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忘れたとしてそこにある傷を

忘れっぽいところがある。
と、思っていた己の性質は。
自己防衛のため、記憶に蓋をしているだけと気がついた。

母に泣いてぶつけた気持ちを受け止めてもらえずに
一人で泣いていた幼い私をふいに思い出して。
忘れていてごめんと、涙が止まらなくなった。
家を出て一人で暮らそうと思った、一年前のこと。

思えば小学校も高校も一時は保健室登校をしていた。
そうしたくなるようなことがあったけれど、
大人になった私はその頃の私には目を向ける余裕もなく、
蓋をすることで必死に生きてきたのだと今思う。

ただ、蓋をしただけで、傷が癒えたわけではない。

宿題を後回しにすることができない性質だった。
人に評価されるのをいやに気にする性格だった。
生まれ持ったものなんだろうなと今まで思っていたけれど。
蓋の下にふと気がついたのは、今日。

小学生のころ。
何か一つ問題の答えを間違えただけで、
怒鳴って立たせる担任に当たったことがある。
私は先生が怖くて、学校に行くのがいやだった。

宿題をしていて、分からない問題が出てきたとき。
分からないままだと怒られるんじゃないかって、
怖くて、嫌で、泣いて、吐いたことがある。

だから当然のように学校に行くのがいやで。
保健室に登校していたんだっけな、と。
今日になって、積み重なった仕事を見て、思い出した。

忘れっぽいところがある。
否、忘れたことにして前へ進もうとするところがある。
そうしないと膝から崩れ落ちてどうにかなりそうな。
そんなことがこれまでの道に多くあったから。
これは私なりの、生存戦略だった。

もういいのかもしれないな。

これからの私は、今までの私をちゃんと見つめていきたい。
癒えてない傷がそこにあることを、見つめたい。
それで今、泣いたっていいんだということを。
大人げないから、思慮が足りてないかも、そういうこと一旦置いて。
あのときうまく誰にも甘えられなかった分、ちゃんと認めてあげたい。

振り返る日常。

彼が私の好まないことをしていて寂しかった。
それでも大丈夫?と幾度も届いた確認に、大丈夫と答えた。
大丈夫じゃないっていっても困らせるだけだとわかっていて。
だとして大丈夫じゃない自分も放っておけなくて、素直に拗ねて横たわっていた。

末に。
寂しいと言ってもいいんだとあとから伝えてくれた彼に。
寂しかったと伝えて子どものように泣いた昨日のこと。

もうなんにも蓋しなくてもいいように。
どうかこうやって甘えていい人がそばにいてくれる内に。
少しでも傷が癒えますように。

その最中に、その先に。
この人に少しでも、恩返しができますように。

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