関係性が薄いほど、職務時とオフ時の他人を混同しやすい
刑事ドラマではしばしば次のようなお決まりのシーンがあります。取り調べ室で、刑事が机を殴り、胸倉を掴んで自白強要レベルの恫喝をして容疑者から情報を引き出そうとする類のものです。その質問の中には、捜査に直接関係ある物もあれば、全く関係のない物も含まれているでしょう。
仮に、自分が潔白の容疑者という立場だったとします。すると、個人情報、特に答えたくないものまで一様にズカズカと聞いてこられれば、「どうしてそんなことをお前に教えなければいけないんだ?」と反発して当然です。そう感じるのは次の2つの理由があると考えられます。
1つめは「そもそも気の合う関係ではないこと」、2つめは「どうしてそんなことを聞くのか?という理由が提示されていないこと」です。職務上、刑事が容疑者と打ちとけるのは問題だというのは感覚的に理解できます。とはいえ、情報を引き出したい容疑者を前にして(その意思の有無に関わらず)追い詰めるようなマネをするのは、いたずらに反発心を煽るだけで得策とは言えません。もし私が潔白の容疑者だったなら、それまで喋ろうと思っていたことを「不敬だ」と感じて何も喋らなくなるでしょう。
これは、勉強する意思があって正に今しようと思っていた矢先に「勉強しろ」と怒鳴られたことによってやる気が瞬時に失せるというのと似た原理だと私は思っています。
こういった時、容疑者は職務上の刑事とその人の人格とを混同してしまうことがあっても不思議ではありません。私は容疑者という立場を経験したことがありませんが(一生経験したくないですが)、別の形での経験を何度かしました。その内の1つですが、研究発表のプレゼン資料の作りについて、余り好きではなかった準教授から雑すぎると叱られたことがありました。一通り叱責されたのち、悲嘆に暮れている私にその準教授は次のように言いました。
「はる君。他の学生も大体そうなんだが、どうしてそんな顔をしているんだ?私は君自身を叱ったわけじゃない。私が叱っていたのは君の作った資料の雑さに対してなんだから、そこを一緒くたにして考えないように。次は私が指摘した点を踏まえて資料を作ってみなさい」と。
・・・なるほど、人は罵声を浴びたり、嫌がらせを受けたと感じた相手に対して、職務上を超えたその人自体に敵意を向けがちになるのでしょう。自己の領域を軽んじられたり侵されれば、誰だって自尊心が働いてしまうからです(矜持までも傷つけられると尚更です)。
そうなると、敵意を向けるのならば職務上としてのその人にすべきなのかもしれません(というのは冗談です)が、仮に単純一途で瞬間湯沸かし器のような性格だったら、あからさまな挑発ですら乗せられて不用意なことをペラペラと喋ってしまうので、頭に血が上っている時ほど沈黙するというのが最も賢明である蓋然性が高いでしょうね。
( ˘ω˘ ).。oO( 沈黙のはる・・・
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