ホラー声劇『あなたと共に』
あなたと共に
配役
秀貴
凪央未
美奈緒
本編
秀貴(N)色恋も芸の肥やし…昔の人はよく言ったものだ…色恋による惚気、非難も経験として芸に活かせ。
昔はそれで良かったのかもしれない…だが今は非難・炎上で人生が終わる。
それが、生きている人・死んでいる人、問わずに…
凪央未「あなたと」
美奈緒「共に」
秀貴「さあ、今週もお送りいたしました『TakaのRAYS Radio』皆さんどうだったでしょうか?皆さんの身近にあったあるあるな話から不思議な話、お便りありがとうございます!
さて、来週のテーマですが…季節は夏、夏と言えば恋!夏と言えば水着!皆さんの水着姿を見せてください!あ、女性だけね笑
え?違う?…ダメ?ダメかぁ笑
プロデューサーがすごい剣幕で睨んでるんでやめときます笑
さあ、夏と言えばホラー!怪談!
そうです、来週は皆さんの怪談話を募集します!
蒸し暑い夜に部屋を暗くして、蝋燭の明かりだけで楽しんで下さい!何かあっても、責任は取りません!笑
と、言う事で…来週も『TakaのRAYS Radio』お楽しみに!SEE YOU NEXT WEEK!」
凪央未「CM入りました、OKです!お疲れ様です!」
秀貴「お疲れ様、今日の盛り上がりどうだった?」
凪央未「はい、今月の放送の中では1番良かったですよ!みんなあるある話とか、不思議な話とかあるものなんですねぇ…私なんか鈍感すぎて不思議な話なんて無いですよ笑」
秀貴「確かになぁ…凪央未ちゃんは鈍感なところあるよなぁ笑
ベッドでは敏感なのに…」
凪央未「まだ仕事中!」
秀貴「へいへい、今日はこの後は?」
凪央未「あー、この後別番組の収録も入ってるから、今日は局の近くのネカフェに泊まるよ」
秀貴「そっかぁ…明日オフだからって思ったんだけど…それじゃ無理か」
凪央未「ごめんなさい…私も秀貴と一緒に居たいんだけど…」
秀貴(N)入社して半年も経たない凪央未はまだまだ
新米のアシスタントディレクターで雑用から編集の手伝いと毎日忙しく動き回っている。
彼女とのきっかけは、入社したての頃、俺の番組の編集を夜遅くまでやっていたのを俺が見て声を掛けたところから始まった。
少し間をあけて
秀貴「お疲れ様!毎日遅くまでありがとうね」
凪央未「あ、お疲れ様です!」
秀貴「毎日ありがとうね!まったく、こんな大変な作業を1人でやらせて…ディレクターの吉田のヤツ…」
凪央未「いえ、自分が好きでやってますので…それに任せて貰えるのは私としても嬉しいですから…」
秀貴「今日はどのくらいで終わるの?」
凪央未「もう編集も終わって、データ移したら終わりですよ」
秀貴「お、じゃあ頑張ってる凪央未さんにご飯奢ろうかな笑」
凪央未「え、良いんですか?じゃあ…私肉が食べたいです!」
秀貴「あははは、肉かぁ!じゃあ美味い焼肉屋があるから、そこに行くか!」
秀貴(N)彼女とご飯を食べながら色々な話を聞いた…この仕事を目指したきっかけは局に憧れのパーソナリティがいる事、姉もそのパーソナリティが好きな事、姉も以前はこの局で働いていた事…
そんなやり取りがきっかけで俺は凪央未と付き合い始めた。
姉の事が大好きだったみたいで凪央未はよく姉の事を話した。
凪央未「…だから、私は辞めちゃった姉の分まで憧れのパーソナリティさんと働けるのを楽しみたいんです!」
秀貴「そっかぁ…そんなに好かれるなんて羨ましいヤツだぜ、そのパーソナリティは!こんな美人の女の子に俺も好かれてみたいもんだ笑」
凪央未「え?秀貴さんのファンにも女性は居るでしょ?」
秀貴「はぁ…今度俺のファンメール読ませてあげたいよ…8割、いや9割は男だよぉ」
凪央未「えー、じゃあ私貴重なんですね笑」
秀貴「貴重って…まあ、頑張ってくれる子は貴重だなぁ」
