添削15本目【お互いのことをよく知ろうの漫才】

添削15本目になります。
前回、どっちの台本が僕で、どっちが依頼主さんのものか、クイズを出しました。

分かりましたでしょうか?
答えの発表も兼ねてさっそく依頼主さんのBEFOREを読んでいただきましょう。


【BEFORE】

どうも○○○です。お願いします
A:相方のことをもっとよく知るほうが、良い漫才できるようになると思うねん

B:なるほど

A:だから、お互いに質問していけへん?

B:質問?

A:例えば、海派・山派、ごはん派・パン派みたいな感じで、2つが対立するような質問をしていく

B:楽しそうやな

A:じゃあ、いくで。うどん派?それとも、そば派?

B:そば派。うどんよりもそばの方が栄養が多いって言われてるから。じゃあ、肉うどん派?それとも、山菜そば派?

A:う〜ん、お腹減ってくる質問やな。今はどっちの気分でもないかな。選ばれへん

B:なるほど、優柔不断ってことが分かったわ

A:じゃあ、犬派?それとも猫派?

B:犬かな。実家でずっと飼ってたし。じゃあ、賢い犬派?それとも人懐っこい猫派?

A:う〜ん、難しい。考えれば考えるほど、悩んでしまう。答えるの明日でもいい?

B:あー、仕事を先延ばしにするタイプか

A:仕事?

B:だんだん相方の本性が見えてきたわ。じゃあ、和?それとも洋?

A:シンプルやね。でも、和食洋食なのか、和菓子洋菓子、和式便所洋式便所。どれのこと言ってるんやろ?

B:全部

A:え?

B:和式便所で和食食べて和菓子食べる派か、洋式便所で洋食食べて洋菓子食べる派

A:想像したら吐きそうになる質問やめて!

B:想像力ありと

A:じゃあ、コーヒー派?それとも紅茶派?

B:紅茶で。コーヒーよりも紅茶の香りが好きだから。じゃあ、むね派?それとも、うちもも派?

A:え?それは、肉の部位なのか、フェチなのか。どっちのことやろ?

B:両方

A:え?

B:胸を見ながらむね肉を食べる派か、うちももを見ながらうちもも肉を食べる派か

A:…どっちも良いなぁ

B:気持ち悪い変態。はい、相方のことがよく分かりました

A:変な質問してくんなよ!だいぶ印象悪くなったんじゃない?

B:価値観ぴったり

A:お前も変態やん!もうええわ
ありがとうございました

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【ポイント解説】


漫才台本を読んでもらいました。
以前、このnoteを読んでる方(お客さん)から言われた意見のひとつで、こんなのがありました。

【BEFORE】は読みにくいのが多い。何回も読み直さないと頭に入ってこない。


そうなんです。
この台本も、なぜか自然と頭に入ってこないので、何回も読むことになりました。

何が煩雑にしてるのでしょうか。


以前、【長所短所の漫才】の時に書きましたが。

以下のやつね。

https://note.com/hakushon25/n/n61f6633b7ab4


えー。


この台本も【哲学的漫才】に近いんですね。


“この手の漫才”というのは、二人の関係性があまり分からない初見の人を笑わせる内容にしなければいけないんです。

相手との絆がどうこうとか、関係性や個人の属性や性格などについてのやりとりをして笑わせる漫才なら、AとBの性格や関係性が、初見のお客さんに分かるようにしてないといけないんです。

ところが、二人がどんな人なのか、最後まで全然分からないんです。
“哲学的漫才”ですね。


「お前は変態や」
「ちょっと待てよ!」みたいなやりとりは、とても表面だけで、具体的にどう変態なのか、よく分からないんですね。
で、本当によく分からないまま終わる。


大喜利っぽい漫才や提案がある漫才なら、二人の性格や関係性がそこまで出てる必要はないけど、この漫才台本だと、それが分からないといけないのに、出来ていないんですね。


流れを見ていきましょう。


お互いのことを知り合ったほうが、コンビとしてはいいよね、、、という始まり方は別にいいんです。

漫才の基本は“提案”です。
今回は一応それを明示しています。
明示の内容も悪くないです。いいと思います。

流れは、“交互”に「お互いが何派か?」みたいな質問をしていく。

ここです!!
交互にする必然性があるならいいんですけど。

必然性あるのかなと思って読み進めると、必然性が全然感じられず、すごく読みにくいんです。


これ、しかもAが提案の言い出しっぺなのに、BがAに対して、優柔不断だとか、仕事を先延ばしにするタイプとか、言ってます。

Aが何か策略や魂胆があって、言い出して、Bを占う、とかBを陥れるほうが読みやすいし、見やすいのに、なぜ提案された側のBがひねくれてるのか、そこも謎ですし、読みにくい部分です。

