コラム【人を傷つけない笑い】は存在するか?
お笑い界でたまに議題になるこれ。
【“人を傷つけない笑い”があるかどうか?】
これについて、僕はいつも、ほとんどの人が論点を間違えているように思う。芸人側も含めて。
いや、あくまでも僕個人の感覚だけど。
何を間違えてるかというと、“そこ”じゃないんです。
恐れるべきなのは。
【人を傷つけない笑いがあるかないか】で仮に結論が出て、“存在する”となることよりも、そういう“人を傷つけない笑いを◯◯さんはやっている”というレッテル貼りが怖いんです。
あの人は人を傷つけない笑いをしている
からの。
違う笑いをやった時に対する「人を傷つけない笑いをしてたのに!ひどい!裏切り者!」みたいになるのが、作り手はめんどくさいんです。
なぜこの論争に違和感を覚えたのか、よく考えてみたら、このレッテル貼りの恐怖があるように思いました。
人を傷つけない笑いが仮にあったとしても、ネタの中のひとつのボケが、奇跡的にそれかもしれないね!ぐらいのレベルで、その存在は少ないです。
“人を傷つけない”の定義がそもそもあやふやなので、視点やその芸人によっては、ボケ一個だけではなく、“1本丸々、人を傷つけない笑いをしているネタ”が仮に存在したとしましょう。
奇跡的に。
その人たちの足元に白線をひいて、「はい、あなたたちは見事です!このラインから外に出ないんですよね?」と言うのは違うんですが、“人を傷つけない笑い”をただただ個人個人が賞賛するチカラが強くなりすぎると、このラインが透明ではなく、色が濃く見えてきます。
無邪気に「あの人の笑いは誰も傷つけない笑いだよね」と言うのは別に個人の感想なのでかまわないんです。
「絶対に!なんぴとたりとも!傷つけない笑いだよね」みたいなテンションでは言ってないと思うし。
ただ、たまにこの手の議題の時に名前の挙がる芸人さん本人が、それに対して答えてる記事を読むと、僕が知ってる限り、全員“僕らは別にそんなんじゃないです”と否定してます。
『人を傷つけない笑いをやろうとしてるんですよぉ』って芸人さんを見たことがありません。
いたら普通に教えてほしいです。
たまたまたどり着いて、“このキャラ(あるいはネタのパターン}で売れました!”みたいな芸人さんを世間は賞賛します。
その時の賞賛のキャッチコピーのひとつとして、たまに台頭してくるのが【誰も傷つけない笑い】なんですね。
で、芸人やお客さんの一部は違和感を感じる。
“そんなの存在するのだろうか?”と。
“ありかなしか論争”のドツボにハマる。
たまたま、そういう笑いをやったとしても、これからまた別の笑いをするかもしれんから、レッテル貼りはやめてくれ!
ってとこが僕は芸人側の深層心理で、あると思います。
なので、あるかなしか論争は、僕は聞かれたら、こう答えます。
「あるかないかは “人を傷つけない笑い”の定義によるし、仮に存在したとしても、それをやり続ける芸人さんはいないと思う」
僕はありかなしか論争に正面から向き合ってないんです。
僕自身の本当の答えは、分かりきってます。
人を傷つけない笑いは、ありません。
これは、めちゃくちゃ理屈で“証明”ができるぐらいなんです。分かりきったことです。
まず、99%をぶっつぶします。
お笑いのほとんどは、どんなに牧歌的でのんびりと見えても、そこには“毒”が存在します。
落語の“まんじゅうこわい”みたいな話ですら、“人を傷つけない”という保証はありません。
まんじゅうを喉に詰めて、死んでしまった身内がいる人は、もう演目を字面で見るだけで、そのことを思い出すでしょう。
“まんじゅうこわい”だけは聞きたくないのよね、ってなるはずです。
まんじゅうじゃなくて、お餅などの食べ物を詰めて死にかけたことがある、とか身内にそういう不幸があった、という人は、最後のバクバクまんじゅうを食べてるシーンで「ゆっくり噛んで食べてほしい」とハラハラして、笑えないかもしれません。
“人を傷つけてでも、笑いを取ろうとしている”というわけではなく、“事故的に”人を傷つける笑いになってしまうことは、いくらでもあり得ます。
そんなのを含めたら、誰も傷つけない笑いなんて、絶対にできませんよね。
なので、99%の笑いは、ほぼ絶対に誰かを傷つけます。
ただ、前述のまんじゅうを喉に詰めて、、、みたいなレアケースの場合、受け手側も「まあ、わたしは特殊なので、この演目自体や落語家さん自体に罪はないよね。みんな楽しんでるし」となるのが通常です。
怖いのが“モンスター化”することです。
【誰も傷つけない笑い】という議題は、うっかり存在するという結論に達してしまおうものなら、モンスター化を助長する強い味方になります。
なので、芸人としては、もう深く考えずとも「いやいや、ないですよ、そんなん」と否定したくなるのが、人情ってやつです笑笑。
僕自身は、そんなレッテルは最初からクソ喰らえ、なので、人を傷つける笑いも普通にしてます。
下記のネタは、好きなネタですが、バドミントンをやっていた男子は腹立つかもしれません。
【バドミントンをバカにしているインタビュアー】
わざわざYouTubeに飛ばされるのがイヤな方のために、簡単に説明します。
「世界選手権、男子バドミントン、優勝おめでとうございます!一部の心ない声ですが“バドミントンは劣化版テニス”だという声を払拭するような、見事なプレーでしたね」
こんな感じでインタビュアーが味方のフリをしながら、偏見を炸裂させるというネタです。
傷つける気満々の笑いですね。
さて、話を戻して、いよいよ残りの1%です。
99%の笑いは、特殊な条件下の人たちの視点からは、イチャモンや事故レベルで笑えないことが起こることは前述しました。
いよいよ1%の可能性すら潰させていただきます。
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