ネタ添削12本目【白雪姫の漫才】
女性二人コンビです。さっそく台本を読みましょう。
【BEFORE】
『白雪姫凄くない?』
A 聞いて聞いて聞いて!😆😆😆
B なんなん今日は😩
A 白雪姫って知ってる?🧐
B 知ってるよ😶
A あれさあ、大人になって考えたらめっちゃすごない?
B すごい?どこが?🧐
A どこが凄いか教えてあげるからちょっと頭からストーリー話してみて!
B うん、分かった。まあ言うたら頭はあれですよね、
鏡よ鏡世界でいちばん美しいのは?って継母が聞くところから始まるんですよ
A それがまずすごいよね!喋る鏡とかみたことないもん!
B うん、まあ、確かにな、こんな感じね!うん、でね
A 続けて続けて
B 白雪姫って答えられたから一番美しくいたかった継母が白雪姫を殺そうとするのよ
A これは継母が凄いねんけど、常に一番美しくくありたいという向上心!
B 向上心…??いや、まあ、うん
で命を狙われた白雪姫は森に逃げて7人の小人の家に住むんよね
A せやねんせやねん!!白雪姫マジですごくない?!
B どこが??
A 聞いてください皆さん、白雪姫は小人達と「仲良く過ごす」んですよ、仲良く過ごすって事はコミュニケーションめちゃくちゃ取れないと無理なわけですよ!
え?この中に「小人と共通の話題持ってるよー!」って人いますか???(客席問いかけ)
B さっきからすごいって言いつつバカにしてない?
A いやしてないよ!!え、私やったら小人に何聞くかな?
B なに?
A ふふふ(笑)何座…??とかかな?(笑)
B バカにしてるやん!
A いやしてない!続けて?
B ほんまに?まあ、で白雪姫が生きてることを知った継母がおばあさんに変身して
毒林檎を持って殺しにくるんよ
A ここここ!!ここ1番すごいと思うねん!!!
B 声でか!なんなん!
A だってさ、白雪姫その毒林檎食べて永遠の眠りにつくだけやねん。
B そうやけど
A え?これ普通考えたらめっちゃすごいやん!眠るだけで済んだんよ?!
B だからそうやって!
A 考えてみてよ
知らんおばあさんからもらった毒林檎食べたのが私やったとするやん
B うん
A まぁ毒やから身体に回るのに時間かかると思うねん、こう家事しながら「あ待って、お腹痛いかも」って😵
B いやなるかもせんけど!
A「痛い痛い痛い痛いい、お腹痛いよぉ〜」言うて😵😵
B 可哀想やて!白雪姫のそんなシーンは見たくないから!
A 森の端のトイレに走っていって「ドンドン!出てこいごらぁ!お前…また小人やな!ずっと目合ってるやろ!はよ出てこい!」
B 口悪いて!
A なるやろ!こちとら毒食うてんねんぞ?!
B いや、なるやろうけどさ、吐き気とかは無いん??
A 無い、お腹弱いねん私
B ああ可哀想に。まぁでも白雪姫もお腹痛いよォってなったかもせんけど絵本にそんなんは書けんやん
A ちゃうて!なってないやん!眠っただけやん!
B いや、うん…
A なんで伝わらへんねん!普通に考えたら私とかあんたとか一般の人は毒林檎食べたら絶対体調壊すねん
B ちゃうやん、そもそもの話し出したら知らん人からもらったもん食わんかったら済む話やん
A せやねん!!
B せやねん!?
A 普通はそうやねん!食べへんねん!でも白雪姫は知らん人からもらったものを「ありがとう」ってお礼まで言うて躊躇なく食べる勇気!!(バカにするように笑う)
B ちゃうもう、笑ってもうてるやん!バカにしてるやん!
A してないよ!まじですごない!?絶対私なら食べられへんも〜ん!
B やっぱ馬鹿にしてるよな!?
A してないよ!!だって白雪姫、最終的に王子様とも出会えるんやで?
B いやそうやけどさ
A ほら、白雪姫ってやっぱすごいよな?え、私間違ったこと言うてます??(客席に問いかける)
B いや間違ってるというか
A ちょ、次シンデレラのすごいとこも語っていい?
