前回の答え。添削13本目【ドレスコードのコント】
さて、前回の答えも含めて、添削前を見てもらいましょう。こっちが依頼主さんのネタでした。
【BEFORE】
コント ドレスコード
暗転板付き→手上げ明転
よし、高級レストランに行くぞー!
すみません、1人なんですけどいけますか?え、いけます!?
あ、上着ですかありがとうございます。予約とかなくても行けるもんなんですね。
(上着を脱ぐ→大学名の入ったタンクトップ姿、したはスラックスに革靴)
え、え、あ、え、今シェフ呼びますか?シェフ!シェフ!
入れない?何でですか?ドレスコード?
ドレスコードってなんですか?
みなまで言うな。わからないことは自分で調べます!
hey,siri.ドレスコードって何?
すみません、よくわかりません。
あ、辞書あるんで調べますね!さすがに古語辞典にはないですか。
じゃあ少なくとも僕の辞書にドレスコードという文字はない!大学でも習わなかった!!
じゃあ、失礼しますー。
(突入しようとする→弾かれる)
なんですか?あ、スーツじゃないとダメなんですね。下は着てますよ。逆リモートワークスタイル。リモートワークご存じですか?
OK。google,逆リモートワークスタイル
すみません、よくわかりません。
わからないんですって!じゃあ失礼しますー
(突入しようとする→弾かれる)
ディフェンスがお強い!今フェイントかけたのに。フィジカル強いっすね。体育会系でしょ。やっぱりそうだ。えー、筋肉すごいですね。肩にちっちゃい重機乗せてんのかい!ですね。あら、腹筋6LDKだ。6LDKって実際7部屋ありますよね。はっはっはっ。
それでは、失礼しますー。
(突入しようとする→弾かれる)
もう。なんなんですかー?
というかそれにしてもきれいな店内ですね!あそこにかけてある絵はどなたの作品ですか?
今や!
(突入しようとする)
ういー。これじゃダメか。
あ、あそこにUFOが!!
全く見向きもしてないやん
いや、素晴らしいお店だ。フロントからしっかりしている。申し遅れました。私こういうものです。
(服をめくる。ミシュランの文字)
あんまり自分から名乗るなよとは言われてるんですけどね。こうでもしないと入れないでしょ。じゃあ失礼。
何なんですか!身元もばらしてるし、ここまでホメてるんですよ!星3つ確定演出なんですよ!なんなら今出せますよ、ほら!星3つです!!!
(星の飾りを配ろうとする)
あ、そんなチューボーですよみたいなシステムではないんすね。
下だけは着てるんですよ。コースの下半分だけでもだしてもらえませんかね。メインディッシュとデザートだけでいいんで。それがほぼ全部みたいなもんか。はっはっは!
じゃあ、失礼しまーす!
(突入しようとする→弾かれる)
なんなんですか。
ちゃんとお金払いますし、食べログでもいい評価つけるし、googlemapとかでもまともな口コミ書きますよ!
「だから、入れてよー!」
下記の音声再生
(1分13秒)
(強行突破するもボコボコにされる)
音声の詳細
[中島みゆき「空と君のあいだに」イントロ、途中からパトカーのサイレン音
「空と君のあいだに」サビ前から1サビ(君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる)まで]
音声→警察だ、ここを無許可で営業しているな。書まで来てもらおうか
あ、俺じゃない!耐えたー!
