店舗デザイン視点の住宅リノベーション
大盛況のリノベーション。
商業店舗デザインを主としている者が住宅リノベーションを行うとこうなったという実例をもとにリノベのコツをご紹介できればと思います。
わたし目線
結論から言うと、世界観を作り出すのか、全体的に整えていくのかが大きな違いだと思う。
これまで、住宅のリノベーションのご依頼を頂いた事が数件ある。幸せなことに、細かなご要望がたくさんあるといったご依頼内容ではない事が多い。
「○○○をしたい(○○○な暮らしがしたい)」
といったご要望内容がほとんどである。
住宅のリノベーションを考える際は、せっかく暮らす場所なのだから多くの要望が出てくるはずである。私があれをしたい、これをしたい・・と。この点が、店舗との大きな違いだ。ご依頼主は、業界のプロではない。従って、いろんなご要望を1つづつ見ていくと、矛盾が生じる事が多いように思う。全てが、わたし目線で語られる事が多い。
店舗の場合、私がああしたい、こうしたい、というよりも来店されるお客様に何を感じていただこうか、どういう体験をしてもらおうかという視点で打ち合わせが進んでいく。ご依頼主を含む関係者が、計画を客観的な視点で見ている。
誰がどんな体験をするのか
店舗でも住宅でも、計画をする際は誰にどんな体験をしてもらおうかと考えることが大切だと思う。自分のことすら客観的に捉える。自分のミニュチュアや来客のミニュチュアが建物の中でどう感じ、どんな体験を行うのかを頭の中でシュミレーションしていくと、1つの統一した感情を抱いているはずだ。
スリリング/やすらぎ/一定の緊張感/オトナな感じ
だとか、全体を包み込む1つの感情がイメージできると思う。これが、世界観だと思っている。これを言葉で表現すると、コンセプトということになる。
コンセプト=「静かなオトナの暮らし」
となった場合。「静かなオトナの暮らし」が全体を包み込みながら、リビングでは会話、お風呂場では癒し、玄関では凛とする、など部分ごとのテーマを設けていくと、全体の統一感がありながら場所ごとに異なるシーンを作り出す事ができる。
この進め方は、非常に大切。
コンセプトに合わせてリノベーション
実際にあった例。
ご要望は・・・
1.家の中のモノは少ない。
2.たくさん日が入らなくて良い。
3.友達は多く人を招きたい。
4.人が来たときには、素敵な家だと感じてもらいたい。
といった内容。
そこで、落ち着いたギャラリカフェで読書をするような世界観をご提案したところ、細かくはわからないけれども居心地がよさそうだと感じるとのこと。目的が決まれば、あとはこちらでどんどん図面を書いていく事ができる。
見せ場を数カ所に絞る。見せ場を絞るために、照明計画に凝る。65φのグレアレスダウンを4または2台を1つのセットにした配灯計画にし、スタンド照明も活用する。灯りのピカッとした反射を抑えるために壁紙を珪藻土クロスにする、などなど細部に至るまで世界観を作り出すために作り込んでいった。
その結果・・・
引越しされました。∑(゚Д゚)
リノベーション後、ご依頼主自体は非常に満足され楽しく日々を過ごされていたそうです。そして、いよいよご友人を招かれたところ、ご友人が大絶賛。それ以降たびたびご友人方が集まる場所となっていった。しかし、基本的には住宅なので駐車場の台数は限られている。ならば、もっと郊外に暮らそうという結論になったとの事。
住宅リノベーションを計画する際、このようなプロセスで計画を立てていくのも面白いですよ。
このようなプロセスで行った、不動産開発(賃貸住宅)の計画もありますので、また書きたいと思います。
先に事例を見たい方は、こちらへどうぞ→白青社
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?