B いや付き合ってられるか、もうええわ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【ポイント解説】
さて、台本を見ていただきました。
白雪姫という物語のすごいところ、と言いながらボケの人が小馬鹿にしてるようなスタンスで掘り下げていくというネタですね。
こういう題材で漫才を作る人は多くいます。
プロもやってるし、テレビで観たこともあります。
まあ、ストーリーを知られている分、作りやすいから、というのがあるのでしょうね。
僕はこの手のネタはほぼ絶対に書きませんが。その理由については、また次のコラムかなんかで書きます。
ここを否定しちゃうと、添削にならないので。
今からは、人格を変えて、【この手のネタが好きなハクション中西】に生まれ変わったとして、書きますので、みなさんもそのつもりでお読みくださいませ。
さて、童謡、アニメ、歌、など、なんでもいいのですが、テーマにしてネタを作る、というのは、イチャモンをつけるという行為の笑いになります。
そのイチャモンの視点が面白ければ、ウケるネタになりますし、そこの視点が浅ければ、笑いが取りにくい。
特にこの台本では、【大人になってから考えたら、凄さに気づく】と提案しております。
何度も言ってますが、漫才の基本は【提案】です。なので、そこはクリアしていると言えます。
が!!
大切なポイントがありますね。
【すごさに気づく】という表現。
具体的に提案しているようで、、、実はとても漠然としてます。
すごいってどうすごいの????
あやふやにして、進むこと自体は悪ではありません。ただ、【作り手がそのことを意識しながら作ってるかどうか】が大問題なんですね。
台本では、すごさがあやふやなまま、進んでいき、わりとあやふやなまま終わっています。
“すごい”よりも“不思議な点がある”ではいけなかったのかな?と思ってしまいます。
というのは、日本語として。
“すごい”と“不思議な点がある”だと、すごいのほうがハードル高く感じませんか?
【すごいと言いながらバカにする】が主眼なので、そこは“すごい”でないといけない、と反論されると、そうなのかなとも思いますし、一理あります。
ただ、その場合は、【すごいと言いながらバカにする】という部分に共感を呼ぶ何かや、インパクトがもう少しほしいかなと思いました。
あと、中身のイチャモン(ボケ)についてめちゃくちゃ大切なポイントがあります。
素材は変わりますが。ウルトラマンってありますよね。下記の台本があったとします。
B ウルトラマンってさ、実は悪のヒーローじゃない?
A え、どこがよ?怪獣から地球人のために戦ってくれてる正義のヒーローやん
B え、怪獣投げ飛ばした時にビル壊しまくって、人が死にまくってるのに?
みたいな漫才台本があるとしますね。
このイチャモン、小学生が全員突っ込んでたレベルなんです。これをプロがやるかねぇという話。
僕なら、恥ずかしいから、その話題をするにしても、【ボケの部屋】には入居させず【フリの部屋】に住まわせます。
B ウルトラマンってさ。当時の小学生も全員突っ込んでたけど、怪獣と戦う時に、ビルとか壊しすぎってのがあるやんか?
A あー、それな、俺のツレの学校の先生がああいうシーンを当たり前と思わせると、本当に教育に悪いって言うてたわ。中に人がおるという想像力と優しさを持つ子供にせなあかんって
B でも、俺は小学校一年生の時に、ウルトラマンがビルを壊すシーンを見て、「ははーん!これは、ガン細胞を殺す時に、周りの正常な細胞も多少は殺してしまうが、結果としてその人自体を生かすという現在の医療の問題を考えさせ、僕のような小学生に問題提起することを円谷プロダクションは狙ってるな!」ってピンときたけどな
A 賢すぎるやろ!そこまで考えてないわ!円谷プロも!
B 3分という時間の大切さも教えてくれてるな!って
A 嘘つけ!ええかっこすな!自分をまるで神童みたいに!