音声→おい、そこのシンプル変質者、お前もだぞ
やっぱダメかー。
どうもありがとうございました。
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【ポイント解説】
というわけで、ネタを見ていただきました。
みなさんの感想はどうでしょうか。
まぁ、シンプルな台本ですね。ドレスコードがある高級レストランに、場違いな大学生が入店させてもらえない。
中島みゆきの音楽を使い、哀愁のある台本にしておりますね。
ざっくりとしたイメージ、現代の若手がやってるコントというより、なんだかドリフっぽいコントですね。
“もしも、無理矢理高級レストランに入ろうとする人がいたら”みたいな、もしもシリーズですね(笑)。
さて、本編について、なんですが、ドリフに喩えたことからも予想してほしいんですが、“力量”がいるんです。ウケさせようと思うと。
この台本で、志村けんさんが演じるとかカトちゃんが演じる、なら、笑いも取れるのかなと少しは思えますが、本人によるパフォーマンスによってウケが左右するネタだなと思いますね。
なので、これだけで添削はしにくいんです。
ただ、正直に台本だけを読んだ予想を言うと、ウケにくいかなと思います。
酔っぱらいの演技が絶品で、どんなシチュエーションで酔っぱらいをやっても面白く感じる、みたいな人じゃないですか。志村けんさんは。
そういう人ばっかりじゃないから“よくできた台本”が普通は求められるんですよね。
この台本は、そういう意味でも難しいし、昭和の古い笑いとも言えます。
荒いんですね。台本が。
酔っぱらい、ではなく、“下だけフォーマルな大学生”でしょ?本人の台本のワードを借りると、“逆リモートワークスタイル”ですかね。
この表現は面白いと思いますが、キャラクターとして、どうやって笑わすつもりなんだろ、と疑問を覚えます。
カトちゃんでも志村さんでも、藤山寛美さんでも、どなたでも、これを読んでるあなたがお好きな落語家さんでも、酔っぱらいの演技が面白い人を思い浮かべてほしいです。
それに対して、このシンプルな大学生。
謎なんですよね。キャラクターが。
台本を読んだ限りでも、なんで高級レストランのことを何も知らずに入ろうとしてるのか、理由も見えてこないし、キャラクターもわからない。
チャラい大学生で、「わあああ、こんな奴おるおる!」みたいな喋り方なのが、台本だけで思い浮かぶ、または台本では浮かばないけれども、この人が演じたら、吹き出してしまう、みたいな演技力がこの依頼主さんにあるなら、それでいいんです。
それならウケてるんでしょうから。
ただ、台本として読んでる限りでは、点数は高くない。
ただ、あるかどうかわからない依頼主さんのパフォーマンス力(りょく)の話をいつまでもしていても仕方ないですね。
ここからは、“この人の演技力が普通レベルだと仮定”して、考察していきます。
なので、依頼者は「俺はこの台本で死ぬほどウケてるし、パフォーマンスも神がかってるんじゃ!」と思う場合は、続きを読まないで大丈夫です。
僕の負けです。
さて。この台本は、荒いです。
台本を作る人にとても都合よく出来てるんです。
というのは、本来は違和感があるのに、一人しか舞台上にいないから、その違和感を止める人もいないから、無視して、一人で最後までやり続けてて、ネタが終わるんです。
どこが荒いかを具体的に言っていきます。
まず、この大学生、シラフなのであれば、ただただ頭がおかしいんです。(本編に明確に大学生とは書いてませんが、大学の名前の書いたジャージ、とか、大学でどうたら、という表記があるので、まあ、大学生かOBか、とみなしてます}
さて、この台本は理由なきボケなんですね。高級レストランに入りたがるのに、何にも理由がない。
最初に入りたがるのは、入りたがってもいいけど、こんなに止められてるのに、何回も、何回も、トライしないでしょ?
僕がよく言うことですが、この台本は、【ボケのことをふざけることと勘違いしてる人が書いた台本】です。
高級レストランに、一人で大学生が急に入りますか?
