「会議の極意」~その弐 プロデューサー編~
「会議の極意」を現場のプロフェッショナルにお聞きするシリーズ第2弾。
今回は「プロデューサー」がテーマ。経験豊富な三木さんに3年目の大塚さんと一緒にお話を伺いました!
三木さん節が炸裂。プロジェクトをリードする立場としての「会議」の位置づけやその方法論が満載です。
ぜひ最後までお読みくださいませ。 (進行・編集|BPR推進部 高比良)
報告と連絡のための会議は必要ない。会議は「相談」の場。
高比良|さて、大塚さんが感じている会議の課題とはどういうところですか?
大塚|社内会議の場合、皆が誰か任せになってだらだらしたり、時間内に終わらないことがあって。今日は、三木さんが会議で事前に準備していることや大事にしていることを教えていただきたいと思っています。
三木|ひとつ考えていることは、報告と連絡のための会議は必要ない、ということ。では何のためかというと報連相の「相談」。相談とは、①問題解決 ②判断・決断の2点。そのためにしか会議はしません。参加者の時間を割いてやってもらうので、相談以外の会議はつくらない。
大塚|例えばクライアントとの定例で、必要性を感じなかったら、クライアントに申し出ますか?
三木|最初は言えなかったけど、経験してきて主導権とれるようになってくると、お互いのために言うようになったかな?最初は難しいよね。
高比良|三木は会議を主催することが多いよね?
三木|主催することが多いし、やるとしてもさっきの目的の場合のみですね。社内プロジェクトの場合は、、、ほとんどやらない。言われてみたら。全部、メールと電話で済むようにしている。
大塚|関わるメンバーの人数にもよりますか?
三木|それもあるかもしれないけど、プロジェクトオーナーが、各プロジェクトメンバーに役割をお願いしたら、その先はオーナーとメンバー、メンバーとメンバーのコミュニケーションになるから、全員で集まる機会はそんなにつくる必要がない。メンバーとメンバーのところに自分が入る必要もなく、各々に託しているイメージで進めていきます。
「役割と責任」を渡すことで、全員で集まる会議は不要に。
大塚|その進め方になったきっかけはありますか?
三木|これはお客さんに教えてもらったんだけど、「ロール&レスポンシビリティ」、つまり、「役割と責任」を各メンバーに渡すこと。全体で共有することは、チャットでいいし、リアルに全員で集まる必要もない。つまり、全体で話すべき相談事項がないと、あまりやらない。
そう考えると、そうではない全体会議って、ある話題や内容に関係ない人は手持ち無沙汰になるし、無駄感が否めないよね。
高比良|その「役割と責任」はいつ時点で行うの?
三木|プロジェクトのキックオフMtgの時ですね。
高比良|そのMtgはどうやってるの?
三木|まず、最初は全員参加。事前にプロジェクトを因数分解して、どういった業務項目があり、各メンバーの役割に割り当て、伝えるようにしています。
そうすれば、メンバーは自律的に動くことができる。その後は、プロジェクトオーナーとして例えば全てのメールのCCに入って、わざわざ情報をシェアしてもらったりもせず、自分が最も把握している状態をつくります。エラーが見当たれば、介入したり調整したりできるし。
大塚|定例ミーティングなどで確認する場もないので、逆に言うと常に情報を把握し続けなければならないってことですよね?
三木|そうそう。大変だけど、そのためのITツールでもあるので。
大塚|パートナーとのMtgってどうしているんですか?私の場合は結構多いな、と思ってて。
三木|ほとんどやってないね。全部メールベースで完了してます。
大塚|先方からMtgしたいとかなりません?
三木|ないね。判断材料、背景を明確にして事前に渡してるからかな。聞くまでもない、というか。ちょっとした確認は電話で解決しています。
できる限り全部メモして「可視化」する
高比良|会議を必要としない、周囲が自律的に動ける環境をつくるために、他にポイントはありますか?
三木|最初の段階で案件における役割とFAQができているというか、こういう質問にはこう答えるというのを「可視化」しています。
高比良|可視化って具体的に何を?
三木|何でも、ですね。何でもできる限り言語化している。言語化して書くことを癖付けておいて、いつ誰が見ても大丈夫なようにしている。
よりスピーディに物事を進めるために、例えば会議の議事録は社外用と社内用の2つを用意して使っています。
社外用は書くべきことを精査して体裁を整え、クライアントに渡すもの。社内用は社内でシェアできるように、メモレベルでも何でも書いておくと、タスクが抜け漏れない。基本は社内用に何でも書いて、次回のクライアントとの会議までに整理して社外用にする作業を行う。それによって自分の頭も何を話すのかも整理されるのと、何より抜け漏れも防止できる。
高比良|社内用議事録でメモするポイントは?