凪央未「えー、私も秀貴さんのファンの一人なんですからね?」
秀貴「あはは…そうか、ありがとう笑」
凪央未「今日もご馳走様でした、美味しかったです」
秀貴「どういたしまして」
凪央未「…秀貴さん、私ちょっと……その…」
秀貴「…?あ、あぁ!行ってらっしゃい」
凪央未(N)化粧室で用を済ませて、私は手洗い場の鏡を見る。
一瞬、私の後ろに姉さんが立ってる気がした。
凪央未「ね、姉…さん?」
少し間をあけて
秀貴「おかえりなさい」
凪央未「すみません、席を外してしまい…秀貴さん、明日はオフですよね?」
秀貴「あぁ、そうだけど…よく知ってるね」
凪央未「そりゃあ、昔からのファンですから!」
秀貴「ファンだとしてもオフを把握してる子なんていないと思うぞ」
凪央未「えへへ…今日とか明日、何か用事あるんですか?」
秀貴「…なに?俺の事誘ってるの?笑」
凪央未「えー?そんな事ないですよー、で何か用事あるんですか?」
秀貴「わかったわかった笑じゃあ、もう1軒行くか?」
凪央未「でも遅いですから、すぐにお店しまっちゃいますよ?」
秀貴「…じゃあ俺ん家で飲み直すか?」
凪央未「えー、良いんですか?やったー!」
秀貴「よく言うよ、こうしたかったくせに…じゃあ酒とツマミ買って行くぞ」
秀貴(N)うちに来て彼女はとりとめない話をしながら酒を飲み、気づいたら彼女は寝ていた。
ベッドに寝かせ、俺はソファで横になりながら今日の事を思い返していた。
俺のファン、姉がいる、姉も俺のファンだった…
何故かその言葉がグルグルと頭を駆け巡っていた。
だが酒のせいか、それが何なのか俺は思い出せなかった。
朝起きた時には凪央未の姿は無く『よく寝てるようなので、お先に失礼します…ご馳走様でした』と書かれたメモがテーブルに置いてあった。
間を開けて
秀貴「TAKAのRAYS Radio!さあ、今日は皆様からのお手紙を俺が満足するまで読み漁るって日なんだけども…え?時間は守れ?どうしよっかなぁー笑
今日のテーマは『忘れない気持ち』
皆様からのお手紙どんどん募集してますよ!
あの時の情熱、あの時の初心、あの時の恨み…まあ、恨みは怖いか笑
そんな忘れられない気持ちを書いて送ってくださいね!
さあ、次のお手紙行きましょう!匿名希望さんから頂きました。
TAKAさんこんばんは!はい、こんばんは!
私はとある男性にある約束をされました、けどその約束を果たして貰えないまま、私は遠くに行ってしまいました。
偶然にも少し前にその方と再開したのですが、その約束を忘れているみたいでした。
あの時の、気持ちが今も渦巻いていて忘れられません…約束、思い出して欲しいなぁ。
あー、誓いの約束を忘れられたらそりゃあここ残りになるよね~…その約束が何か書かれてないから分からないけど大切な事なんだろうなぁ、思い出すまで待つのか、思い出させるのか…悩むところだよねぇ…匿名希望さんの今後、何か進展があったらテーマ関係なく、教えてね!」
美奈緒「忘れたの?」
秀貴「え?…何か言いました?今、女性の声聞こえたけど……何も言ってない?あれー、気のせいかな?
はい、ちょっとグダりましたが、そろそろ時間になりそうです!
今日で読めるかなぁって思ったけど、まだまだいっぱいあるから、来週も読み漁ろうかな笑
ではでは、来週もこの時間でお会い致しましょう!
TAKAのRAYS Radio、see you next week!ばいばい!」
凪央未「お疲れ様でした、お飲み物どうぞ」
秀貴「ありがとう!ねぇ、さっき誰も声出してなかった?割とハッキリ聞こえたんだよなぁ…」
凪央未「いえ、こちらでは全員マイクはオフにしていましたから…声は入らないと思うんですけど…問題の箇所、聞き直しましたが声はとくに入ってなかったですよ?」
秀貴「そっかぁ…じゃあきっと気のせいだな!
