余計な壁をぶち壊す「インネパゼロ距離砲」
「人と話す時、緊張して上手くいかない。」
そんな人は多いのではないでしょうか。
僕は昔からの人見知り。
小さな頃、一人でいることは天国のようでした。
大人になっても、他人との会話はまるで宇宙空間を歩くようなもので、僕にとっての最終フロンティア。いつでも緊張してしまいます。
しかし、その壁は不思議なことに、海外では消え失せます。
特にインドとネパールの人々は、僕の「天国のような個人スペース」という概念を気にも留めないようです。
たとえば、ネパールでタクシーに乗ったとき。
「後部座席で優雅に景色を眺める2時間の旅」という僕の完璧な計画は、ドライバーの「嘘だろ?隣に座れよ!」のひと言で幻に。
彼の「ゼロ距離砲」は、僕の心理的防壁を、ポップコーンのように軽々と吹き飛ばしてしまいました。
インドの空港の搭乗ゲート前。
タブレットをスルスルとやっていた僕の隣に座った見知らぬインド人は、僕に問いました。
「まさか、Wi-Fi持ってんの?」
空気を読むのだけは得意な僕は、彼にWi-Fiを提供し、彼はそれを惜しげもなく活用してムンバイにいるらしい自分の家族とビデオ通話を繰り広げます。
それは僕のデータプランが泡と化し消え去る瞬間でした。
そして、データプランとともにインドとも別れを告げることになるフライト。
あのインド人はなんと僕の隣の座席に。
「なんというシンクロだ!」なんて浸っている間もなく、その「ゼロ距離砲」により座席上の制空権は離陸の10分前にはすでに彼の手中にありました。
彼は、これからカタールに行くんだ、ばあちゃんに会いてぇ、今日はもう10時間も寝てない(別に普通)からすげぇ眠い、などと熱く語りました。
僕はまるで24時間対応のコールセンターのように自分の耳をオープンにしていなければなりませんでした。
そしてその間中ずっと、彼の右の二の腕は、僕の座席上の制空権を侵犯し続けるのでした。
インドとネパールでの「ゼロ距離感」。
最初はとてもくすぐったくて戸惑うかもしれませんが、慣れてしまえば心地の良いもの。
それは、知らぬ間に築いてしまった我々にとって無意味な壁を取り払い、新たな人間関係を築く貴重な教訓を与えてくれます。
そして何よりも、人間本来の暖かさに気づかせてくれるのです。
ところで、インドからのあのフライト中、窓の外にエベレストを発見た僕が、興奮して声を上げた唯一の瞬間だけ、あのゼロ距離インド人はまさかの無反応。
おそらく、世界の最高峰すらも彼にとっては「ただの山」だったのでしょう。
なんでだよ。笑
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