添削30本目【高齢者のお話を聞く漫才】
今回は漫才台本を送っていただきました。
それでは、まず元の台本を読んでもらいましょう。
【BEFORE】
物語視点
Aボケ B ツッコミ
A 俺さぁご長寿の方の人生での経験談聞くの好きなんやけど
B そういうの面白いよねぇ わかるわかる
A 前,凄い経験をした人にあったからちょっと聞いてや
B 聞かせてよ
A あ,言い忘れてたけど 俺AEONの関係者ちゃうで
B 誰がお前見てAEONの関係者やと思うねん はよ話してくれ!
A なんか普通に田舎でのんびりお爺さんと2人で暮らしてたらしいんやけど
B お婆さんの話みたいですね
A おじいさんがいつも通り芝刈り行く〜って言うから じゃあ私も洗濯行くわ!ってノリで川に洗濯に行ったらしいねんなぁ
B 結構田舎やね 川まで行くんや
A 言うて遠くはないらしいんやけど そこについて,いつも通り 干したり,水ですすいだりしてたら なんか 桃が流れてきたんやて!
B え?
A どるんぶるんっどるんぶるんって(動作あり)桃が流されてたから とりあえず興味本位で持って帰ったら まさかの子供が…
B (止める)お前 桃太郎の お婆さんの視点から喋ってるやろ!
A え?
B なんやねん色々言いたいことあるけど,
さっき言ってたどるんぶるんって何?
ドンブラコとかじゃないん?
A ドンブラコってなんやねん 昔話か!
B 昔話やろ!お前が今してんのは昔話別視点バージョンや
A次の話聞いてや
Bまぁええよ
A寒い冬のことやったんやけど ちょっとトランプに引っかかちゃって
Bトランプ?
Aそうしたら若い兄ちゃんが助けに来てくれてん 本当に助かったから ちょっとでも感謝を伝えたくて その人の家に行くために女性になってん(ポーズ)
B(頭辺り叩いて) 鶴の恩返しの鶴視点で喋んな! それとトランプってなんやねん 多分トラップやろ
Aトラップってなんやねん 罠か!
B罠や!素直に間違えを認めれる,ええ人間になろうぜ
A確かに!(なんかリズム良く)
B確かに!(前の確かにと同じ感じで)ちゃうねん面白い話聞かせてくれる言うてたのに全然面白く無いやん
A次は面白いらしいから
B 何で他人事やねん!信じるぞ!ラストチャンスな どうぞ
A海の近くで食べ物も無くて彷徨ってたら(腹抑えて)
B お?ええ入りやん なんかありそうやね
A 子供たち5人に虐められて,
B え?
A そこを釣り竿持った浦島太郎?とか言う好青年が助けてくれてんて,
B おい!カメ視点で喋んな!(声大↑)
A 続きがあんねやけど、(薙ぎ払う)
B お前主張強いな!戦国武将か!
A (宥める)そのあと,竹が光ってたんやけど
B 竹取物語かな?全然違うから勝手に繋げんなよ
A いきなりその竹が切られて,
B ん?かぐや姫視点で喋ってる?
A 俺横で見てたんやけど、そこから子供が出てきてん?
B え?おじいさんに切られた竹の横の竹視点で喋ってる?
お前はただの竹やぞ!
A もうええわ
B 勝手に俺視点で漫才おわらすな!もうええわ
備考)一つだけ 言わせて下さい AEONの関係者〜のところは このネタはAEONのステージでやるので めちゃくちゃ関係ないフレーズではありません お願いします
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【ポイント解説】
というわけで元の台本を読んでいただきました。
さて、みなさんはどう感じたでしょうか?
今読んだ直後として、率直に感じた大きな問題点が、二つあるように思います。
①漫才の最初の話題の振り方と内容が合致していない
②ツッコミがボケに都合のいいようなツッコミしかしていない
ひとつずつ、検証していきましょう。
①漫才の最初の話題の振り方と内容が合致していない
これですね。まず。
最初に、高齢の方のお話を聞くのが好きっていう話なのに、導入後の展開が、これで合ってる?って思いました。
この依頼主さんが、メインで表現したいボケ方としては、【みんながよく知ってる物語を、神の視点(語り手目線のことね)ではなく、変なアングルから表現する】ですよね。
中身はそうなってます。
???
お年寄りの話は、どうなったの??
で、ひとくだり、終わったあとに、下記です。
A次の話聞いてや
Bまぁええよ
この“次の話”って誰が喋ってるの?
次のおばあさん?
さっき、桃太郎の話をしてた同じおばあさん?
なんのこっちゃよくわからないまま、話が展開しています。
で、問題点その②なんですよ。
②ツッコミがボケに都合のいいようなツッコミしかしていない
断っておきますが、“多少”自分たちに都合のいいようなナビゲートをしてもオッケーです。
でも、多少、です。
この脚本はちょっと度が過ぎてます。
イジワルでもなんでもなくて、普通の感覚の人がツッコミの人の立場で、話を聞いてたら、不可思議なので、質問するであろう部分を完全に無視して作られた台本なんです。
A次の話聞いてや
に対して。
B ん?どういうこと?さっきの同じおばあさんがした別の話???
あるいは、さっきちょっとだけ言った“多少”は自分たちに都合のいいナビゲートをしてもいいということで、オッケーラインの一提案(いちていあん)は、下記ですね。
A次の話聞いてや
Bあー、そのおばあさん、他にも色んな体験してるんやね
ぐらいです。これにより、「同じおばあさんが喋ってるんだな」とお客さんはとりあえず思いながら漫才を見れます。
ですが、順番としては②の問題点以前に①を直さないといけません。
そもそも、このAさんが、自分がボケたいだけなんだから、わざわざ、おばあさんから話聞きました、みたいな“ねじれ構造”にしている意図がわかりません。
よくある入り方だから、イヤなのかもしれませんが。
「将来子供ができた時に、寝る前にお話とか読んであげたいねん」
「おお、ええやん」
「ちょっと今日は練習させてほしいねん」
のほうが、よっぽど見やすいです。
さて、ここからは、ボケの中身について、検証していきましょう。
ここからは有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。
このマガジンでは、ネタの添削をしたり、お笑いについてのコラムを書いております。こういったコラムも楽しんでもらえる方は、【個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得】です。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?