ネタ【この手紙を読んでいる頃には】

【この手紙を読んでいる頃には】

今日、◯月◯日という日がくると、毎年、僕は父親のことを思い出すんだ。

僕の父は、子供の頃から、怖いイメージしかない人で、楽器職人だった。

ホントに無口で、喋った時には、怒鳴りつけたり、酒を飲んでは、僕に暴力をふるうこともあった。

僕が8歳のころ、親父が突然、僕に「ジョン、出かけるぞ」って言ったんだ。

そんなことは初めてだった。

なんだかわからないけど、ついていったら、おもちゃ屋さんで、「なんでも好きなものをいくらでも買え」と言うんだ。

僕はそこで、あまり高いものを買ったら怒られるような気がしたけど、その時は、ほしくもない、小さなギターを選んだんだ。

「そんなので、いいのか?」って言うから「うん」って返事をしたさ。

その日から、親父はいなくなった。

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