ドーピングラーメン部
【第1章 アホなノリが好きな集団】
“アホな大学生が言い出しそう”
“アホな大学生が考えそう”
“浮かれた大学生のやりそうなこと”
“おもんない大学生か!!”
このように。
“大学生”というこの三文字の言葉は、とかく、無邪気でアホで短い青春を謳歌する奴らの喩えとして、頻出する。
しかし、本当にそうだろうか。
読者が何歳かは知らないが、我々オッサンたちは、ひょっとしたら、そういう大学生の、政治や思想と無関係に見える無邪気さが、実は羨ましくて仕方ないのではないだろうか。
「王将で、大皿で料理を小皿で取り分けて食べたほうが、安い居酒屋より、実はさらに安く済むんじゃないか」とか。
興奮した顔で、話す人でありたい。
いや、それ以上に、そんなことを言ってくる奴が好きなのだ。
何歳になっても、そんなことを言う人が良い。
金持ちなのに、それを言うとかが一番サイコーである。
金がないからヒッチハイクするのも良いが、金はあるのにヒッチハイクするようなのが良いのである。
そんな考えを持つ、82歳の私に、突然、絶世の美女が現れた。
82歳の私だからそう見えるわけではなく、実際、タレント事務所に所属している女優と言われても驚かない30代前半ぐらいの美人である。
「ドーピングラーメン部に入らないですか?」とミヒロは私に話しかけた。
ミヒロとの出会いは、私が、おもちゃ屋さんにいる時だった。
おもちゃ屋さんに入って、一円たりともお金を落とさないのに、「このおもちゃは俺ならこう遊ぶ」とか、ノートにつけていたところを発見されたのだった。
「そんなことをやっているおじいさん見たことない」とミヒロは嬉しそうだった。
喫茶店でミヒロは説明した。
「ドーピングラーメン部ってのは何や?」と私は聞いた。
「ラーメンって、お酒を飲んだ後、食べると異常に美味しいじゃないですかぁ?
でも、たくさん食べて飲んで、って散々、胃腸に負担をかけたあとに、またさらにラーメンを食べるってなると、さすがに体にこたえるなぁって。
そこで、わたしが編み出した必殺技がドーピングラーメンなんです!!
コンビニとかに行って、お酒を買って、つまみナシで、お酒を一本飲み干しながら、ラーメン屋さんを目指すんです。
そしたら、まずいラーメン屋さんは、美味しいラーメンに!!
美味しいラーメンは究極に美味しいラーメンに早変わり!!
これが、ドーピングラーメン部の活動です!」
可愛い。
たまらん。
必殺技とか言うてる。
ミヒロ最高。
私があと10年若かったら。
いっとった。
言うてることも最高である。
こんなええ女が。
こんなアホみたいなことを。
わしがあと10年若かったら。
いっとった。
必殺技とか言うとる。こんなにええ女なのに。
「ドーピングラーメン部、じゃあ、オレも入るよ!面白そうやね」と私は二つ返事で答えた。
「良かった。ジジイは陸海空(りくかいくう)のどれに入る?」とミヒロは聞いてきた。
なんで、そんなしょーもない活動なのに、陸海空があるのだ。
いよいよ最高である。
たまらん。
アホな大学生みたいな発想で、飛び抜けた美人である。
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