【台本】ハサミの響くだけ
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<概要>
行きつけの美容院は個人経営で閑散としている。というのも美容師が無口で不愛想、美容師らしくないと言われているからだ。しかし腕はいいし、なにより、笑顔が素敵なのだと、私だけが知っている。
・所要時間:3分程度
・人数:2
・BGM、SEは目安です。録音編集を想定しています。配信などでお使いの場合はBGM、SE省略可。
○登場人物
1.美容師 男性
その人に似合う髪型を模索するのが好き。お客さんは、お客さんでいて、作品だと思っている。カットに真剣になりすぎてトークが下手。
2.客 女性
常連のお客。いつもおまかせ。美容師がカットするさまをひたすら観察している。最後に彼が笑うのが見たくてここに通っているといってもいい。
※M・・・モノローグ
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SE ドアベル
美容師 「・・・いらっしゃいませ」
客 「こんにちは!」
客M 『彼は、今日も無口だ』
BGM
美容師 「本日は、どのようになさいますか」
客 「おまかせで!」
美容師 「・・・シャンプー台へどうぞ」
客 「はーい」
SE シャワー
客M 『シャワーの音と、優しい手』
美容師 「洗い足りないところはありますか」
客 「大丈夫です、きもちいいです」
美容師 「椅子、起こします」
客 「はーい」
客M 『私しかいない店内。二人きりの時間』
美容師 「どうぞ」
客 「ありがとうございます」
SE 衣擦れ
SE ハサミ
美容師 「前髪失礼します」
客M『彼は必要な時しかしゃべらない。
鏡越しにしか見られない、その真剣な顔を観察するのが楽しくて』
美容師 「終わりです、うしろ、こんな感じです」
客 「わーありがとうございますー!」
美容師 「スタイリングはいかがなさいますか」
客 「お願いします!」
美容師 「・・・お出掛けですか」
客 「え?何でそうおもったんですか」
美容師 「なんだか、いつもより、うきうきしてらっしゃったので」
客 「ふふ、髪を切ってもらうだけで嬉しくなっちゃうもんですよ」
美容師 「そういうもの、ですか」
客 「だって、新しい自分に生まれ変わるような感じがして」
美容師 「・・・そうですか」
客 「はい」
SE 衣擦れなど
美容師 「・・・」
客 「・・・」
美容師 「すみません口下手で」
客 「あっ、すみません、なんか、みつめちゃって」
美容師 「はい、できました」
客 「やっぱりおまかせにしてよかったー!これ自分でできるかなぁ」
美容師 「コツがあるんです、ブローの時に・・・」
SE レジ
美容師 「いつもご利用ありがとうございます」
客 「ありがとうございました。また来ますね!」
美容師「・・・お待ちしております」
客M 『きっと本人すら気づいていないのでしょう。無口で無愛想な彼は、お客さんを見送るその時だけ、満足げに笑うのです。そして私はその瞬間がとっても愛おしいのです』
SE ドアベル
以上