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夢と知りせば覚めざらましを

思いつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば
覚めざらましを

小野小町

あの人のことを想いながら眠ったから夢に出てきたのだろうか。夢と知っていたのなら覚めなかったのに。


 早朝から仕事に向かうサラリーマンと、荷物を運ぶトラックだけが行き交う街。好きな人と2人、歩道の段差に腰掛けて、肩を寄せ合ってただ時を過ごす。


今朝見たのはそんな夢だった。目が覚めて土砂降りの窓の外をぼんやり見ていたら、この小野小町の歌を思い出した。


あの夢の中で妖精みたいなのが出て来て「これは夢です。あなたが望めば一生ここにいれますよ。」と囁かれたとしたら、私はもう現実世界には帰ってこなかっただろう。


それが幻想と分かっていても、そこに縋り付きたいのが私たちなのだから。


レム睡眠という言葉もなかった時代にも、人々は夢に思いを馳せていたのね。


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