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1月24日
昨夜、わたしはこの寝たきりループからどうにか抜け出せないかと策を巡らせていました。ごはんはちゃんと食べているし、薬も飲んでいるし、目が疲れる作業はしていないし……3日間ずっと横になっていたので、体重も落ちていました。これ以上痩せてはいけないので、対策が必要です。
寝る直前、とあることを思いつきました。睡眠薬を飲まないとどうなるんだろう…?必ず飲めと言われているわけでもないので、飲まなくても良いのです。眠れない夜が怖くて毎晩飲んでいますが、なくても眠れるのでは…?そしたら体が少しは楽になるような気がする。
そうなったらチャレンジです。薬を机に置いたままベッドに潜り、いつものように別野加奈さんの曲をシャッフルで流し、アイマスクをつけます。
真っ暗な世界に、別野さんの声が優しく響きます。
別野さんの曲は、とても繊細です。わたしはじっとその音に耳を傾けていました。
「濾過装置の悲しい仕組み」
切ない歌詞の曲です。悲しくて、苦しくなるのに、どこか優しさに溢れていて、「2人の世界」という言葉がよく似合う曲です。別野さんの世界は、この2人の世界はどんな色をしているのだろう。薄氷の白、夜明けの海の色、優しい木洩れ日…そんなことを考えながら聴きました。
「たぐいまれる」
初めて聴いたときからずっと好きな曲です。ずっと繰り返されるメロディーが、まるで子守歌のように耳に入ってきます。宝石のようにきらきらとしていて、だけど砂糖菓子のように一瞬で溶けてしまいそうな、そんな美しい世界です。
「ene」
イントロを聴いただけで安心感に包まれる曲です。一緒に暮らしていた2人の穏やかな生活が垣間見えるのですが、最後は悲しくて、寂しい。「昔映画で観た」という歌詞が印象的です。映画みたいという感覚、とても分かります。この曲はきっと海辺の花屋で、たった一人で歌っているのでしょうね。その姿を想像すると、苦しくて心が締め付けられます。
と、こんな感じで一曲一曲を大切に聴きました。途中、思わず泣いてしまう曲もありました。アイマスクの中がぐちゃぐちゃになって、目を開けるとレースカーテンが優しく揺れていて、綺麗だなと思ったのを覚えています。
気が付いたら部屋は静寂に包まれていました。全曲聴いてしまいました。失敗したなぁ。そんなことをぼんやり考えていると、ふわりと眠りに落ちました。
自然と目が覚めると朝の6時。おそらく寝たのは2、3時間でしょう。体は重くて、目の下にはクマができていて、鏡の前で思わず笑ってしまいました。
それでも夜は不思議と長く感じませんでした。怖い夢も見ませんでした。必要だったのかもしれません。毛布に包まれて、優しいピアノの音に耳を傾けて、あの美しい世界に小旅行する時間が。