沈澱



足元に銀貨が1つ落ちていた
一歩また一歩と進むと
キラリと輝いた

一枚また一枚と
銀貨を拾いながら歩く

ずっと来て
夢中になって
ここがどこかわからない
すっかり真夜中になっているのに
僕は
煌めきを探してしまう

少し先へ
闇を腕で掻き分けながら
一歩また一歩
俯き進む

少し不慣れな匂いがした
はっとして目を見開くと
空からどんどん降ってくる
金の粒が降ってくる

まばゆさに我を失って
降り注ぐ金貨を見ていた

さらさらと降るそれは
音を立てることもせず
足元の沼に
ゆっくり沈んでゆく

はっと我に返ると
僕の胸までが
もう
沼に呑み込まれている
音もなく息もせず
僕は沼の深く深く
冷たく薄情な欲の深海に堕ちていた

翌朝
ふんわりとほのかに
優しい風に目醒めた
僕は桜の木の上に座った
春風に身を委ねると
向こうに小さく
少年が見えてくる

そうら!と微笑んで
僕は銀貨をぽつりと落とした

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