……
みたいな感じで続けます。
ボケじゃないから言われたほうも「あー、それな」と返してます。
これが大人の会話です。
これだと、大人も聞く気がすると思うのです。
チュートリアルさんの漫才で桃太郎のイチャモンのくだりがあって、それは面白かったので、覚えてるんですが。
「なんで、犬、サル、キジって犬とかサルとかは大雑把やのに、キジだけ種類限定で攻めてくるねん。トリ、でええやろ」
こういう視点は、“気がつかなかったけど、言われてみれば笑ってしまう”なのでとてもいいボケ、いいイチャモンなんですね。
まとめると。
童謡とか、アンパンマンとか、いい歳した大人が子供の見るようなものを題材にする以上、小学生でも突っ込んでたようなレベルのボケではなく、視点を新たに、イチャモンを希少性のあるものにしてほしい、ということです。
なので、「鏡が喋るなんてすごい!」みたいなところは残念ながらカットするか、あるいはツッコミが「小学生か!!」とツッコミを入れるか、しないと、ちょっと厳しいかなと思います。
僕なら下のように突っ込ませることすらあり得ます。例としてわかりやすいと思うから載せます。↓
「鏡が喋るねんで!すごない?」
「嘘やろ、こいつ。(相方を指差しながら)小学生がお母さん笑わそうとして言うレベルのことを大人がセンターマイクの前で言うてるーっ!お客さん!逃げてーっ!」
これは、極端な例ですし、もちろんお客さんのレベルや演者側のキャラクターにもよりますが。
※元の台本も、鏡が喋る、に対して、激しくツッコんではいないようですが、ボケととらえられかねない運びです。ツッコミさんのセリフがめっちゃ大切ですね。
むちゃくちゃおじいちゃんの漫才師さんぐらいまでいくと。
「鏡が喋るの?」と言うと、笑ってしまう可能性はあります。
それは、なんのギャップかと言うと、すっごいおじいちゃんがまだ小学生みたいなこと言ってるというギャップなんです。
もうひとつ、ボケが認知症のほうのボケっぽさも裏側に見えるという要素もあります。
いとしこいし先生の台本で「冬はお鍋が美味しい」というくだりで「あんた、歯が丈夫やなあ。あんな硬いもの食べるの?」というくだりがあります。
あれは、そういう面白さもプラスされてるんですね。だから、30歳ぐらいの大人の漫才師が、いとこい先生の鍋のくだりを真似てやっても、ウケは減ります。
かけてもいいです。ウケは減ります。
さて、お話は戻りますが、“鏡が喋る”は僕なら【ボケの部屋】ではなく【フリの部屋】に住まわせます。
たとえば「なんで、鏡が喋る世界やのにリンゴは喋って教えてくれへんねん」というほうが、まだボケとして理解できます。
これなら、鏡が喋ること自体をボケにしていないですね?そこは前提として、次のボケを考えるのがコツです。
僕はそこらへんの芸人が【ボケの部屋】に入れてしまうような発想を【フリの部屋】に入れて考えることを常に意識しています。
かなり面白いボケを思いついたとするじゃないですか?
僕は、それですら【フリの部屋】に入れることもあります。
ただ、これはホントに僕ぐらいの限られた才能の芸人にしかできないので、そこまではしなくて良いです。
あかん。どんどん嫌われる(笑)。
ということで、ここからは好かれるために、添削を頑張ってみます。
我を出しすぎずに、面白いボケは残します。
さて、今回の添削は、いつものように変えすぎず、趣向として【ツッコミ次第でボケのクオリティは低くても笑いは取れる】ということに主眼を置いて、添削します。
くれぐれも言っておきますが、元の台本のボケのクオリティが低いと言ってるわけではありません。
【クオリティを低いボケをわざとやってから、ツッコミのセリフメインで笑いをとってしまうというテクニック】があるし、僕もよくやります。それを言いたかったのです。
多分、今回はめちゃくちゃ参考になると思います。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【AFTER】
A 聞いて聞いて聞いて!
B どうしたの?今日は?
A 白雪姫って話、知ってる?
B まあ、子供の頃読むからな
A 鏡が喋るねんで!
B 子供か!!どこに興奮してるのよ!大人が!
A 白雪姫って不思議なとこいっぱいあるから、大人になってから、読んだら夜、眠れないよ!
