添削9本目【競馬デートの漫才】

さて、9本目になります。まずは、BEFOREを観ていただきましょう。

【BEFORE】

ネタ「競馬場デート」

ボケ　A（見た目は二枚目俳優みたいでカッコいいが、変なやつ）
ツッコミ　B（優しい雰囲気のやつ）

B　どうも、AとBで◯◯◯（コンビ名）です、お願いします〜

A　Bに相談があって！

B　どうしたん？？

A　この前、ちょっと気になってる女の子とデートしたんやけどさ、デートの終わりに、A君って見た目はカッコいいけど、付き合いたくはないタイプかもって言われてん！

B　そうなん？
いやいや、Aはカッコいいしモテると思うけどな！

A　うーん、俺何かデートでやらかしてるんかな？？
ちょっとさ、俺のこの前のデートを再現してみるから、変な所あったら教えてくれへん？？

B　いいよ！やってみてよ！

A　待ち合わせからやってみるから、Bは女の子のあやちゃんやって！

B　あやちゃんね、了解！

〜コントイン〜

A　よ！あやちゃん待たせてごめん！

B　あ！A君！！！

A　結構待ったよね？？

B　うんうん、全然まってないよっ！

A　え！そう？！待ち合わせから5時間はたったと思うけど！

B　え…5時間？？！
もう〜何時間待たせてるの？？
5時間も待たせてならもっと急いで来てよ！

A　ごめん！！
実は、道でおばあちゃんに道を尋ねられて、凄く困ってるようだったからそこの場所に案内してあげてたら、香川でラフティングしてた！

B　香川でラフティング？！！
A君、親切とかを通り越してるよ！！

A　ほんとにごめん！！
あやちゃん、寒いと風邪引くと思ったから暖かい飲み物を買ってきた！！
もしまだ寒かったら俺の上着も貸すから！

B　うん…ありがとう…
まぁ、A君優しい一面もあるんだね！
せっかくのA君とのデートだし許す！！！
で、A君、今日はどこ行くの？？

A　うん！競馬場！！

B　競馬場？？！

A　あやちゃんお馬さんは嫌い？？？

B　嫌いとかそう言う事ではないけど、デートで競馬場？？

A　そう！！今日はね〜バイト代と親の仕送り代入ったばっかりやから、全てぶっこむで〜！
俺って男気あるねんで〜！！

B　それを男気って言うんかな…

A　あれ？テンション下がってる？？
あやちゃん安心して！！
ちゃんとお馬さん当てて、一緒にデッカイチキン食べようぜ！！

B　提案がアホっぽいねんな！

A　じゃ行こうか！

B　まぁ、行こうか…

A　まず、ここで馬券買って！
よーし、レーススタートや！
行け行け！させ！させ！
取り立てろ！取り立てろー！

B　取り立てろ？？怖い言葉！！

A　いけ！２番や！２番！させ、させー！
あぁ駄目だ！！
何してるねん、オオサキニドウゾ

B　弱そうな名前！！
名前で負けてるやん！！そんな名前のやつ来ないやろ！

A　あかん、もう次でラストレースや！
お金がない！！

B　早！！

A　次は一緒に考えてくれ！

B　私、競馬とかやった事ないからわからないよ！

A　大丈夫！アホズラの馬が1番強いから！

B　そう言うもんなん？！
うーん、じゃ3番かな…

A　よし、俺はあやちゃんを信じるよ！
よし買った！
レーススタート！
いけ、いけ、取り立てろ！取り立てろ！

B　取り立てろって言うのやめて欲しいな

A　いけ、いけ、3番、3番！
いけーーーー！
2番やないかーーーい！
おいー！どうしてくれんねん！我い？？
どう考えても2番が1番アホズラやろ！
って言うかお前が1番アホズラやけどなー！

