漫才【職業見学】

漫才【職業見学】


A「今、職業見学ってやってるとこが会社によってあるらしいよ」
B「なに、職業見学って」
A「お父さんの職場を子供に見学させることによって、お父さんのことを子供がエライなあって尊敬できるきっかけになるらしいよ」
B「そうなんや。


『はーい、今日は職業見学へようこそ。家でのお父さんとは違う仕事の時のお父さんを観ていってね」


A「はーい」


B「いい返事だね。お父さんの家でのイメージはどんなのかな?」


A「えっとー、お父さんは〜、ゴロゴロしてる(笑)」


B「ゴロゴロしてるかぁ(笑)。昨日お父さんはクビになったので、これからはもっとゴロゴロすることに」


A「呼ぶな!そんな状況で!」


B「今日はお父さんの顔の形のパンをみんなに作ってもらおうかな」


A「お、そういうのもいいな」


B「お父さんの顔のパンを作って、お父さんに食べてもらおう〜」


A「はーい。でもなー、お父さんの顔のパンをお父さんが食べたら、共食いになるね、えへへへ」


B「絶対これ、言う奴おると思ったら、やっぱりおった」


A「言わへんねん、そんなん!いちいち!」


B「これ言うやつ、おもんないから、お前のお父さん誰かわかるわ。職場でもおもんないもん。お前のお父さんこいつやろ。おもんなさの系統いっしょやもん」


A「ウエーン!!」


B「わろてるわろてる」


A「どこがやねん!カス!お父さん普段冴えない人であったとしても、子供の前やから、上方修正して扱えよ!」


B「わかった。お父さんがいないと、ここのパン工場まわりまへんわぁ」


A「そうなんだ。僕のお父さんってすごいんだね!」


B「そうだよ。君のお父さんは他の作業員を癒すために、ハーモニカを吹いて楽しませたりしてるんだよ」


A「わあ〜、いらなさそう〜」


B「そんなことないよ。必要なんだよ。パンとだけ向き合うと、人は簡単に気が狂うのだよ」


A「そうなんだ」


B「パンとだけ向き合って気が狂いそうな、ちょうどギリギリのタイミングで、お父さんのハーモニカが聴こえるのだよ」


A「そうなんだ」


B「お父さんのハーモニカをみんなが聴き入りすぎて、パンを作る気力が失せるギリギリのタイミングで、今度は君(別の子を指す)のお父さんが、シンバルを叩くんだよ」


A「そうなんだ」


B「シンバルの音で我に返った作業員たちは再びパンと向き合うんだよ」


A「そうなんだ」


B「そしてパンと向き合うことに疲れ果てたその時、工場長の法螺貝の音色が炸裂するのだよ」


A「まじめにやれよ!仕事!!音楽に溢れるな!」

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