B そんな要素ある?
A わたし、今日一睡もしてないけど、でも幸せ!
B 昨晩、読んだのかな?幸せで良かったけどやな。どこが不思議で面白いの?
A 鏡よ鏡、鏡さんってセリフあるやんか
B 継母が鏡に向かってしゃべるとこね
A 鏡よ鏡、って二回も呼び捨てにしてるのに、三回目は“さん”つけてるあたり、サイコーッ!
B (客席に)すいません、この子、寝てないんで。
A 仲良くなりたい時、敬語とタメ口をチャンポンにしたりする感じを、鏡にやってるあたり!サイコー!
B (客席に)終わったら病院に連れて行きますんで
A で、鏡が「一番美しいのは白雪姫」っ継母に答えら、自分が2位だから、白雪姫を殺そうとするわけやん?
B そういう話やね
A 常に一番美しくくありたいという向上心!
B 向上心かな。表彰台で、銀メダリストが金メダリスト蹴ってるだけやけどな
A せやねんせやねん!!そこがかっこいいねん
B 価値観バグってるの?
A あと、聞いてください皆さん、白雪姫は小人達と「仲良く過ごす」んですよ、仲良く過ごすって事はコミュニケーションめちゃくちゃ取れないと無理なわけですよ!
え?この中に「小人と共通の話題持ってるよー!」って人いますか???(客席問いかけ)
B さっきからすごいって言いつつバカにしてない?
A いやしてないよ!!え、私やったら小人に何聞くかな?
B なに?
A ふふふ(笑)何座…??とかかな?(笑)
B 興味ない人に聞くやつや!それ!
A あと、継母は、白雪姫に毒リンゴを食わすためにおばあさんの姿に変身してわたしにいくんよ。不思議じゃない?
B どこが不思議なの?
A だって、美しくありたいのに、一瞬ババアになるのはええんかーいって
B そこだけ同意やわ!初めて感心した!!
A ババアになったら、2位どころか、100位にも入らないよ!
B 客席にお年を召した女性がいないか見るのもツッコミのわたしの仕事なんですぅ(客席に笑顔を向ける)
A あと、毒林檎たべた白雪姫、眠るのも不思議じゃない?
B 童話だからね。
A だって、毒はお腹痛くなるもんで、眠れるのは、眠剤(ミンザイ)!
B 永遠の眠りやからね!睡眠薬とは言わないと思うよ
A ミンザイ!バンザイ!
B アンタに必要やねん!ミンザイ!寝ろ!
A わたしやったら、お腹痛くなるから、森の端のトイレに走っていって「ドンドン!出てこいごらぁ!お前…また小人やな!ずっと目合ってるやろ!はよ出てこい!」
B なんで小人とでっかい女が同じトイレ使ってると思ってるんよ
A あと、継母は継母やから、面識あるのに、なんでそのままリンゴをあげずに、知らんおばあさんに変装したら、食べてくれると思ってるのか、クレイジーな継母、好き!
B そこはほんまに共感するよ!確かに、知らん人からもらったもん食わんかったら済む話やのに、白雪姫は食べてるしね!
A せやねん!!普通は食べへんねん!でも白雪姫は知らん人からもらったものを「ありがとう」ってお礼まで言うて躊躇なく食べる勇気!!(バカにするように笑う)
B ちゃうもう、笑ってもうてるやん!バカにしてるやん!
A してないよ!まじですごない!?絶対私なら食べられへんも〜ん!
B やっぱ馬鹿にしてるよな!?
A してないよ!!だって白雪姫、最終的に王子様とも出会えるんやで?
B いやそうやけどさ
A ほら、白雪姫ってやっぱすごいよな?え、私間違ったこと言うてます??(客席に問いかける)
B いや間違ってるというか
A ちょ、次シンデレラのすごいとこも語っていい?
B いや付き合ってられるか、もうええわ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
というわけで、添削を終わりました。
ここからは前述しました【ツッコミ次第でボケのクオリティは低くても笑いは取れる】というポイントに主眼を置いて、AFTERのテクニック解説をしていきます。有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。
もっともっと添削の内容を知りたい方には、個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得です。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?