B　こいつマジでヤバー！

A　は！！乗っ取られてた！

B　何に？？

A　武豊に！

B　武豊そんな人ちゃうやろ！人のせいにすな！

A　ごめん！
競馬の事になるとぐーって何て周りが見えなくなるタイプやねん！

B　ヤバいタイプの人や…

A　ここでサプライズあります！

B　どこでサプライズあるねん？？？

A　お金もなくなって信用もなくなった私、A！
あやちゃんに今してあげれる事はただ一つ、川柳！！

B　川柳？？！

A　恋心　走り出したら止まらない　馬のように
……なっ！！

B　なって何？！！
ちょっといろいろと意味わからんし、A君は見た目がカッコいいだけで付き合いたくはない！！

A　ほら〜同じ事なったやん！！

B　お前が悪いわ！もうええわ！
どうも、ありがとうございました〜

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【ポイント解説】

漫才の台本ですね。
いつも言ってるように、漫才の基本は“提案”なんです。
この台本の場合は、自分のデートがおかしいところがあるのかもしれないから、ちょっとやってみるから、教えてほしい、なので、自然な“提案”と言えます。

厳密に言えば、【デートのやり方を再現してみる、と言っていきなり彼女のあやちゃんのほうを相方に事前情報なしでやらせてる】のと【言われた側も普通にやってみてる】あたり、自然な会話としては、変です。

ただ、“漫才”としてはよくあるし、自然なやり方と言ってよいでしょう。

重要なことは【この二つの点をふまえた上でそのあとの脚本を作っているのかどうか】ということです。

大切なポイントです。

【設定をボカしてコントインした場合は、その罪悪感を背負ってネタを作るべき】

この場合は、あやちゃんの事前情報なしであやちゃんを、やらせてるということがかなりボカしたやり方になってます。

ということを踏まえた上で、コントインしてからの流れを再現します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

A　よ！あやちゃん待たせてごめん！

B　あ！A君！！！

A　結構待ったよね？？

B　うんうん、全然まってないよっ！

A　え！そう？！待ち合わせから5時間はたったと思うけど！

B　え…5時間？？！
もう〜何時間待たせてるの？？
5時間も待たせてならもっと急いで来てよ！

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この部分、もっちゃりしてると感じるんですね。ボケとしては、【五時間待たせてる】というボケなんです。
文字数で分かる通り、凄まじく尺をとってます。

先ほども言いましたが、Bはとりあえずデートの状況を知らずに、乗っかってるだけです。

もう一度載せます。
設定を雑にしてコントインしてるのは下記の二点です。
①【デートのやり方を再現してみる、と言っていきなり彼女のあやちゃんのほうを相方に事前情報なしでやらせてる】
②【言われた側も普通にやってみてる】

これ自体は罪ではありません。

しかし、この二つがあるのに、この台本は変です。

五時間も待たせてるのに、「待った？」って聞かれて、相方は“その状況を知らないから一般的な答えとして”「うんうん、全然待ってないよ！」と答える。

そのあとで、「五時間も待たせたのに？」ってボケのほうが言う。ツッコミからしたら、知らんがなという話です。後出しジャンケンもはなはだしい。

なので、台本として、まずツッコミ方がおかしいんです。
このままの台本としてツッコむとしたら「先に言うといてくれや！」系のツッコミになるはずです。

あと【心当たりがないのにデートで次に繋がらない】と言ってるわりには、ぶっちぎりで心当たりあるやんけ！という違和感もあるので、それもツッコむべきなんです。

せっかく“コント”ではなく“漫才”というハードを選んでるんだから、なぜ仕切り直して、Bが女の子から、ツッコミさんにいったん戻ってからつっこまないのか？

女の子の状態のまま「え…5時間？？！もう〜何時間待たせてるの？？5時間も待たせてるならもっと急いで来てよ！」などというセリフはナンセンスです。
この女の子はクスリやってて時間感覚ないのか！とツッコミたくなります。

上記の部分だけのAFTERは思いつくだけで2パターンあります。
ひとつめは、上記のポイントどおりに直すやり方。

まずはそちらを見てもらいましょう。

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A　よ！あやちゃん待たせてごめん！

B　あ！A君！！！

A　結構待ったよね？？

B　うんうん、全然まってないよっ！

A　え！そう？！待ち合わせから5時間はたったと思うけど！

B　言うとけよ！それやったら！！五時間待ってて、「全然待ってないよ！」って言う女の子、なんかヤバいもんとか、やってるだろ！時間感覚なさすぎる！

A 沖縄の子なんだよ

B 沖縄の子でも五時間はわかるから！！ほんで繋がらない心当たりあるじゃねーか！お前、遅刻してるんだからよ！！

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ザッと直すとこんな感じになります。
ツッコミって大事なんですよ。違和感もツッコミがうまく回収すれば、笑いに変わります。