何の理由もなく。高級レストラン行こう!って急になりますかね。
その違和感にたいして、何にも説明または、説明的なボケがないんです。
書いてるうちに僕も、わかってきました。
この台本、ドリフの台本にしても、良くない台本です。
もし、こんなに、止められてるのに、中島みゆきを流しながら何回も何回もトライするキャラクターなら、【ハッスルくん】みたいな何でもハッスルして、気合いで乗り込んでいきそうなキャラクターの台本を書かないといけません。
パロディになってしまいますが、この人が、(アニマル浜口の服装で)とかト書きに書いてくれていて、「京子ーっ!父さんは高級レストランの差別に負けないぞ!気合いだ!気合いだ!気合いだーっ!」と叫びながら突進するような台本なら、まだ読めるんですね。
パロディがイヤでオリジナルキャラでやりたければ、「一直線!一直線!いっちょくせーん!」とか行進でもしながら、やってきて「高級レストランはっけん!腹減ったデアリマス!!いっちょくせん!ここで食べまーす!」かなんか分からないけど、何回止められても突き抜けていきそうなキャラクターを考えてほしいです。
※方向性の話をしてるのであって、このキャラも、僕は多分スベると思いますけどね笑。
大切なことを、言いますが、キャラクターというのは、“謎キャラ”であってはいけないんです。
特に初心者は謎キャラやめてほしいです。
この大学生は謎キャラです。感情移入できない。
謎キャラでもいい場合はいくらでもありますが、もう初心者は謎キャラやめてほしいです。
急に彼女が出来て、背伸びしました、とか、何か理由がほしいです。
ふざけたいだけで、ボケたいだけだから、そこらへんの外堀が何も埋まっていない。
だから、共感できないから笑えない。
都合がいいと感じるのは、他にもあります。
レストラン側はエアーですよね?
※“エアー”とは、相手側が見えない時によく使う用語です。
エアーだから、この人は台本を、都合よく進めやすいけど、お客さんからしたら「こんな変な奴と、そんな長々と会話してくれるかね」と思ってしまいます。
1人で勝手に叫んでる風なら、まだ観れますが、会話をやりとりしてますよね。かなり。
自分に都合の良い脚本です。
この人に、提案してみたいのは、コントを作る時に、表の台本に仮に出てこなくてもいいから、出てこない部分もリアルに設定をしてみてほしいんです。
高級レストランは、具体的に何系のレストランで、どこらへんにお店を出してるの?
高級レストランにこの大学生が行きたい理由は何?
この大学生の部活動は何?
この大学生は、普段は何を食べてるの?
この大学生は金がめっちゃ急に手に入ったの?それとも貧乏なの?
この大学生は1人で高級レストランに入るの?
この大学生は甘やかされた末っ子?家族構成は?
ドレスコードを知らない大学生は、何の分野になら詳しいの?
etc
僕自身は、いちいちこんなことしてからネタを書くことはないんですが、こういう荒いコントの書き方をしてしまう人は、多分、悪い癖がついてるので、何回指摘されても直らないと思うんです。
なので、僕自身はやったことないけど、毎回これをやってみたら?と思います。
細部を詰めてくれ、と。
台本に出てこなくてもいいから細部を詰めてくれと。
高級レストランって設定なのに、予約せずとも入れるようなところにしてるのも、必然性がわからないし。
急に大学生が高級レストランに1人でいきたい、が絶対ダメとは言わないけどさ。
それが普通じゃないことは自覚してネタを書いてほしいんです。
【お題 急に大学生が高級レストランに1人で行こうとする。なぜ?】
っていう大喜利(この場合は大喜利的に面白いだけじゃなく真面目な答えでもいいら)があると思ってほしいです。
答 兄がいて、この高級レストランにドレスコードで断られ、その帰り道にトラックで撥ねられて死んだ。兄のカタキを打つために、その事故の時と同じ服装で弟が高級レストランに来た。
とか、なんでもいいんです。
ちなみに、上の答えを採用して作る場合なら、高級レストランが渋々、こいつを中に入れてるコントにすることもできます。(もちろん、それでも入店を断るコントでもいい)
1人だけ場違いなカッコをしてるコントが出来上がります。
ここまでの内容を、読者に一瞬、忘れていただいて。
フラットな目線で、高級レストランなのに1人だけ半ズボンの奴がいるコントがあったとして。
理由がないと、気持ち悪いだけで笑えないでしょ?