あ、この前なんで起こしてくれなかったの?起こしてくれれば送っていったのに」
凪央未「いえ、あれだけ気持ちよさそうにイビキかいて寝られてたら起こせないですよ笑」
秀貴「ありゃ、イビキかいてたか…これは失礼しました」
凪央未「いえ、気にしないでください笑
あ、私、まだやる事あるので…お疲れ様でした!」
秀貴「あぁ、引き止めたみたいでごめんね!お疲れ様」
秀貴(N)その日の夜、俺はあの声が気になっていた…忘れたの?そうはっきり聞こえた。
どこかで聞き覚えのある…言いしれない不安の中俺は眠りについた。
少し間を開けて
凪央未「お疲れ様です!」
秀貴「お疲れ様、今日も編集かな?」
凪央未「はい、でも今日は昨日の続きなのですぐに終わるんですよ」
秀貴「お、そうなのか…じゃあ編集終わるの待ってるからご飯でも行こうか」
凪央未「え、良いんですか!?ご馳走様です!」
秀貴「おう!じゃあ頑張って!」
少し間を開けて
凪央未「お姉ちゃんの分まで私頑張るからね」
美奈緒「許さない」
凪央未「え?……今の声…」
美奈緒「覚えてないの?」
凪央未「お、お姉……ちゃん?」
凪央未(N)その声に振り向い目の前にはおぞましい形相をした姉が立っていた。
耳元で何かを囁かれる…その声で私の意識は途切れた。
秀貴「おい!おい!凪央未!」
凪央未「……秀貴さん」
秀貴「びっくりしたよ…仕事風景覗いて見たら倒れてるんだもん」
凪央未「……覚えてますか?」
秀貴「え?」
凪央未「……約束、覚えてますか?」
秀貴「や、約束?」
凪央未「……覚えてないんですね…覚えてない、覚えてない、おぼえてない、オボエテナイオボエテナイオボエテナイ」
秀貴「……な、凪央未?」
凪央未「違う…違う!違う!違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う」
秀貴「おい!凪央未!しっかりしろ!」
凪央未「違う…私は……」
美奈緒「……美奈緒」
秀貴「……え?」
美奈緒「凪央未の姉…私なの…私との約束を忘れて…この子となんて許さない……」
秀貴「約束…美奈緒との……」
美奈緒「そう、私との恋が炎上して……私が追い詰められた時…」
秀貴「……あ、あれは」
美奈緒「私はあの言葉を信じて…このビルの屋上から」
秀貴「そこまで追い詰められてるとは思わなくて…」
美奈緒「ダメよ…あなたは、私のもの……この子には渡さない」
秀貴「や、やめろ」
美奈緒「あなたは私のもの…約束通り、一緒に……」
秀貴(N)俺は無我夢中で走った…『約束』から逃げるように…あの時追い詰められていた美奈緒が言った『死にたい』…その言葉に対して『ずっとそばにいるよ』と言った。
翌日に彼女は無惨な姿で発見された。
頭は潰れ、手足はあらぬ方向に曲がっているのに…笑みを浮かべていた。
美奈緒「なぜ逃げるの?」
秀貴「く、来るな!」
秀貴(N)あの笑みを浮かべた美奈緒が迫ってくる…逃げた先は…屋上だった。
美奈緒「もう逃げられない…逃げられない、逃げられない、ニゲラレナイニゲラレナイニゲラレナイ」
凪央未「秀……貴…さ…ん……」
秀貴「凪央未!?しっかりしろ!」
凪央未「ごめん…なさ…い……姉の分まで…私はあなたを…愛したかった…それが姉に対しての……供養と…思っていた…のに」
秀貴「凪央未!」
凪央未「ごめん…なさい……さようなら……お姉ちゃん、私と一緒に逝こう」
秀貴「やめろぉぉぉ!」
凪央未(N)秀貴さんを傷つけたくなかった…頭に響く姉の声に必死に抗いながら、私は空へと身を投げた。
頭には姉の笑い声が響く…
衝突と同時に全身が熱くなる…頭が異常に脈打つのが分かる…景色が暗くなる
秀貴「……そ、そんな……凪央未……凪央未!」
美奈緒「逃げられない」
秀貴「え?」
秀貴(N)振り向くと、あの笑みを浮かべた美奈緒が立っていた。
そして俺を…
凪央未(N)意識が…遠くなる……眠い…目の前に何かがある…何?
薄れゆく意識を振り起こし、最後に見たのは…頭の潰れた秀貴さんだった。
美奈緒「逃げられないのよ…ふふふ……逃げられない逃げられない逃げられない逃げられない逃げられない……そう、みんな………ニゲラレナイ」
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