上記のAFTERは、一回、女の子のほうに「待ってない」と言わせてしまってから、後出しジャンケンで“五時間待たせた”というボケにしかわからないことを言い出した場合です。

五時間待たせたというボケは、ボケとしては軽めのジャブなので、もっとスッとやることもできます。

たとえば下記のように僕ならしてみます。

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A （Bの目を後ろから両手で隠して）

B キャッ

A 五時間待ち合わせに遅刻してきてるのに、風呂入ってきてないし、歯も磨いてきてないのは、だぁーれだ？

B Aくん？

A 正解！

B 風呂入ってこい！テメー！どういう神経してんだよ！五時間待たせて、ハイパー汚い状況で、よく“だぁーれだ”しかけてきたな！！

A イケメンだからいけるだろ

B 自分で言うな！あと“だぁーれだ”は初デートでやるやつじゃねーよ！あんまり！！仲良くなってからやるんだよ！

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

コントなら、風呂に入ってないくだり、歯磨きしてないくだりは、入れませんが、漫才で仕切り直しができるので、入れてみました。

僕の考えたいらんボケを入れずに台本のボケだけをやるなら「五時間待たせてるのはだぁーれだ？」だけでも、かまわないと思います。

女の子のままでツッコむことも、この場合は可能です。コントインする前に言うておいてくれよ！みたいな重大な規則違反がないからです。

Bにいったん「待ってない」と言わせてないので、ボケに対するツッコミが、先ほどとは違い、変化するんです。
変化というよりも、この場合のほうが、さきほどの場合よりも、ボケに対して一直線につっこめます。

ゾンビウィルスのコントの時も言いましたが、ボケを表現する時に、できるだけもっちゃりしないようにしましょう。

【ゾンビウィルスの回】

https://note.com/hakushon25/n/n08c4990586e3

さて、送っていただく台本の中で多いパターンのひとつが、下記です。再三言ってるのでコピペできるぐらいです。

【ボケのことをふざけることだと勘違いしてる人が書いた台本】

そういう意味ではこの台本は、クリアしてくれています。

【優しいところを見せようとしてる、けど香川までいきすぎてしまう】

このようなボケは方向性として理にかなっています。

競馬に連れていく、に関しても、漢気があるところを見せようとして、暴走してるわけです。

大義名分がある中でボケているのでアリなんですね。ただ、欲を言えば、もっと大義名分や提案やキャラクターが強くあってほしいかなとも思います。

ふざける気満々の台本とまでは言いませんが。

オサキニドウゾという馬の名前など、普通に面白く、やったらある程度ウケる台本の可能性はありますね。

いいと思います。

さて、それではAFTERを書いていきましょう。

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【AFTER】

A 俺さー、悩みがあってさ

B なによ。悩みって

A オレって意外とモテないんだよ

B 意外とって言わないほうがいいよ！鼻につくから！まあ、でも顔はイケメンだし、そんなことないんじゃないの？

A 当然そう思うだろ？

B 当然って言うなって！

A はじめてのデートがその次につながらなくて、夜景見ながら「Aくんはイケメンだけど、付き合うとかじゃないよね」

B ショックだな、それ

A 「後悔させてやるぞ」

B 怖えーよ！そういうとこだろ！

A ちょっとどこがダメなのか、デートの相手やってみて。あやちゃんやって、お前

B なに、俺がそのあやちゃん、やって、ダメと思うところを、指摘すればいいの？

A そう

B 『あー、A君まだかな』

A 『（後ろからBの両目を隠す）五時間も待たせたのに、歯磨きしてないし、風呂入ってないのはだぁーれだ？』

B 『Aくんかな？』

A 『正解！意外と頭キレんじゃん？』

B あ、しばきたい！！ちょっと待て！

A なによ？

B 五時間待たせた奴は『だぁーれだ』したらダメなんだよ！バーカ！！そもそも初デートであんまり『だぁーれだ』しねえよ！気持ち悪いから！！

A でもあやちゃんも四時間半遅刻してて、『わたし、いつも待たせるほうだから新鮮！！それにわたし、男の人の汗くさいニオイ好きなの』って言われたからそこはロケットスタートなんだよ

