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職場における55歳以上のステキな活かし方
ついせんだってTwitterで実に興味深い投稿をみかけました。細かいことは忘れたけど、派遣会社の営業か何かがクライアントに提出する資料をつくっているうちに驚愕の事実を知ってしまったという内容でした。
どうやらその派遣営業はクライアントから「20代を採用したい」という要望を受け、それは難しいんですよと返すための資料を作っていたらしい。
いわく、現在の日本の人口は(ざっくり言って)1億2000万人で、そのうち20代以上は1億人。恐ろしいのはその後で、その中で40代以上が占める割合が7割とのこと。
「つまり10人いたら2、3人しかいないんだよ、20代とか30代って」
にも関わらず採用担当者はアップデートできていない、ブーブー、というような論旨だったし、リプ欄にも採用側を見下す内容の投稿が少なからず見られました。
僕はそれを見て「ううむ」と唸ってしまったんですね。そして唸った上であらためて自分でも調べられる範囲で調べたんですが、やはり投稿主の言う通り10人中の20代・30代は30%以下でした。
しかも20代といっても就労している割合はどれぐらいなのか。大学生なら一般的には22歳までは学生だし、浪人だってあるしダブりもあろうよ。大学院に進むコースも健在。普通に考えて働き手はもっと少ないはず。
僕は自分が在籍している会社の採用にも関わっているし、さまざまなクライアントの採用もご支援しています。そうした立場から採用現場が依然として20代を欲しがる場面によく出くわします。また長らく中途採用領域に携わってきた経験からも、その気持ちや背景は理解できます。
しかしこの数字を目の当たりにすると、これまでのような呑気なことは言ってられなくなる。もちろんこれまでも呑気なつもりでいろいろ喋ってきたわけではないのですが、まあ、ちょっと視点というか考え方をひとつ変えないとな、と思った次第です。
僕はいままで20代の採用が難しいのを媒体のせいにしていました。
いまどきのヤングって全体的に他力本願だし(そうではない人もいますが)求人媒体に登録すること自体パワーかかるじゃないですか。媒体ごとにレジュメ登録するのダルいんすよ。
しかも20代なんて生まれたときからWebの水で産湯を使ったナチュラルボーンインターネッターです。情報収集力は僕らの想像を遥かに超えています。そんな彼らが「ネーカーで作られた」求人情報なんて信じないっすよ。情報信頼度で言えばSNSの方が断然上っしょ。
さらに17年ほど前に改悪された雇用対策法によって表現上の年齢制限が禁止されてしまいました。これによって情報の非対称性が一層パワーアップして、求職者側はその募集情報が自分にあっているのかどうかわかりにくくなったんですね。
加えてそうなることは火を見るよりも明らかだったのですが年齢不問にしているのは求人広告上だけで、実際に採用の現場ではバリバリ年齢制限が行われています。ふつうに考えて45歳すぎの未経験エンジニアを採用しますか?できますか?
だから20代や30代前半までの優秀層を獲得したければ人材紹介を使いましょうよ、と。
でも、そうではなかった。
そういう側面もないわけではないが、本質的な問題として40代以上に対して20代、30代の人口比率が極端に落ちていることがあったのです。
これが少子高齢化か。いまわかったよ。
だけどそんなことは厚生労働省に勤める東大京大卒の頭のいい人ならとっくに知っていたことでしょう。
またリクル◎トならワークス研究所あたりがデータとして掴んでいたはず。だからIndeedPLUSに走っているのかもしれませんが。
だけど、それでは相変わらずパイの少ない年齢層の取り合いであることには変わらない。
なのでやっぱりやるべきことは、採用の現場が頭を切り替えて、経営に向けて提言していくことではないかと思うのです。
それが「50代、とりわけ55歳以上をステキに活用する」です。
逆をいうと55歳以上を上手く使えない企業は相当やせた組織になるでしょう。それはちょっと前に言われていた「ChatGPTを使いこなせるか否か」よりも深刻なはず。
と、いうことで企業は55歳以上をいかに扱うとオシャレでステキなのか、について考えてみましょう。なぜ55歳なのかというと僕が55歳だからです。当事者としてナチュラルに感じているところをつらつら述べます。
55歳以上には孫のように甘えよう
出世コースから外れた55歳以上の多くはおそらく、社内で結構寂しがっているはず。頼られることはどんどん減り、口を開けばふた言めには「それは早川さんの頃の話でしょ」と返されるのがオチです。
こうなるとよほど頭脳がラフでメンタルがタフでないと働かない妖精さんになってしまうのも仕方がないのかなと思ってしまいます。
だから職場のヤング&ミドルは思いっきりシニアに甘えてしまいましょう。もともと責任感はある世代です。また言われたことはやりきる力もある。最低でもやんなきゃな、ぐらいの気持ちは残っているはず。
