義兄妹の許されざる愛(仮)12

【第五章】-2『まさかの真相』

 その後もデートを楽しみ、その日の夕方雄哉は紗弥加を家へと送り届けた。

 富士見公園の駐車場に車を止める雄哉。

「今日はお疲れ様、ごめんね突然誘って」

「いいえ良いんですよ、あたしも誘って頂いて嬉しかったんですから。またどこか連れて行って下さい」

「そうだね、また行こうね、じゃあおやすみ」

「はい、またぜひよろしくお願いします」

 そうして車を降りた紗弥加は自分の家へと向かった。

 玄関を開けると麗華の靴があったため母が帰っていた事に気付く紗弥加。

「ただいま、ママ帰っていたんだ」

 この紗弥加の声に麗華が凄い剣幕で奥から飛んできた。

「ただいまじゃないわよ、今までどこ行ってたの?」

「ちょっとね」

「ちょっとじゃないわよ、またあの子と一緒だったんじゃないわよね」

「良いじゃないあたしが誰と一緒だって、どうしてママはあたしが雄哉さんと一緒にいる事を嫌うの? ママは雄哉さんと会った事もないのに、それなのにどんな人か分からないでしょ」

「会った事なくても女の子にすぐちょっかいを出すような子どんな子か分かるわよ。とにかくこれ以上会うのはやめなさい」

「嫌よ、ママはそれだけの事で人をどんな人か決めつけるの?」

 そう言い放つと紗弥加は部屋に閉じこもってしまった。

 翌日麗華は再び広瀬のケータイに電話をかけた。

「もしもし会長ですか? 畑中です」

『君か、どうしたんだね』

「近いうちにあの人と三人でお会いしたいんですけど都合つけて頂けませんでしょうか?」

『もしかしてうちの雄哉と紗弥加ちゃんの事かな?』

「そうです、このままじゃ大変な事になってしまいます。お願いします」

『分かった、スケジュールを確認して折り返し電話するから少し待ってくれないか』

「分かりました、出来るだけ早くお願いします」

『分かった』

 電話を切った広瀬はすぐに隣の社長室へと向かった。

 社長室の扉の前へと着いた広瀬はノックをし一声かける。

「私だ入るぞ!」

「どうぞお入りください」

 その声に社長室へと入る広瀬。

「どうしたんですか会長」

「聞いておきたいんだがお前のスケジュールはどうなっている? 麗華さんが雄哉達の事ですぐにでも三人で会いたいそうだ」

「そうですか、ちょうど明日は一日空いていますけど」

「そうか、私は明日予定が入っていたけど先延ばしできるから変更しておこう、じゃあ少しでも早い方が良い、明日の午前って事で良いな」

「はい、大丈夫です」

「分かった、その様に連絡しておこう」

 その後すぐにケータイ電話を取り出した広瀬は麗華のスマートフォンに電話を掛ける。

『もしもし私だ』

「会長もうわかったんですか?」

『あぁ、雄二にスケジュールを確認したら明日なら一日空いているそうだ。少しでも早い方が良いと思って明日の午前て事にしておいた。何時でも良いからなるべく早く来ると良い』

「そうですか、ありがとうございます。会長は大丈夫なんですか? どうしても都合付かなければ別に会長はいらっしゃらなくても大丈夫なんですが」

『いや、私も同席しよう』

「そうですか、ありがとうございます。では明日の午前、なるべく早いうちに伺います」  

 そして翌日、休暇を取った麗華は広瀬コーポレーションへと向かった。

 会社に着くと社長秘書である松永により社長室へと案内される麗華。

「社長、お見えになりました」

「どうぞ、入ってくれ!」

 雄二の向かい入れる声にそっとドアを開ける松永秘書。

「どうぞお入り下さい」

 松永秘書の声と共に社長室へと足を踏み入れる麗華。

 そこには社長の雄二がおり、その隣には会長の広瀬が待ち構えていた。

「お久しぶりね雄二さん」

 広瀬親子に挨拶をする麗華。

「あぁ久しぶりだな? 元気にしていたか?」

「まあね」

 雄二の声に麗華はそっけない返事をする。

「会長、先日はどうも」

「いや申し訳ない今回こんな事になってしまって、ああ見えて雄哉は私の知る限り女性にだらしない奴ではなかったんだが、まさかこんな事になるなんて思ってもみなかった」

「それです、一体これからどうするおつもりですかお二人とも」

「どうするって言われても、会長からも私の方からも雄哉には良く言い聞かせたんだが効果が無くてな?」

「だからと言って諦める訳にいかないわよ、二人の仲がこれ以上深くならないうちに何とかしないと」

「そうだよな? いっその事二人をここに呼んで事実を話すか」

「それも仕方ないかもしれませんね、そうと決まれば今すぐここに呼びましょう、あたしは紗弥加を呼びますからあなたは雄哉君を呼んで下さい」

「分かった、でもお前ほんとに良いのか? 娘に父親の存在を明かす事になるんだぞ!」

「そんなのかまわないわ、それよりも大事な事を守らなきゃ」

「分かった、じゃあ呼ぶとしよう」

 こうして雄二と麗華は互いに二人を呼ぶ事になった。

 その後まず先に雄哉が社長室に到着したが、この時雄哉は広瀬達と一緒にいる女性を見て誰だろうと不思議に思っていた。

「社長誰ですかこのおばさん」

「こら、おばさんなんて言い方はよせ、仕事関係の方だったらどうするんだ」

軽く叱責しっせきする雄二。

「だってその身なりどう見ても仕事関係の人じゃないじゃん」

「確かにそうだがだからと言って口の聞き方と言うものがあるだろ」

「分かったよ、それでなんなんですか話って」

「とにかくあともう一人来るからもう少し待っていなさい」

「まだ誰か来るの? 一体何なんだ突然呼び出して」

そう呟きつつ仕方なく待つ事にする雄哉。

 その後しばらくして松永秘書に案内されながら紗弥加が社長室へとやって来た。

 この時紗弥加はどうして自分の母親から広瀬コーポレーションの社長室に呼ばれたのか不思議に思っており、やはり母と広瀬親子は何か関係があったのかと不思議に思っていたが、その関係がなんなのかどうしてもわからずにいた。