B あやちゃん、名前はベタなのに個性ぶっちぎってるなあ！先に言っといてくれ！そんなの！！
『ちなみにA君なんで遅れたの？』

A 『おばあちゃんが道に迷ってて、「案内してあげますよって」』

B 『まあ、優しい』

A 『香川でおばあちゃんラフティングしてた』

B 『どこまで行ってるのよ！』

A 『とりあえずいこっか？』

B 『うん、どこ連れてってくれるの？』

A 『どこでも、あやちゃんの好きな競馬場を選んでよ』

B 『競馬限定！？ちょっと待って！選べるって言うほど、競馬場はコンビニみたいに乱立してないし！選ぶというか、近くがいいでしょ』

A 『そうだよね。結局、あやちゃんの言う通り、一番近い競馬場になるよね。いこっか？』

B 『なんか選ばせてもらったみたいになってる！こわっ！』

A 『意外とオレは、モテないんだけど、あやちゃんは意外とモテそうだね』（歩きながら）

B “意外と”って言葉使うな！もう！

A 『よーし、昨日入ったバイト代、全部つぎ込むぞーっ！』

B 『デート初日でギャンブル狂きついわ！』

A 『あやちゃん、500円玉、持ってて！』

B『なにこれ？』

A 『俺の帰りの交通費だ』

B 『これにまであなたが手をつけないように、持っておけばいいのね』

A 『そういうことさ！いけーっ！まくれーっ！』

B かっこよくねーんだよ！別に！！何が「そういうことさ」なんだよ！

A 『くそ！はずした！！もう次が最終レースかあ。早いなあ。』

B 『香川でラフティングして遅刻するからよ！あなたが！あと、わたしも！』

A 『あやちゃん、最終レース、どの馬に賭けたらいい？』

B 『そんなの、わたしに分からないわよ！』

A 『大丈夫、一番アホ面の馬が速いから』

B 『聞いたことない！そんなの！ええ？じゃあ、あの四番かな！』

A 『（手のひら見つめる）』

B 『500円さっそく見つめてる！さっきのレースでいきなり全財産使ってるんかい！帰りどうなっても知らないからねっ！（渡す）』

A 『四番は大穴！500円をホテル代にかえるぞーっ！』

B 『クソみたいな名言！心の中で思ってよ！そんなことは！』

A 『よっしゃ！はじまった！いけ！いけ！とりたてろ！とりたてろ！』

B とりたてろ？怖いんだけど

A 『四番オサキニドウゾ、オサキニドウゾ！いけーっ！！オサキニドウゾーッ！抜き返せーっ！オサキニドウゾーっ！』

B 『どんな名前なのよ！オサキニドウゾ！オサキニドウゾ、頑張ってー！』

A 『あ、大枠からマダホンキダシテナイがやってきた！！オサキニドウゾ！抜かれた！オサキニドウゾーっ！マダホンキダシテナイ！オサキニドウゾ！マダホンキダシテナイ！オサキニドウゾ！』

B 『今どんな状況なのよ！』

A 『マダホンキダシテナイが一着！くそおっ！！本気出してないのに、速いのかよ！』

B『あーあ、負けちゃった』

A 『なんでさっきの500円玉をオレに渡したんだよ！アホヅラはテメーだよ！このくそ女！』

B やめとけ！絶対嫌われるだろ！馬鹿なのか！

A　お金もなくなって信用もなくなった私、A！
あやちゃんに今してあげれる事はただ一つ、川柳！！

B　『川柳？？！』

A　『恋心　走り出したら止まらない　馬のように』

B …（呆れた目で見てる）

A 俺はまだ本気出してないだけ

B もう帰って、お先にどうぞ！！
ありがとうございました。

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ということで、AFTERは上記のような感じになりました。

いきなり「あやちゃんやって」ってお願いして、「わかった」ってオッケーするパターンで、そのまま考えました。

しかし、本来の僕の好みでは、そこの違和感を埋めるか、またはそこの違和感を利用しまくるネタを書きたかったです。

まあ、添削なので、今回は元ネタを尊重させていただきました。好みの問題ではありますし。

さて、ここからはAFTERのテクニック解説をしていきます。有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。

もっともっと添削の内容を知りたい方には、個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得です。