「なんで店はこんな奴を入店させたんだ?」という違和感があるまま、解消されずに終わるコントは笑いがとりにくい。
脚本が進んでいくにつれて、「あ!なるほど、そういう歪んだ発想の兄のカタキ打ちに説得されて、オーナーが圧力に屈したって設定か!」となると、リアリティを保持できます。
ありえないけど、あり得るぐらいのコントのリアリティです。
このように、細部をまず真剣に詰めてほしいです。
後半の「そこのシンプル変質者、お前もだぞ」とかも、『そりゃそうやろ』とお客さんは思ってるからウケないです。
レストランが違法営業してる、ってのも、また突然の変な設定で、レストランが違法っぽいことをしてる前振りも何にもないのに、「突然この展開ナニ?」となります。
というわけで、基本が荒い台本なので、添削後、かなり変わってしまうかもしれませんが、今からAFTERを書かせていただきますね。
追記)アフターは変わり果てた姿にしてしまいました。
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【AFTER】
コント ドレスコード
暗転板付き→手上げ明転
(上半身ハダカで半ズボンのバカっぽい服装。腕時計だけしてる)
お月様、こんばんはー。今から高級レストランにいきます。
お花さん、こんばんはー。今から高級レストランにいきます。
ミツバチさん、こんばんは。僕は今から高級レストランにいきます。
人間のサラリーマンさん、こんばんは。僕は今からから高級レストランに行きます。え?バカじゃないです。
ちゃんとTPOを分けられます。
(入店する。急に喋り口調変わって)えと、予約してました〇〇です。
え?ドレスコードちゃんとしてますよ。
この腕時計、1000万するんですよ?ホラ?
あー、時計に詳しい方で良かった!!!
いやいや、なんでですか?
ほら、今、入って行った人、僕より服装の総額、全然安いですよ?なのに、なぜ入れないんですか?
スーツはアルマーニだが、無理してレンタルしたモノで、靴とネクタイは安物でした!
僕の今日のコーディネートは、腕時計が1000万円ちょうどで!!
トータル1000万4800円さ!!!
なぜ僕より安い服装の人が入れて、僕は入店拒否をされるんです?
刑法208条の暴行罪には当たりませんし、刑法234条の威力業務妨害にも当たりません。業務を妨げてはいませんし、ドレスコードに関する明確な基準はそちらのお店の予約サイトにも記載が、なかった!!
記載がない場合、ドレスコードの判断の基準を明確に示す必要があり、示されない場合、不当な退店要求は、逆に店舗側を刑法230条の名誉毀損罪で訴えることもできます!!
そうです。
もうお気づきですね?
わたしは、ややこしい奴なんです!
慶應大学の法学部を、主席で卒業しており、法律の知識があり、全国の高級レストランで店員を論破し、このカッコで入店する、今、話題の法律系ユーチューバーだ!!!
(カバンの中から、ジャケットを出して着る)
あなたにも立場がおありでしょう。ジャケットだけは着ましょう。
さて。入れてくれますかな?
まだ揺らいでますね?
二回目からは、上下スーツ着用で、店で一番高いワインをバカスカ空ける上客になりますよ???
(耳元で)お前では、判断できない。オーナーを呼べ。
(間があってから)あんたがオーナーか。。
ハウウウッ!!!!!!!
あ、、あ、えりこ。。
お前の店か。。
なあ、オレ、今はYouTubeで稼げるようになってさ。やり直してくれないかな?
(カバンからズボン出して)
うん。履く〜(幼稚園児みたいな言い方)
歯は磨いてきた〜。
うん。でもお店に入ったら、いっぱい注文するし。
うん。
次からちゃんとする〜。
うん。
次はちゃんと散歩も連れていく〜。
ちゃんとできる。早起きする〜。
できる!できる!できるから、やり直して!やり直して!やり直して!!!!(幼稚園児みたいな喋り方でジタバタする)
「この人、わたしおらんかったら、どうしようもないんやわ」の頃のえりちゃんに戻って戻って戻って!!!!
え?
いいの!?やり直してくれるの?
やったー!!!
お箸の持ち方もなおすーっ!!!!(ジャンプする)
(暗転)
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ということで、次はテクニック解説をさせていただきます。
さて、ここからはAFTERのテクニック解説をしていきます。有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。
もっともっと添削の内容を知りたい方には、個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得です。
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