GL 2人声劇『運命』
運命(さだめ)
十六夜 元の名は『まお』
三日月 元の名は『ゆな』
十六夜「何故だ!何故我らが戦わねばならぬのだ!三日月よ!私とお主は小さな頃より共に高めあった仲なのに!」
三日月「十六夜!私達は忍び…時には友として、時には敵として戦うが宿命!それは…それは分かってたはず!」
十六夜「みかづきぃぃぃ!」
三日月「いざよいぃぃぃ!」
間をあける
三日月「あなた、新しく里に来た子ね?名前はなんて言うの?」
十六夜「まお…」
三日月「まお…可愛い名ね!私はゆなよ」
十六夜「ゆな…様…?」
三日月「ゆなで良いわよ!この里にはどうして?」
十六夜「おっとぉとおっかぁが…家に来た男に…切られて…」
三日月「よく無事で…それは辛い体験をしたね」
十六夜「私が切られる直前に…あの人が助けてくれたの」
三日月「あの人?……あぁ、居待殿か…」
十六夜「いまち…様…」
十六夜(N)わたしと三日月の初めての出会い…私の両親が野盗に殺され、助けてくれた居待に連れられ、この里に来た…当時の名前はまお…
三日月(N)里で生まれ育った私に突然出来た妹のような存在…十六夜…ここに連れてこられたって事は、この子はわたしと同じ忍びの道を行く…1人前になるまで私は面倒みれるだろうか…
三日月「まお!」
十六夜「ゆな、くっ…太刀筋か早い…くっ…きゃあ!」
三日月「まだまだね、まお…あんたは一気に間合いを詰められると慌てる癖があるね…まあ、それでもクナイの投擲や隠れ身は私より優れてるから、そこがあんたの持ち味…って感じなんだけどね」
十六夜「ゆなは接近戦本当に強いね…里でも勝てる者は居ないんじゃないか?」
三日月「まあ、腐っても侍の娘…だからね」
十六夜「私が危ない時は助けてね」
三日月「何言ってるのよ、自分の身は自分で守りなさい!このバカまお」(指でおでこをつつく)
少し間をあける
十六夜(N)二人は常に一緒に居た…修練の時も、寝る時も、湯浴みの時も…次第に友としてでは無い、別の感情が芽生えるのは…必然だったのかもしれない。
三日月(N)十六夜が次第に私に対して友では無い別の感情を抱いているのは分かっていた…それに応える私がいるのも…分かっていた…そんな中、私たちは名を与えられた。
十六夜(N)まお、改めて十六夜。
三日月(N)ゆな、改めて三日月。
十六夜(N)忍び集団『月下』…どの藩にも属さないで依頼があれば任務をこなす…そんな集団だからだろうか…隣人が敵同士になるなんて事は、この里ではざらだった。
三日月「立待と居待…今度の任務では敵同士らしい…」
十六夜「この前は十三夜が死んだ…この里も人が減った…嫌だよ?三日月と敵同士とか…」
三日月「そうだな…私も、愛する者を斬ることになるのだけは御免よ」
十六夜「三日月は…後悔してない?私の気持ちに応えたことを…任務であれば敵同士にもなる、そんな環境で、私の…」
三日月「今更よ…今じゃ誰にも十六夜に触れてほしくない、とも思ってるんだから」
(リップ音)
十六夜「んっ……三日月…もし、私たちが敵同士になる日が来たら…里から抜けよう?」
三日月「何言ってんのよ、バカまお」
(リップ音)
十六夜(N)私たちの願いも虚しく…その時は来た…
三日月(N)重要な人物と書簡の護衛…その暗殺と奪還…満月の月夜の中、私たちは対峙した。
三日月「引け、十六夜!この任務、完遂せぬとも命までは取られないはず!」
十六夜「それは三日月も同じ事!だから引いて!」
三日月「私は完遂せねばならない理由があるの!私が任務を完遂しないと…十六夜、あなたが!」
十六夜「わたしだって!完遂しなきゃ、三日月、あなたが!」
十六夜「あなたが!」
三日月「殺される!」
十六夜「え?…三日月……いま、なんて?」
三日月「十六夜、まさか…任務失敗でわたしを殺すと…言われたの?」
十六夜「そんな…そんな事って…」
三日月「十六夜…」
十六夜「どうして、どうしてそんな任務を頭は課したの…」
三日月「泣くな…おそらく十三夜も立待も…同じような任務を与えられてたんだろうな…」
十六夜「依頼した両藩主が私達の存在をやっかんで…?」
三日月「可能性は高いな…となれば、やる事は1つ…十六夜、ここを2人で切り抜けて里を抜けるよ」
十六夜「え?三日月?」
三日月「いい?この任務自体が私たちを騙す依頼…ならば完遂失敗の是は問わないはず…だとしたら私は、十六夜…あなたと一緒にいたい」
十六夜「三日月…うん、私も一緒にいたい!ずっとずっとそばにいたい!」
三日月「間合い詰められても慌てるんじゃないよ!」
十六夜「その時は私を助けてね」
三日月「自分の身は自分で…と言いたいけど、お互いに助け合いながらこの場を抜けるわよ!」
間をあける
十六夜「ゆな、ゆうげの支度出来たよ!」
三日月「ありがとう、まお!今行く!」
十六夜(N)あの夜、二日二晩走り続け追っ手から逃れた。
身を隠していた小屋に里のものが来た時は死を覚悟したが、頭から言われた一言は『これよりそなたらは、「まお・ゆな」として生きよ』だった。
三日月(N)あの時の頭の目は優しく、そして寂しさを感じさせた。
それから数日の後…里は壊滅したと風の噂で耳にした。
おそらく両藩主の手の者がしたのだろう。
しかし、私達は調べる事は許されない。
十六夜(N)そう、私たちはもう忍びでは無いから…十六夜でも三日月でも無い。
三日月(N)ただの町娘の『ゆな・まお』…それが今の私たち。
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