この灯火が消える前に

この灯火が消える前に。

難波紅鶴で行われたイベントの感想を少し。

僕にとって、味園ビルという建物は、本当に感慨深いものである。

色々なイベントを主催もしたし、呼んでももらった。

バーテンも経験したし、DNA池上さんとツーマンで広めるラジオというおバカなラジオを収録したりもした。

大阪から東京に出てきてから、味園ビルが取り壊されるという決定を聞いた。

その時は、色んな感情が内混ぜになる程度に、思い出はあった。

ただ、僕は元来、昔を振り返らない人間である。写真も残さないし、干渉に浸ることも少ない。

そうかい、そうかい。あの建物もなくなるんかい。

うーん。

さみしいねえ。

ぐらいの感じ。

主催者のオジムスからイベントの誘いがあった時は、「えっ?いいの?」って感じだった。

それ自体は嬉しいが、困ったのは、僕がトリだと言う。

なんでオレがトリやねん。豪華メンバーが出るのに、実績も実力も、オレでは足らなさ過ぎる。

イヤだな、と軽くは言ったが「いやいや、お願いします」の一点張りで、渋々了承した。

時がたち、にぼしいわしがザダブリューで優勝などしやがったので、余計にイヤになってきた。

わりと真面目な感じでまたオジムスにメッセージを送る。

「あのー。ホントにイヤなんですけど」

結局、僕の願いは聞き入れられず、トリで出ることになった。

僕はトリがイヤというよりは、芸人から「なんでお前ごときがトリやねん」と思われるのがとてもイヤなのである。

まあ、お祭りだから、どうせ全組ウケるだろうとは思ってたし、当日はなんだかんだで、楽しいだけだった。

人のネタを観てゲラゲラ笑いながら、「これで紅鶴もなくなるのかあ」とたまにセンチメンタルな気持ちになりながら、過ごした。

痛いファンみたいなことを言うが、銀の龍の背に乗って、はちょっと感動してしまった。

自分の出番が終わり、コーナーが終わり、全てが終わり、誰よりも早く家に帰った。

次の日単独ライブがあるから、ダラダラしてられない。

あと、ぜん息で咳が止まらないので、あまり人がいる場所に長居するのもいやらしい。

スッと帰り、その日は疲れたので、久しぶりの実家でよく寝た。

もう終わり?

そんな感じ。

終わったら終わり。

あんなに、憂鬱だった大阪の凱旋も、終わったら終わる。

当たり前だけど、不思議な響き。

終わったら終わりなのだ。

今乗ってる夜行バスも、着いたら終わり。

そしてまた明日が始まり、僕はロクでもないネタを書きに喫茶店に行き、また東京で元気よくすべるのだろう。

終わったら終わりで、終わったら楽しかったな、ってなる。

人生というものは、それ以上でも以下でもない。


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