と圧をかけてきたそうです。
でも、さすが佐藤先生、ひるみません。
一言、「どうぞ、そうしてください。」
そのお偉いさんは、
「佐藤さん、頭いいね。」と言い残して、去って行き、出向していたメンバーは、キックオフまでに、戻ってきたそうです。
佐藤先生には、お見通しだったのです。
「上司に泣きつくということが、自分の無能さをさらけ出すことになる。」ということが。
さすがです。佐藤先生。
・佐藤先生の憂い
Episode.0 の締めとして、佐藤先生は、現在の状況に対する、憂慮をお話しくださいました。
佐藤先生は、2006年に次の本を出しました。
スゴい、プレミア付いてる。(笑)
佐藤先生は、2006年に次の意図を持って、本を書いたそうです。
・プロジェクトマネージャを育成しようという考えも、育成しようという仕組みも全くない。
・現場に放り出し、生き残った人間を戻して、勝手にプロジェクトマネージャに位置づけているのが現実。
・プロジェクトマネージャの育成法を明確にし、プロジェクトマネジメントを誇りある仕事にするのが喫緊の最需要課題である。
しかし、現状はどうでしょうか?
佐藤先生は、本を書いた14年前と、状況が変わっていないことを憂い、問題視しています。たとえ、Agileのように開発手法に変化が現れていても。
ボクも、佐藤先生の考えに同意したいと思います。
この参加リポートを書いている、2020年6月22日、日経 XTECHにこの記事がアップされました。
※有料記事です。興味のある方は、読んでみてください。
日経BPですら、プロジェクトマネージャをエンジニアのキャリアの延長線としか捉えていないのが、如実にわかります。
でも、JBUGもあるし、みんな、ガンバろう!!
では、この辺で。