 紗弥加が社長室へと足を踏み入れると、当然の様にそこには母親の麗華本人がいたため改めて驚いてしまった。

「ママどうしたのこんな所に」

「ちょっとね」

「何よちょっとって、会長さんまで居るじゃない、それに雄哉さんまで、ここ社長室って聞いたけど、じゃあもう一人の方はもしかしてこの会社の社長さん? 何であたしこんな所に呼ばれたの?」

 そこへ雄哉が驚きの声で尋ねる。

「なんだよおばさんの正体は紗弥加ちゃんのお母さんだったのかよ、それにもう一人の客って紗弥加ちゃんだったの? 一体これから何が始まるんだよ」

 ここで雄二が緊張の面持ちで口を開く。

「二人ともそろったな? ここで真実を君達に伝え様と思う」

「なんだよ真実って」

 雄哉の言葉をうけ、麗華が紗弥加に対し真実を伝える。

「聞いて紗弥加、あたし達が立派なマンションに住めるのも、紗弥加、あなたが学費の高い私立の進学校に通っていられるのもここにいる広瀬社長の援助のおかげなの」

「どう言う事ママ? 何なのよ援助って、どうして社長さんが援助してくれるの?」

 麗華の援助と言う言葉に対し驚きの表情で尋ねる雄哉。

「そうだよ、それってどういう事だよ! どうして父さんがこの親子の援助をするんだよ」

 驚きをもって尋ねる雄哉に対し雄二は慎重に言葉を選びながら続ける。

「雄哉、雄哉の父親はもちろんこの私だ、そして紗弥加さん、君の父親もこの私なんだ。これが何を意味しているか分かるよな?」

「どう言う事ママ」

 この時紗弥加はなにがなんだか分からないという表情をしていると、雄二は言いにくそうな表情を浮かべながらも更に続ける。

「非常に言いにくい話なんだが私は若い頃ここにいる畑中麗華さんと不倫関係にあった。紗弥加さん、君は私と麗華さんとの間に出来た子供なんだ、君はここにいる雄哉と兄妹と言う事になる。君達は本来愛し合ってはいけない関係なんだ、君達の交際に反対していたのはそのためなんだよ!」

 この雄二の突然の告白に雄哉は信じられなくなっていた。

「ウソだ! 俺達が兄妹だなんて、そんなのある訳ない」

 激しくショックを受ける雄哉に対し、父親の雄二は諭す様に言い聞かせる。

「残念だがウソではないんだ、君達はまぎれもない兄妹なんだよ」

「どうして父さんは不倫なんてしたんだよ、不倫だけならともかく俺の愛した女性が腹違いの妹だったなんて、そんなの信じないですからね」

 そう吐き捨てるとそのまま社長室を飛び出してしまう雄哉。

 残された紗弥加であったが、やはり信じる事が出来ずにもう一度麗華に確認する。

「ママ今の話ほんとなの? パパはあたしが小さい頃に事故で死んだって言っていたじゃない、あれは嘘だったの?」

「ごめんね紗弥加、そうでも言わないとほんとの父親はどうしているのか聞かれると思ってほんとの事言えなかったのよ」

「じゃあ社長さんがあたしの本当のお父さんで、あたしと雄哉さんが兄妹って言うのもほんとなの?」

 気まずそうな表情でこくりと頷く麗華。

「そんなの信じない、どうして今まで名乗り出てくれなかったのよ、どうしてパパはあたしを残して死んでしまったのってずっと思っていたんだから」

「すまない紗弥加、認知はしたが色々事情があって名乗り出る事が出来なかったんだ」

「なに呼捨てになっているんですか、あたしまだあなたの事父親って認めた訳じゃないですからね」

 この時雄二をかばうように援護射撃をしたのは母親の麗華であった。

「黙っていてって頼んだのはママなの、だから許してあげて」

「どうしてそんな事頼んだのよ」

「あなたが不倫の末に出来た子なんて知られたくなかったのよ、それにまだあなたが小さかった頃は不倫と言っても意味が分からなかったでしょ?」

「それでも言ってほしかった、あたしにもお父さんがいるならその愛情を受けたかった」

 涙を流しながら訴えかける紗弥加。

「ごめんなさい紗弥加、ママが悪かったのよね、ほんとにごめんなさい」

「もう良いわ、ママにも事情があったものね」

 がっくりとうなだれつつそう言った紗弥加はとぼとぼと社長室を後にした。

 麗華は部屋を後にする紗弥加を見送るとポツリと呟いた。

「やっぱりあの子にはショックが大きすぎたかな?」

「仕方ないよ、これ以上二人の仲が接近する訳にいかないからな?」

 雄二の言葉であったが更に続ける麗華。

「それはそうなんだけどなんだかかわいそうな気がしちゃって」

 気の毒そうに言う麗華の言葉に広瀬が声をかける。

「確かにかわいそうな気もするがあの二人に情けは禁物だ。でなければ大変な事になる」

「そうですね、でもこれであの二人が諦めてくれれば良いんですが……」

 麗華が懸念けねんする通り二人はまだ諦めてはいなかった。


つづく

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