優柔不断と言われたり、仕事を先延ばしとか言われた側のAはなぜか言われっぱなしですし。なぜ言い返さないのか。
ツッコミということもあるけど、それ以前に、言い返さないのが会話として不思議です。

感情が見えてこない。


言われるたびに、AがBに怒ってさえくれたら、「あー、なるほど。BがAにちょっかいを出して、Aがプンプン怒っていくネタなんだな」と思いながら読めますが、ホントに淡々と進むから「いや、どっちのセリフなんだ、今?」みたいになります。


交互に言い合う、となってるのに、AがBに聞いてる質問が、普通の質問ばかり(うどん派かそば派か、犬派か猫派かコーヒーか紅茶派か)で、Bもそれに対して普通の答えばかりをしてるのも非常に気になります。

じゃあ、「AからBのターン、全くいらんやん」と思います。何のための交互なのか。
フリにもなってないんです。


いつも辛口で申し訳ないです。

面白いと思うボケもあるのに、もったいないです。下記の部分とか↓

B:和式便所で和食食べて和菓子食べる派か、洋式便所で洋食食べて洋菓子食べる派

A:想像したら吐きそうになる質問やめて!

B:想像力ありと


こういうせっかく面白いくだりの手前で、もうお客さんが聞いてない、などは悲しいですよね。

でも、お客さんはちょっとでも「え?なんの話?」となると、もう聞いてくれなかったりします。


【レベル1の改善策】

そもそもAが言い出しっぺなので、AがBにたいして、何か策略があるとしましょう。そのほうが分かりやすい。

別に提案を言われた側がふざけて台無しにする、でもいいんですが、それなら、台無しにされるほうは怒らないといけません。

あと、もうひとつ。
煩雑さをなくすために、交互に、はやめてもらいます。

「お前の性格をもっとよく知りたいから、今から何派?って質問を順番にしていくから答えてな!」と言って、答える側と問題を出す側を完全に分ける。

これだけでめちゃくちゃ読みやすいです。
これがオススメです。レベル1だからネタのレベルが低いということにはなりません。

書きやすいし、伝わりやすいし、ウケやすいので、この改善の仕方をオススメしておきます。


【レベル2の改善策】

ただ、工夫したつもりのアイデアを普通に戻せ、と言われると、ネタを書いた人としては面白くないでしょう。

交互に相方に、何派かを聞いて絆を深めたいんでしょ。元のネタは。


ただ、交互に、ってのが難しい。
ボケとツッコミも交代するのか。
はたまたボケとツッコミは同じままなのか。

どっちにしても交互にする以上、下記は絶対だと思います。

“Aの出す問題”と“Bの出す問題”が、字面だけで個性や特徴が分かれるものにしなくてはいけない。


でないと、読みにくくて仕方ない。


元の台本、“一見”、そうなってますけどね。

個性があるのかもしれないんですが、“謎キャラ”なんです。前も言いましたけどね。

“謎キャラ”はやめてくれ笑笑
頼むから。


なぜ、うどん派かそば派かを聞かれたあとに、肉うどん派か山菜そば派かを聞くのか、こいつの目的が不明すぎます。

犬派?猫派?と聞かれたあとの、“賢い犬派?それとも人懐っこい猫派?”と聞き返してるくだりも、ホントに意図が分からない。

【ひろーく聞かれたあとに、ピンポイントに狭くして聞き返す】キャラ。

いや、謎キャラすぎません?

別に謎キャラであっても、それに対して何かツッコミでもあれば、読みやすいんですが、これがまた、なんにも触れてくれないので、すごく読みにくい。

触れずに終われば、ホントに謎キャラのまま終わります。


“読みにくい”イコール“現場でもお客さんに伝わらない”と考えてください。

本当に読みにくいです。


交互に答えてるわりには、片方の答えにあんまり反応示さない感じの台本です。熱がないんです。二人ともに。


ほつれまくった糸みたいになってるんです。


「もう犬派か猫派かという同じテーマで二人が言い争いをしてるだけの台本にしてくれぃ!」と言いたくなります。


どっちがどっちか分からなくなるのを防ぐために、片方のキャラともう片方のキャラをめっっっっっちゃくちゃ分かりやすく分けるべきですね。

なんでもいいけど、たとえば。


A

犬派?猫派?


猫の中でも生きてる猫派?死んでる猫派?


生きてる猫の中でも病気の猫派?健康な猫派?


