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呪文をかけないで。
「貸してあげたら?」
「押すのはダメって約束してね」
ちょっとした腹痛で10分ほどトイレにこもっていたら、
聞こえてきた夫の声。
声こそ荒げていないけど、温和な彼には珍しく、イラついているのがわかる。
場面は容易く想像がつく。
3歳むすめが大事にしているものを、まもなく1歳ヤンチャむすこが、触りに行っている。
やめて!だめ!こないで!
○○くん抱っこしててよ!
涙ながらに訴えている。
ついには我慢の限界を超えて、弟を押し退けた、そして転んだ、のだろうと思う。
※横で大人が見てるから事故は起きていない
これは夫不在の平日夜の日常だ
と思った。
弟は可愛いけれど、自分の大切なものを口に入れたり。投げたりされたくないのは当たり前。
それなのに、そんな気持ちに寄り添ってもらえることもなく、貸してやれと言われたり、正当防衛のラストの行為だけ怒られたり。
ああ、これ、わたし毎晩やっているなぁ…
とトイレで思う。
届かない叫び
離れた場所で、その絵を見ずに音だけ聞いていたら
明らかに、悪いのは夫(ではなく、毎晩の私)。
3歳で毎晩こんな気持ちにさせられて、弟がいなかったら、もっともっと大切にされていたはずの、彼女の「おもい」がとどかない叫びになってしまって、それはすべて、わたしのせいだなぁと。
もちろん2人のこどもは比べようなく大好きで可愛い。
そして、1人じゃなく2人いるから、物理的には、どちらかだけに100%向き合うのは無理。
だけど、もっとやりようがあるなぁと。
幼い頃のわたしの記憶
わたしには3歳離れた妹がいて、大人になった今でこそ、別人格の生き物として、そして、やはり血縁という「ゆかり」をどこかに感じながら、良き関係性を持って過ごしている。
けれど、実家で暮らしていた頃、
「妹がいてよかったなぁ」
「可愛いなぁ」
なんて記憶はほぼない。
関わる大人(特に、親)たちに、
「●●だけ可愛がって、最低」とか呟いては(いや時に叫んでは)
「それは被害妄想じゃないの」
「お姉ちゃんなんだから」
という謎の呪文をいつもかけられていた。
「お姉ちゃんなんだから」は呪文。
別に、なりたかったわけでもないし、
なんならわたしもお姉ちゃんとかお兄ちゃんが欲しいし、親の都合で、勝手にそうしておいて押し付けてくるなんて最低だ。
と思っていた。
思っていたから、
いかなる時も、その呪文だけは絶対言わない。と決めていた。
はずだったけど、音として発していないだけで結局、言ってるのとなんら変わりない。
むすめは、年齢のわりに言葉がたつし、賢いし、コミュニケーションが、成立してしまう
だから、なんだか対等に怒っちゃったりアタマにきたりすることが増えてる。(0歳むすこにはそんなことないし、むすめにも過去そんなこと全くなかった)
母のキャパの小ささよ。
唯一無二の戦友へ
コミュニケーションが取れると言ってもまだ3歳。
そしてわたしと違って、人とのコミュニケーションの取り方に、とても品がある。
だから多分、
わたしの想像をかるく超えるレベルでグッサリ傷ついていると思う。
わたしを母にしてくれた
大好きな戦友に
かなしい顔をさせないで。
と、トイレの中から
毎晩のわたしに向かって、叫んだ。
*これは、2019年5月のお話。この時より動きを活発化した弟と、より賢く真っ直ぐに前を向くむすめの戦いに、母は手を出さず口を出さず、ただ見ている。
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