ふだんからもてあましてるフラストレーション、ユーガライジーディな55歳以上ならノリノリ(死語)で手伝ってくれるかも。そこから若いあなたがたが学べることは少なくありません。
ポイントは任せる仕事と年齢や社歴、元の肩書バイアスを切り離すこと。
マネジメントレイヤーにせよ現場にせよ「いくらなんでもこんな作業、山田元主任にはお願いできないだろう」という先入観を捨てましょう。
DX化が進みどんどん効率が向上していく職場ではロートルにとって年相応の仕事がいつもいつまでもあるとは限りません。
そもそも「そんなことをやらせるわけにはいかない」「その仕事はその給与額の人がやるべきではない」「それでは下の人間が育たない」この発想がすでに昭和ではないかと思います。
だからこそ、仕事や年齢、元の肩書、過去の栄光にこびりついているバイアスをとってしまいましょう。
コピー用紙の補充からフロアの清掃、電球を替えるとか得意先へのトラフィックなど、まさかそんなことをと思う仕事ほどお願いしてみるのもいいかもしれません。
ただしやり過ぎには注意です。いくらなんでも領収書の宛名書きを左手で(左利きの場合は右手で)書かせるなどの行為は避けましょう。
よくわからない結論にもうなづく
55歳以上の人たちは独自の仕事哲学をお持ちだったりします。時折、ミーティングの場などでその片鱗をチラリとのぞかせることも。
特に議論が煮詰まり、出口が見えそうで見えないような、ちょっと白熱しかけた会議の場。若手や中堅社員が冒頭から腕を組んで黙っているベテランに意見を求めたりします。
「山田さんはこの件、どうお考えですか」
「…ミもフタもないこと言っていい?」
「は、はい…」
「愛、だと思うんだよね、結局のところ」
「あ、い?ですか?(一同ポカーン)」
「愛が足りてないんだよ、全体的に」
こういうシーンに出くわしたことはありませんか?でもここで「何を言ってるんですか」というような否定的な意見を出してはいけません。あるいはクエスチョンのゼスチャー(あの両肩を竦めるヤツ)とか、指を頭の横でくるくる回してもいけません。
こういうときはすかさず「なるほど…いささかキザな言い回しですが、でも確かにおっしゃる通りですね」と受け止めた上で何もなかったかのようにそれまでの議論に戻してください。大丈夫です。55歳過ぎにはそれがブレーキランプ5回「サ・ス・ガ・デ・ス」のサインに映ります。
少子高齢化という誰も考えたくなかった未来予想図がいままさに日本の労働現場にて展開されているのであります。
新しすぎない新しいことを教える
さすがにいまどきの55歳以上はパソコンぐらい使えます。たぶん70歳超えても使えるんじゃないかな。ウチの親父は80過ぎだけどついこないだもいじってたな。
とはいえみんながみんなVLOOKUPがお手のものだったり、VBAでマクロを組んだりはできません。Slackは追いつかないけどChatworkならなんとかなる。ベッキーよりポスペ使い(それはそれで珍しい)といったところ。
じゃあPCまわりの作業はやらせられないか、というと決してそんなことはないはず。なにもかも取り上げてしまうのは機会損失につながりかねません。WANIMAの名曲「やってみよう」は何も10代、20代のためだけにあるわけではないはず。
恥を忍んで告白するとわたしも前職の最後に配属されたマーケティング部門にて、さわったこともなかったエクセルでデータ処理や集計作業を命じられたんですが、上司がスゴ腕マーケター(元ネスレ台湾の總經理)で数字に厳しい人だったこともあり、ひいひい泣きながらで取り組んでいたら45歳にしてぼんやり数字がわかるようになった経験があります。
なので55歳以上だからと色眼鏡で見ないで長い目でトライさせてみてください。
最近では回転寿司ですらタッチパネルですよね。導入当初は文句を垂れるばかりの御老公たちでしたが、寿司喰いたさに必死に覚えます。そしてみんなやればできる子、アトムの子です。
もちろん新しすぎることは教えないこと。あまりにも当人の理解を超えたチャレンジングな機会を与えると泣きだしてしまいます。そう、ニトログリセリンのようにデリケートな扱いが求められるのが50代以上のメンタルでもあります。
なんか真面目に書きはじめたんですが途中でおかしなことになってしまいました。でも決してふざけているわけではありませんので、読んでいて気分を害した55歳以上の方がいらっしゃったらお詫びいたします。大変申し訳ございません。
でもね、ミートゥなんですよ、ミートゥ。
大切なのは若手が必要以上に老害を避けたり、貶めたり、逆に持ち上げたりしないことかなと思います。やる人は新しいことでもなんでもやりますし、やんない人はめんどくさいと言ってやらないだけ。
ほら、これって若者と一緒でしょ。
そして職場の中に本当の意味で年齢という見えない壁がなくなった会社こそ、この先30年、50年、そして100年続く価値のある組織ではないか。そんなふうに思うんですよね。