『虚構推理短編集 岩永琴子の純真』
【ネタバラシしておりません】
『虚構推理短編集 岩永琴子の純真』
著者:城平京
出版社:講談社(講談社タイガ)
発行年:2021年10月15日
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以下、裏表紙より。
雪女の恋人に殺人容疑がかけられた。雪女は彼の事件当夜のアリバイを知っているが、戸籍もない妖怪は警察に証言できない。幸福な日々を守るために彼女は動き出す。――『雪女のジレンマ』/死体のそばにはあまりに平凡なダイイングメッセージ。高校生の岩永琴子が解明し、反転させる! ――『死者の不確かな伝言』/人間と妖怪の甘々な恋模様も見逃せない人気シリーズ第4作!
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本書は月刊マガジンコミックス『虚構推理』の原作として書き下ろされたものです。短編集です。新刊! ということで、楽しく読みました。シリーズ通して貫かれていることは、ひとつ。いわゆる怪異や怪異まわりで起こったことを、「怪異」そのものを隠したうえで、論理の力で「現実的」な解決に着地させることです。まさにタイトル通りです。
さて、本書は5編が収録されています。雪女の恋人(人間)に殺人容疑がかかる「雪女のジレンマ」、とある一軒家がいわくつきなのかを巡る「よく考えると怖くないでもない話」、ある事件のダイイングメッセージについて話し合う「死者の不確かな伝言」、弓矢の取り合いを収めるために一つの勝負を提案する「的を得ないで的を射よう」、武士と雪女・過去と現在を踏まえたうえで論理を組み立てていく「雪女を斬る」。
というわけでして、雪女で始まり、雪女で終わる構成になっております。「雪女のジレンマ」は何かの拍子にマンガで読んだことがあるので、文章になるとこうなるのかー! と興味深かったです。一番面白かったのは、最後の「雪女を斬る」です。本書の半分くらいを占めています。力が入っています。「雪女」は実際はいるのですが、「いない」という前提で推測を組み立てる展開はもちろん、それ以外のいろいろなことを想定して「真実」のようなものを提示する手腕は見事としか言いようがありません。