医療経営・管理学専攻にて自分の「型」を作ろう

この記事は九州大学医療管理・経営学専攻22期 Advent Calendar 2022 16日目の記事です.

九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学専攻の教員をしている福田治久と申します.詳細は研究室のウェブサイトをご覧ください.
私は2013年4月に本専攻に着任し,今年で10年目を迎えています.
この記事では,医療経営・管理学専攻で私が担当している講義・演習について紹介します.高度専門職業人の養成を目標としている本専攻についての理解を深める一助になれば幸いです.

医療財政学

4月~6月の火曜日の1限・2限にて開講しています.
医療財政学では,主にお金の観点から,医療保険,介護保険,診療報酬,疾病費用,費用対効果などについて取り上げ,現状の理解と将来の課題に関する講義を展開しています.また,各講義では,各テーマに関連する実証的な論文をとりあげて,論文の読み方についての解説などもしています.
費用対効果の講義では,費用対効果手法の概要,費用の測定方法,QOLの測定方法,マルコフモデルの概要,などについて実例を用いて解説しています.

医療経営学

10月~11月の火曜日の3限・4限にて開講しています.
医療経営学では,主に経営学の観点から,経営戦略,マーケティング,ファイナンス,オペレーション戦略,人材・組織マネジメントなどについて取り上げ,医療業界への適用方法について受講生に考えていただく講義を展開しています.本専攻は社会人学生が大半を占め,経営学は実学であることから,受講生の所属組織を対象にした実例紹介などもしていただいています.さらに,講義の最後には,グループワーク課題として,済生会熊本病院を対象にしたケーススタディを実施しています.済生会熊本病院の事務長は本専攻の卒業生であるため,事務長にご参加いただいて,ケーススタディの成果を発表してもらっています.

医療分析学

10月~11月の木曜日の3限・4限にて開講しています.
医療分析学では,データベース研究を実施するための演習講義となっています.DPCデータやレセプトデータなどについて概要を知り,統計解析ソフトウェアのRの操作方法を学んだ後に,特定健診データ,介護レセプトデータ,医療レセプトデータのサンプルデータを使った演習をしています.本専攻の最終成果論文をRを用いて作成できる初歩的な技術を身に付けることを目指しています.
私の講義は全て録画し,受講生に配信しています.医療分析学では,録画で復習することが重要になります.

演習

1年目の8月から毎週火曜日の6限にて開講しています.
演習では,約1年6ヶ月をかけて,データベース研究にて最終成果論文を作成していきます.特に,私の研究室で整備しているLIFE Studyのデータベースを用いていただくことが多いです.
演習はおよそ以下のスケジュールで進めていきます.

  • 8月~12月:デンマークのデータベース研究論文を1人5篇を輪読

  • 1月~2月:研究テーマの検討

  • 3月~6月:Rを用いたデータ解析

  • 6月~7月:公衆衛生学会抄録提出・専攻内での中間報告

  • 8月~:論文作成(あるいは2つ目の研究テーマの実施)

論文作成の方法やデータ解析の方法には,標準的な「型」があります.この演習では,研究の「型」を身に付けることを重視した指導をしています.
論文輪読会では,デンマークの最新の研究に制限することで,比較的均一な論文を対象にしています.他のゼミ員の発表も聞くことで,多数のデータベース論文に触れることができ,論文の標準的な「型」を学ぶことができます.(今年は1年生が9人も入ってきてくれたので,先輩1名も加えて,10名で1人5篇を読み合計50篇を取り上げています)
Rを用いたデータ解析では,ゼミ員の大多数が共通してLIFE Studyのデータを使ってもらっています.皆が同じデータソースを使うことで,他のゼミ員の研究進捗からも,自身のデータ解析上のヒントを得ることができます.ゼミ員通しで教え合うこともあります.これにより,データ解析の「型」を学ぶことができます.

本専攻で何を学ぶことができるのか?

医療財政学,医療経営学,医療分析学,演習を通して学ぶことで,本専攻修了後には,データからエビデンスを作成する自分なりの「型」を身に付けることができるのではないかと考えています.この「型」を卒業後の実社会において当てはめていくことで,練度を高めていっていただくことを期待しています.
本記事にあげた講義は本専攻のごく一部です.各講義から様々な技術を身に付けて,本専攻修了後には,高度専門職業人として大きく羽ばたいていって欲しいです.



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