二人声劇『推しへ愛のチョコレートを』
推しへ愛のチョコレートを
女性 沙織
男性 翔
沙織(N)推し…人に薦めたいと思う程に好感を持っている人の事。
それは音声配信アプリ、WAVEでも同じ…
沙織「翔にバレンタインチョコ送ったよー!」
翔(N)俺を推してくれる1人のリスナーからのコメント…その人とは半年前からの付き合いでオフ会など参加してくれる人だった。
沙織「手作りだから、早めに食べてね」
翔「ありがとう!いやぁ、沙織からのチョコかぁ…楽しみだなぁ!」
沙織(N)私のチョコを早く食べて欲しい…そう、私の想いが詰まったチョコを…
沙織「届いたら配信しながら食べて欲しいなぁ」
翔「沙織の愛をリスナーさんに見せつけながら食べても良いのぉ?わかったよ、配信しながら頂こうかな!」
沙織「翔は推しだから感謝の手紙も付けておくね」
翔「お、ありがとう!その手紙も配信で読んでいいの?」
沙織「もちろん!翔の事をみんなに知ってもらいたいから!」
翔(N)数日後、沙織からのチョコレートが届いた。
1口大のチョコが3つ程入っている…トリュフチョコだ。手紙も付いていた…表には『配信で読んでね』と書かれていた。
沙織「え?翔、わたしグループコールに上がって良いの?」
翔「もちろんだよ!枠タイ『沙織から届いたチョコを食う!』だからね!
プレゼントしてくれた本人は上げないと!」
沙織「ありがとう!あ、手紙…まだ読んでないよね?」
翔「もちろん!枠で読む約束だからね!とりあえず1個、チョコ食べていい?」
沙織「もちろん!お口に合うか心配だけど…」
翔「沙織が作った物なら美味しいに決まってるでしょ!いただきまーす!……ん、んまぃ!程よい甘さとココアパウダーの苦味とマッチしてて、めっちゃうまい!」
沙織「良かったー!私の想いがこもってるから!」
翔「じゃあ、手紙も読もうかな!」
翔(手紙)『親愛なる推しの翔へ』
あなたの声を初めて聞いたのは1年前、姉が翔の推しで、私は配信を姉と聴いていました。
優しい声、芯のある思考、何よりも仲間を大切にする人柄で私も翔を推すようになりました。
翔「なになに、沙織、お姉さんと俺の枠聞いてたんだ!?」
沙織「そうなの!姉が翔のオフ会とか行く度に羨ましいなぁって思ってたんだよ」
翔「それはマジでありがとうだよ!もう1個チョコ食べてっと…さ、続き読むぞ」
沙織(手紙) 姉が翔のオフ会参加したりする度に、満足そうな顔して帰ってきました。
……でも、ある日泣きながら帰ってきたんです。
理由を聴いたら推しから恋に変わった、告白したら断られた…と
翔「ま、まさか…」
沙織「さあ…続き……読んで」
翔(手紙) 私は姉を責めた…大好きな推しの枠を見れなくした姉を恨みました。
……でも、その時に気づいたんです。
私も翔に恋している…と。
姉は諦めず、まだアプローチするつもりでした。
私はそれが許せなかった…振られたなら潔く身をひけ…と
翔「さ…沙織…あの人の妹…なのか?」
沙織「ほら、もうちょいで終わるから」
沙織(手紙) 翔への想いで私と姉は言い争いになりました。
身を引かない姉と告白したい私で。
でもね、2人で言い争いしてるうちに気づいたんです。
2人で愛しましょうって。
姉と私で翔をずっと推して、ずっと恋をして、ずっと愛せば良いと…
翔「な、なんだよこれ…あれ…体が……痺れて…お、おか…しい…だ…ろ」
沙織「あら、毒が回ってきたのかしら?でも安心してね、死なない毒だから」
翔「な、なにを…す…る……つもり」
沙織「さあ、リスナーの皆さん、この後翔はどうなるのか!
サスペンス風な枠にしてみました!
ではでは、お疲れ様ー!」
翔(N)意識が途切れる寸前、2人の女性がうちに入ってきた…冷静に配信を切り、それから俺を見下ろして、くすくすと笑っていた。
沙織「さあ、姉さん…翔を愛するために…2人の家に連れて行きましょ」
沙織(N)翔…私達はずっとあなたを推してます。
そう……永遠に。