漫才【歯】
漫才【歯が欠けてる】
B「中学の時の友達でさ。富永って奴がおってさ」
A「おぉ、中学の時?」
B「なんか、歯が1本だけ抜けてる奴おってさ、目立つねん。でも、富永は歯、いれへんのよ。気になるし、歯入れたら?って何回も言うてたら『俺、家、貧乏やから、歯を入れる金がないねん。中学卒業したら、自分でめっちゃバイトして、歯をいれるねん』って言うとったんや、そいつ」
A「応援したくなるね」
B「せやろ?誰もが応援するやろ?
ほんで、そこから20年ぐらい会ってなかったんやけど、たまたま同窓会で会ったんよ!富永は、事業で成功して、モデルさんみたいな美人な奥さんと結婚して、お子さん二人と奥さんと、幸せに暮らしてるねん」
A「ええやんけ。すごいやん」
B「でも、まだ歯1本あらへんねん」
A「なんで?」
B「せやろ?成功して、お金は腐るほどあるねん。あいつ。やのに、歯を入れへんねん。なんかこだわりあるんかと思って聞いたら、『来月入れるわ』みたいなこと言うとったんよ」
A「そうなんや。入れるタイミングあったやろうにな」
B「そこから、富永と何回か会ってるねんけど、歯1本あらへんねん」
A「なんでなん。おかしいやん」
B「せやろ?
歯入れろやあって何回も言うてるねんで、俺。
そのたびに、富永は「入れるよ。入れる入れる。来月入れるわ」って言うねん。
で、歯あらへんねん。
俺は、ハッキリと『いや、もうこれでええから歯いれへんねん』って言い切ってくれたら追求せえへんねん!」
A「わかる!」
B「せやけど、入れる入れる、って言うといて、歯を全然入れへんことによって、俺の心を鷲掴みにしてくんねん」
A「気になるよな、たしかに」
B「歯を入れる入れるって言うといて、入れへん奴を裁く法律は今のところ日本にはないねん」
A「ずっとないわ、そんな法律!」
B「今日のこの漫才の出番の前にも、電話して、『歯いつ入れるの』って聞いたんやけど、その時も『明日、ちょうど中途半端に時間が空く時間帯があるから、明日入れるわ』って言いよんねん」
A「そんな具体的に言うんや」
B「でも、どうせ明日もあいつ、
歯……
いれへんねん」
A「どう聞いたらええねん!さっきから、その話!ずっとよーっ!我慢して聞いてやってたけどよーっ!
お前の中学の時のツレがずっと歯入れへん話、もっと短く喋れるやろ!!お客さんなめてんのか!
最近漫才やってても、心が上の空やし、お笑いに気持ち入ってへんの、ずっとわかっててんぞ!!
歯入れへんそいつのこと忘れろ!!漫才に集中せえ!」
B「富永に言え!俺だって漫才に集中したいよ!
俺は富永が歯を入れるか、それか、逆に、もうハッキリと『ごめん。もう歯はずっと1本ないまんまでいく!』とかどっちか言ってくれたら、漫才集中できるねん!」
A「俺たちコンビは、何でつまづいてるねん、一体!!」
B「富永は優しい奴やから、俺がガッカリすると思ってきっと、歯入れへんとは言われへんねん」
A「ほな、俺がその富永って奴に会うわ。ほんで、Bは実は、どっちかハッキリとしてほしいだけやねん。入れへんかったら入れへんかったでええねんって客観的に言うわ」
B「なんか、悪いな。そんなんやらせて」
A「お前のためちゃうぞ!俺自身のためや!ちょっと練習するからお前、そいつやれ」
B「富永な」
A「名前、あんまり俺は言いたないねん、そいつの。とにかくそいつやれ」
B「わかった。『どうも〜Bくんの相方さんなんですよね?』」
A「『あ、そうなんですよ。あの、ちょっと聞きたいことがあってですね。これこれこういう事情でですね。Bが漫才に集中できないんですよ。
だから、ぶっちゃけた話なんですけど。
その、富永さんとしては、どうされるおつもりなんですか?」
B「『うーん、まあ、来月入れようかなとは思ってるんですよ』」
A「『いや、そういうのじゃなしに!
ちょっと、ほんまのとこ、教えてほしいんですよ。
Bは、別に、どっちかハッキリしたら、漫才に集中できるんです!!入れるつもり、全くないんなら、これ以上Bをもてあそばないでほしいんです!』
」
B「『来月入れますよ。来月無理やったら、再来月にちょっと大型連休とろうと思ってますので、再来月には遅くても、歯をいれますし』」
A「『いや、でも、そうやって、歯を入れる入れるって言いながら、中学の時からずっと入れてないわけですよね?
ねえ、富永さん。
もう、あんた一人の歯じゃないんですよ。
Bの歯でもあるし、僕の歯でもあるし、僕らのコンビを応援してくれるファンみんなの歯でもあるんですよ』
」
B「『(突然わめく)ああーっ!!!!』」
A「わあ、やべー奴だ!
やめさせてもらうわ」
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