2人声劇『未来への誓い』
未来への誓い
薙切彩奈
白井たくや
たくや「よっ、久しぶりだな」
彩奈「た…く…や?たくやだぁ!もうっ!どこに行ってたのよ!」
たくや「ごめんな、親の関係で、ゴタゴタが続いてしまって…先週ようやく落ち着いたんだ」
彩奈「あの朗読会の後、何も言わずに居なくなるんだもん…心配したよ」
たくや「朗読会か…」
彩奈「…?どしたの?」
たくや「いや、なんでもない!
彩奈はどうだ?あれから続けてるのか?」
彩奈「うん、小さいけれど、週に1回ホールで朗読してるよ!」
たくや「そうか…あれからもう半年か」
たくや(N)親の関係で…咄嗟に着いた嘘だ。
本当は怖かったんだ…彩奈の朗読はそこに居る人々を明るく照らす太陽、俺の朗読は悲しく、悲嘆に暮れる影のような朗読…
そんな対極的な朗読で活動していた。
彩奈「今日の朗読会も盛況だったね~、手紙もこんなに!」
たくや「あぁ!陰と陽、太陽と影が織り成す朗読!彩奈の朗読はすげぇよ!」
たくや(N)最初の頃は良かった…彩奈、俺の朗読に対する励ましや激励の手紙が多かった…しかし、回数を重ねる事にその様子は変わっていった
彩奈「ねぇ!?どうして!?たくやの朗読だって凄く良いのに!みんな何で悪く言うの!」
たくや(N)暗い、気分が沈む、鬱々とする、気持ち悪い、下手くそ、やめろ…手紙の内容は酷くなるばかりだった。
そして、俺は朗読が出来なくなった…
彩奈「あの時、たくやが朗読をしないで、客席に向かってお辞儀をして舞台を降りた…」
たくや「あの時は済まなかったな…」
彩奈「それから3日後にはたくやは居なくなってた」
たくや「仕方ないさ親族のゴタゴタが…」
彩奈「嘘つかないで…」
たくや「え?」
彩奈「私にはたくやの気持ちがすごくわかるの…読むのが怖くなって、声が出なくなったんでしょ?」
たくや「そんなこと……」
彩奈「また一緒に読もう?…」
たくや「…ごめん、出来ない……今日は彩奈がどうしてるか見に来ただけなんだ」
彩奈「そっかぁ、…私は元気よ。
あの時から変わらず明るく読んでる…たくやに、お前の朗読は太陽だって言われた時から」
たくや「そうか…良かった…」
彩奈「良かった!?私の気持ちも知らないで、良かったなんて言わないで!」
たくや(N)そう言うと彼女は走り去った。
今日のために書いておいた手紙も渡せないまま。
彩奈「ただいま…あれ?手紙?」
たくや(手紙)
いつか夢見たあの地へ、君と一緒に行くために、君が照らす道を僕は歩いていく。
いつかふたつの光となる為に、今は進もう。
遠い場所からでも君の光は僕の目にはしっかり映っている。
だから待っていて。
今は小さな光でも、必ず…君の隣で輝くから。
彩奈「バカ…必ず隣に来てね、いつまでも待ってるから」
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