三木|全部メモります。「議事録」としてサマリーを書くことを目的にメモしていると、書いている本人も何のことかわからなくなっていることがある。
大塚|それ、わかります。議事録見ると結論だけが書いてあって、経緯や背景が不明なことってありますね。
三木|例えば、後から議事録を確認して「アンケートが必要」となっていても、それが「webなのか紙なのか」わからなくなっていたりする。かっこつけなくていいし、不細工でもいいから、結局何をすべきかわかるように全てが網羅されていないといけない。クライアントに伝えるのは結論だけでいいかもしれないけど、結論に対して自分たちのタスクがあるから、それを明らかにしなくてはならない。そういった意味で、議事録は速いに越したことはないけど、その後のキャッチボールが多くなることの方が良くないと思う。メールも、必要事項を吟味して返信するようにしている。
仕事とは「何かを判断すること」。それはメンバーも一緒。
大塚|話は変わりますが、例えばプランナーやデザイナーからアイデアを出してもらい提案内容を決めることを目的にしていても、なぜか決めるのではなく、再度考えるための情報共有で終わる会議になっちゃうこともあって。
三木|そういうこともあるかもね。自分であれば、さっき「可視化」って言ったけど、参加者が情報を自分の役割に応じて咀嚼してメモでも殴り書きでもいいから資料化してもらってきてもらう。会議は相談する場ではあるけど、相談するための材料は自分で用意しなくちゃいけないと思う。
高比良|そのためには、自身の役割や求められていることが明確でないとできないよね。
三木|そう。各々が各々の役割を全うすれば、けっこうみんなハッピーになる。
高比良|一人ひとりが役割を全うしている状態とは?
三木|判断していること。判断してもらうことが必要な場合は、判断するための材料を用意していること。判断することを前提にして動いていくこと、かな。
仕事って判断することだと思う。何ごとも何かを基準にして選んだり、やめたりしているはずで、それがないアウトプットは薄い。
例えば、「見積もりをつくりました、確認してください」って言っても、「何を確認するの?」ってなる。どういったことを判断し、判断してもらいたいかを明確にすることは大切なことだと思う。
大塚|今の話を聞いて、なんで社内会議が長くなったり、多くなったりするのか考えた時に、自分たちの年次だと判断基準が育まれてないこともあるなあ、と思いました。各方面に判断を仰いでから判断していたり、判断ができないから結局判断してもらうための会議になって、報連相の報連...で終わってることも多いかもしれないです。
三木|最初は自分もそういう連続だったよ。自分なりに考えて考えて、自分だったらこういう判断をするって、くり返して積み重ねていくことが大事なんだと思うよ。
明日からやってみよう「アジェンダの選定」!
高比良|最後に若い年次のみんなが明日からできることについてアドバイスをください。
三木|アジェンダの選定ですかね?
高比良|「選定」?
三木|選定とは、アジェンダを決めること。会議直前にアジェンダっていうのはない。なぜなら、次の会議があるなら、そこまでに何を準備して何をやるのかのタスクがアジェンダであり指示書でありそれぞれの宿題。
オーナーがアジェンダを立てない限り、先に進まない。
よくあるのは、それをやらないで会議でそれぞれのやることを持ち帰ってね、というスタンス。これだと、やらなきゃいけないことが明確ではないので、アラートもリマインドもできない。
あとは、先に話した社内用議事録は、わかり切ったことも含めて書いた方がいい。後でやることを大項目、中項目、小項目のように因数分解することで、例えば電話して終わりってだけでなく、その確認やその後の動きまで括って、行動に抜け漏れをなくすことができる。
高比良|なるほど。プロジェクトオーナーとしての役割と責任を全うすることの第一歩は、まさにそのアジェンダの選定を軸にプロジェクトを動かすことですね。その上でメンバーが自律的に動ける状態をつくること。会議だけでなくプロジェクトの進め方にも共通する話ですね。
大塚|勉強になります!
編集後記 「会議の極意」 ~プロデューサー編~
三木さんの様々な「会議の極意」は、プロジェクトオーナーとしてのスタンスや工夫は、参加するメンバーがそれぞれの役割を十分に発揮できるような環境を整えていくことのように思いました。
三木さんはこうも言っていました。「クライアントも社内メンバーも自分も、忙しい中時間を割いて会議に参加している」。参加者の限られた時間に対して、絶対に意味を見出すハングリーさと周囲に対する真摯さを感じました。
みなさん、ぜひ参考にしてくださいね。
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