FRDCの音楽と私

　仰々しいタイトルになってしまったけれど、超大作を書くつもりはない。むしろ、取り留めもなく、ぼくがフレデリックの音楽に出会ったきっかけとか、そこからのハマり方とかフレデリックの音楽に救われたときのこととか、曲を聞いていて思ったこととかを書いていく感じになる。
　ぼくが持っているCDはこれを書いている時点では『フレデリズム』1~3と、『OTOTUNE』『TOGENKYO』『優游涵泳回遊録』『CITRUS CURIOCITY』なので、なにか曲の話をするときは基本的にこの範囲からになる。

　フレデリックを知ったきっかけは、ぼくをよく知る友人に「音楽の趣味からして、多分お前はフレデリックも好きだと思う」と勧められたことだった。
　YouTubeチャンネルを検索し、恐ろしく再生数の多い一曲を再生してみるとなるほど面白い。追加で二、三曲聞いてみて確かにこれは良いなあと思った。歌詞やメロディの繰り返しや畳み掛けが特徴の曲は、ぼくを波に乗せてどこかへ連れていくようだった。
　2021年の夏に、ぼくはそれ以前の無理が祟って心身の調子を大きく崩した。常に倦怠感が付きまとい、思考は滞り、濁り、しかも全て最悪のほうへ向かっていってしまう。読書などの趣味もほぼ出来なくなった。気を紛らわせるために何か聞こうと思っても、既に好きだったアーティストの曲は何も聞けなくなっていた。インストゥルメンタルの曲も、考え事の隙が出来てしまって、落ち着かなくて聞けなかった。
　ふと、フレデリックのことを思い出した。初めて知って聞いてから半年ほど経っていて、ほとんど忘れていた頃に突然意識に昇ってきた形となる。
　YouTubeでMVが公開されている曲のうち、「オドループ」「リリリピート」「オワラセナイト」をとにかく繰り返し繰り返し聞いていた。曲をエンドレスで身体に流し込んでいる間、精神を掻き乱す思考は鳴りを潜めて、穏やかにじっとしていられた。秋になってようやくフレデリックの他の曲を聴いていったりもともと好きだったアーティストの曲を聴いたりできるようになったが、それまでは本当に自分の思考に殺されかけて狂いそうだったので、ぼくはひと夏をフレデリックに救ってもらったといっても過言ではない。今でも本当に感謝している。

　そのことを、2024年の初めにふと思い出した。思えば二年半は忘れていたことになる。三度目の正直ということで、今度は広く色々な曲を聴いてみるかと手を伸ばし、ぼくはとうとうフレデリックに魅せられたのだった。出会いを考えればやや遅くはあるが。
　しかし、同じ音楽がぼくの人生に三回現れているというのもすごい話である。フレデリックの曲は聴く者にその存在を忘れさせてくれない。暫く経って聴き返しても、新しく聴く曲でも、「ああ、これ」とわかる独特の雰囲気。
　フレデリックの曲は、聴き手が楽しみ方を選べる。歌詞を吟味しても面白いし、健司さんの歌声を含めた曲全体の音の波に浸っても気持ちいい。
　雨、夜、音楽、踊り、泳ぎ、コミュニケーション、瞬間、退屈やありきたりさの打破、そういうものを歌う、どこかへさらってくれるような、あるいは匿ってくれるような曲たちが本当に好きだ。
　静かな夜に融けていくような落ち着いた曲も、牙を剥いて進む方向を睨み、不敵に笑うようなギラギラした曲も、聞いていて自然と身体の一部でリズムを取ってしまうような曲も、暗く湿度の高い曲もあるけれど、たまに他の曲の面影が見え隠れするのはある程度モチーフが共通していることによるものだろうか。
　でも、同じモチーフを登場させながらシーンを切り取る角度はずっと変化し続けていて、それゆえにフレデリックは螺旋階段を昇るように年数を経てきたように思える。的外れなことを言ってしまっていたら恥ずかしいな。なんというか、ある地点から別の地点への一方通行的な移行ではなくて、複数地点を周回しながらすごさを更新している感じ。上手く言えないが。
　曲やライブで「〈あなた〉のための音楽」ということを示してくれるのも心強い。すごく活力になる。
　先日「FEB」を初めて聞いたとき、「今年の季節は夏が長すぎたな」という歌詞のところで、この曲はぼくの視界を共有して思いを代弁してくれているんじゃないかという錯覚が起きた。曲そのものは世界に向けられているけれど、ぼくは時々「この曲は自分にしっくり来る」と感じたり、あるいは「この曲に似合いたい、着こなしたい」と思ったりする。ちょうど良い細やかさなんだと思う。
　最近はひたすら『優游涵泳回遊録』をアルバム通してリピートしている。テーマと情景が一貫していてまとまりがあり、それでいて緩急自在で、言葉のリズムも音楽も快くて、本当に隙がない。全曲とても好きだが、特に「midnight creative drive」に惹かれている。

　歌詞の言葉の並びとか、曲調とかでここが好き！　って語りたいところはたくさんあるけど冗長になってしまうので一度ここまでで。
　2/24のライブ、初めて実際に見るフレデリックのライブになるので楽しみ。