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『謎好き乙女と奪われた青春』

【 ネタバラシはありません 】

『謎好き乙女と奪われた青春』

著者:瀬川コウ
出版社:新潮社(新潮文庫nex)
発行年:2015年3月1日


(内容紹介)
 藤ヶ崎高校一の美少女、早伊原樹里は恋愛に興味がない。友情にも興味がない。もちろん、部活にも。彼女が愛してやまないこと、それは日常に潜む謎。衆目の中ですり替えられた花束。学年全員に突如送られた告発メール。教室の反対側からの不可能カンニング。やがて僕の過去が明らかになるとき、「事件」の様相は一変し……。彼女と「僕」が織りなす、切なくほろ苦い青春ミステリ。


 再読です。本書はシリーズものです。発売してすぐ買って読んだとき、本書は「青春ミステリ」における新しい試みをしているな……と興奮したような気がします。でも、うろ覚えです。思い出すためにも、まず一作目から読むことにしました。
 まず、本書の大枠の設定は大量生産されている「青春ミステリ」「学園ミステリ」と同じです。つまり、「日常の謎」的エッセンスを取り入れた、学生(たち)を主役としたミステリ。乱暴にまとめると、米澤穂信さんの「古典部シリーズ」や「小市民シリーズ」、似鳥鶏さんの「市立高校シリーズ」などが挙げられます。そういう意味で、本書を読み始めたとき、テンプレに収まっただけのライトなミステリでないことを祈る……と思ったような気がします。まず本書で印象的な「女子に振り回される(推理能力が高い)男子」という構図は、何だかんだ嫌いではないのでひとまず飲み込みます。(何様発言だ……。)次に、この二人の関係性が「小市民シリーズ」と似通っているのも仕方ない。(むしろ「小市民」云々ではなくジャンル問わずでいえばこういう「設定」は私が生まれる前から燦燦とあるので「小市民」のパクリだと指摘すること自体筋違いだとも考えたり。)そして、肝心のミステリ自体の内容……。いわゆるテンプレに則りますと、大体の主人公(たち)が学生(高校生率が高い)なので、いわゆる人が殺される等の話というより、学校内外で起こったトラブルが主題になることが多いです。そこで気になってしまうのが、
①犯人が事件(トラブル)を起こす理由
②探偵役が事件(トラブル)に関わる理由とその解決方法
③事件(トラブル)を起こした人物のその後の処理
の3点です。
 こういうミステリは、大体は学校という閉ざされた場所で物語が進むので、犯人は主人公と同じ空間にいる人たち(同級生、先輩、後輩、もしかすると先生)になります。そういう制約のなか、①②③をどうクリアしていくのかが……少なくとも私には大事だと思っています。どれか一つでも中途半端だったら、少し冷めてしまいます。
 そういう意味で、本書はすべてクリアしている! と、個人的にはそう判断しました。①と②がうまく機能していて思わずうまいと思ったのです。で、特に〈第四章 事件を引き寄せる「体質」を身に着ける方法〉で確信しました。これは新しい試みではないかと。
 これが興奮した理由だったと思います、おそらく。
 ③も良い感じで処理されていますが、シリーズを重ねないと③の良しあしが分からないので今回はパスします。
 次は2作目『謎好き乙女と壊れた正義』を読みます。

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