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論点解析経済法(第2版)Q9 解答例
こんばんは。今日もお疲れ様です。
本日は、『論点解析経済法(第2版)』のQ9の解答例を投稿します。今まで有料公開していたのですが、有料にする必要ないな……と感じたので、無料で公開させていただきます!なお、今までに投稿した『論点解析経済法(第2版)』の解答例も順次無料公開する予定ですので、無料公開になるまでしばらくお待ちください!
それでは、以下、解答例です。
第1 設問1
1 10社が、決定1のような内容の合意(以下、「本件合意1」という)を行ったことは、不当な取引制限(独占禁止法(以下、法名省略)2条6項)に該当し、3条後段に反し、違法とならないか検討する。
2 「事業者」(2条1項)とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいい、「他の事業者」(2条6項)とは、実質的な競争関係を含む、相互に競争関係にある独立の事業者のことをいう。
本件において、10社は、生コンの製造業者であるから、「事業者」である。また、10社は、それぞれ生コンの製造業を営むものであるから、相互に競争関係にある独立の事業者であるといえる。
したがって、「事業者」(2条1項)である10社は、それぞれの「他の事業者」(2条6項)と本件合意1を行っていると認められる。
3 「共同して」とは、事業者間に意思の連絡があることをいう。そして、意思の連絡とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、明示の合意をすることまでは必要ではなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる。
本件において、10社は、生コンの販売価格の引上げ問題及び廃業する会員の生産設備の買取り問題について、緊急に対処するに必要がある旨の認識を共有するに至り、本件合意1をしている。そのため、10社には、明示の合意に基づく意思の連絡があるといえる。
したがって、10社は、「共同して」本件合意1をしたと認められる。
4 「相互にその事業活動を拘束」するとは、複数の事業者が、意思の連絡・合意により、本来自由であるべき事業活動が制約されていることをいう。
本件において、本件合意1により、10社は、本来自由に行うことのできた価格決定や生産設備の買取りに関する価格決定を行うことができなくなることから、本来自由であるべき事業活動が本件合意1に事実上制約されているといえる。
したがって、本件合意1は、「相互にその事業活動を拘束」しているといえる。さらに、決定1に従い、価格の引き上げを実施し、10社中1社は、1名の会員の生産設備を買い取っていることから、実際に共同して「遂行」していると認められる。
5 「一定の取引分野」とは、市場、すなわち、特定の商品・役務の取引をめぐり供給者間・需要者間で競争が行われる場であり、商品・役務の範囲、地理的範囲等に関して、基本的には、①需要者にとっての代替性という観点から判断される。また、必要に応じて、②供給者にとっての代替性という観点も考慮される。
生コンについて需要者及び供給者からの代替性があるという事情はない。また、生コンは、一般に、その性質上長距離輸送が難しいことから、県内で消費される生コンのほとんどは同一県内で製造されている。
したがって、本件で問題となる「一定の取引分野」は、A県における生コンの製造販売分野であると画定する。
6 「競争を実質的に制限」するとは、特定の事業者又は事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすことができるという意味での市場支配力を形成、維持又は強化することをいう。
本件において、10社は、合計で約60%のシェアを有する。さらに、本件合意1に加わっていない40社は、いずれも小規模事業者であるところ、10社が価格を引き上げたことを知り、ほとんどが10社の価格引き上げに追随して価格を引き上げている。そのため、10社は、価格の決定について、市場支配力を形成することができるようになっているといえる。
また、生産設備を買い取ることができなければ、A県に新規参入することは不可能であるところ、廃業しようとする会員について、10社のうちで生産設備に最も近い場所に所在する1社がその生産設備を買い取ることとしている。そのため、B県の事業者がA県に新規参入することは困難となり、前記価格引き上げの合意と相まって、市場支配力を形成、維持、強化するものであるといえる。
したがって、本件合意1は、「競争を実質的に制限」するものであると認められる。
7 「公共の利益に反」するとは、独占禁止法の保護法益である自由競争経済秩序の維持に反することをいう。
本件において、上記6の通り、本件合意1は、「競争を実質的に制限」するものであると認められることから、自由競争経済経済秩序の維持に反するものであるといえる。また、例外的に公共の利益に反していないとする特段の事情も認められない。
したがって、本件合意1は、「公共の利益に反」するものであると認められる。
8 以上より、本件合意1は、不当な取引制限(2条6項)に該当し、3条後段に反し、違法となる。
第2 設問2
1 生コン協議会が、決定2のような内容の合意(以下、「本件合意2」という)を行ったことは、8条1号に違反しないかが問題となる。
2 「事業者団体」(2条2項、8条柱書)とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいう。
本件において、生コン協議会は、A県に所在する生コンの製造業者が、会員相互の親睦および業界の健全な発展を目的として設立した社団法人であるから、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とするものであるといえる。また、生コン協議会の会員は、10社及び40社であり、2以上の事業者の結合体であるといえる。
したがって、生コン協議会は、「事業者団体」であると認められる。
3 事業者団体としての行為が認められるためには、事業者団体としての意思決定が必要であるところ、事業者団体としての意思決定は、正式な意思決定機関による決定である場合に限らず、その決定が構成員に実質的に団体としての決定として遵守すべきものとして認識されていれば足りる。
本件において、本件合意2は、5月8日に全会員が出席して開催された生コン協議会の通常総会において、10社が提案した決定2を内容とする決議案が全会一致で可決されたことにより成立している。
したがって、事業者団体としての意思決定がなされているといえ、事業者団体としての行為であると認められる。
4 「一定の取引分野」とは、市場のことを意味するところ、上記第1の5の通り、本件で問題となる「一定の取引分野」は、A県における生コンの製造販売分野であると画定する。
5 「競争を実質的に制限」するとは、上記第1の6の通り、市場支配力を形成、維持又は強化することをいう。
本件において、生コン協議会の会員は、上記市場において生コン製造を営むすべての事業者であり、合計して約100%のシェアを有する。そして、価格を引き上げる旨の決定は、生コン協議会の会員である10社及び40社の全員一致で可決し、その決定に従い、実際に価格の引き上げを行っている。そのため、生コン協議会は、価格の引き上げについて、市場支配力を形成、維持しているといえる。
また、本件合意2では、廃業しようとする会員から生産設備を買い取り、その買取り資金は、生コン協議会の積立資金から支出することを内容としているため、生産設備の買取りが容易となっている。そのため、生産設備を買い取ることができなければA県に新規参入することが不可能であることも踏まえると、B県の事業者が新規参入することは不可能であると考えられる。さらに、本件合意2では、生コン協議会は、買い取った設備をただちに廃棄することとしており、市場における生産能力を削減し産出量を減少させる効果を有すると考えられる。したがって、B県の事業者が新規参入することは不可能となり、市場支配力を形成、維持、強化するものであるといえる。
よって、本件合意2は、「競争を実質的に制限」するものであると認められる。
6 以上より、本件合意2は、8条1号に反し、違法である。
以上
以上になります。設問ごとかナンバリングごとに目次を付けた方がいいですか?何かご意見等あれば、お聞かせください。
それでは、今回はここまでです。今週も頑張りましょう!