生きてる健康な猫の中でも、病気になる確率が高い猫派?低い猫派?

B


コーヒーにお砂糖入れる派?入れない派?

カレーライスは辛い派?辛くない派?

ドラえもんは大山のぶ代派?水田わさび派?

と、このようにAは「何を言わせたいねん、このサイコパスめ!」という気持ち悪いことばかり聞いてくる人で!Bは無邪気な質問しかしない、など。

とにかく読んでて、どっちがどっちか、すぐに分かるぐらいにしてほしいですね。

もうウケるウケないよりも、読みやすい台本にまずなってるかどうか、他の皆さんもチェックしてみてください。


今回は①のパターンで添削したいと思います。

正直②は難しそうなので、あまり自信がありません。
やろうと思えば書けますが、しんどいので、今回は①だけにします。

ね?
僕でも交互に書くのイヤなんですよ。複雑になるから。

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【AFTER】レベル1の添削の台本


A B どうもー、〇〇〇〇です。よろしくお願いします。

A コンビを組んでて、お前の性格をもっと把握したいから、今から質問していっていい?
俺と同じ意見かどうか、当てはまる数が多いほど、コンビで同じ方向を向いてるってことやから

B あー、なるほど。そういうこと?
お笑いとして、同じ方向を向いたほうがいいもんな。

A せやねん

B よし。いいで

A 犬派?猫派?

B どう関係あるねん!お笑いと!!!犬派やけど!

A 解散しよ

B 猫派なんかい!解散理由を人に言われへんやろ!「犬派か猫派かで、方向性の違いで解散しました」とか先輩によう言わんやろ!
俺、先輩に、その解散報告ようせんから、猫飼うから!

A ほな次な。
リハから舞台までの間を楽屋で芸人たちと過ごす派?

B あー、なるほどなぁ〜

A それとも、いったんちょっと家に帰って猫の様子を観に行く派?

B ホンマに飼うわけないやろ!!!楽屋で芸人たちと過ごす派や!お笑いやるんやったら、出来るだけ楽屋でワイワイ話すほうがええやろ!

A 解散やな

B こっちやぞ!それ言いたいの!

A 猫を飼って、時々、家に様子を観に帰って、癒されることで、うっとおしい先輩とからまずにネタを書く言い訳に利用できるから

B ほなお前ネタ書いとけや!家で!
俺は楽屋で先輩と人間関係を作っとくから!!

A じゃあ、そこはそうしよう。次な

B なんやねん、もう。

A うどん派?そば派?

B 関係ないやろ!お笑いと!!どっちか言うたらうどんやけどな!

A おおお。俺もいっしょ

B 嬉しくもないけどな

A じゃあ、天ぷらうどんと天ぷらそば、どっち派?

B 天ぷらうどんや

A おおお。いっしょや。じゃあ、月見うどんと月見そば、どっち派?

B 月見うどんや!!うどん派や言うてるやろ!

A 解散やな!

B なんで入れ替わるねん!

A たまごの場合は、そばのほうが合うねん。絶対!!月見そば!

B 変なこだわり持ってるあたり、ネタ書いてるほうやな!ええんちゃうか!俺は月見うどん派やけどな!!!

A 解散や

B 人に言われへんやろ!解散理由!「月見うどん食べたら解散されました」って先輩によう言わんわ!!
わかったから!!これから月見そば食うから!お笑いのこと聞けよ!

A ダウンタウン派かとんねるず派か?

B 聞くな!それは!公衆の面前で!!どっちにもうまいこと、すりよる芸人でありたいねん!

A お前、、、考え方、犬派やんけ💢

B つながっとんかい!深層心理!
分かった!先輩に媚びひんし、猫飼うし、うどん派やけど、月見の時だけ月見そば食うわ!

A それはそれで、俺に解散されたくないから媚びてるから犬や

B 解散や!別にこまらん!他の人と漫才する!!

A (泣く)‥だって、そんなん、解散って言ったら、止めてくれると思って言うてるし、ほんとにそんなん、思ってないし。そんなん言われたら、つらいし

B 気持ち悪っ!やめさせてもらうわ!

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というわけでAFTERのレベル1を読んでいただきました。

ちなみに、僕は自分がネタを書く時、一行ずつ、冒頭から終わりまで一気に書くことが多いです。

その時に、どんなことを考えながら、書いてるのかを今回は解説していきます。
あとは、AFTERのレベル2の添削のバージョンも観ていただきましょう。


さて、ここからはAFTERのテクニック解説をしていきます。有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。

もっともっと添削の内容を知りたい方には、個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得です。

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