Smoking
隣にいるおじさんが突然叫んだ。
その瞬間うるさかったガヤの声がスッと消え
僕の瞳には君のみが映る。
君の瞳にも僕だけが映っている。
隣にいるおじさんがもう一度叫んだ。
それを合図にしたかのように、僕らは激しく近づきあった。
柔らかくも芯のある君の感触、他のやつとは違う。
僕らは腕を絡め、足を絡め合う。
誰であろうと主導権を譲らない僕が唯一認めた君。
君とは、君とだけは本気だ。
君がタバコを吸っていると知った夜、僕は悩み、苦しんだ。
どれだけの時間がたっただろうか。
隣にいるおじさんはまだなにか叫んでいる。
数秒が数時間にも感じられる。
でもそろそろ終わりだ。
僕は君を突き放す。強く、強く、突き放す。
歪んだ君の顔が視界から消え、全てが終わった。
僕だってタバコを吸っているんだ。
僕は深々と頭を下げ、土俵を後にした。
#短編小説
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