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コーディネーター・アラジンのブログ #117 21歳の自分史(1)
My Journey at 21
正月に4年前に卒業した生徒からLINEが来て、①今月中旬に白馬に来るということ、②今は青森県の田子町にいて、明日、文化施設の「みろく館」の1日館長をするということ、③そこでは、「わたしを大好きにした旅~21歳の自分史」というタイトルの講演をすること等が書かれていました。
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彼女は鳥取大学に入学して2回生の夏をタンザニアで過ごして来たと聞いていたので、その体験を是非リポートして欲しいと1年前から頼んでいましたが、多忙のため伸び伸びになっていました。それなら、青森で話す講演を白馬高校でもしてもらえるのではないかと思いつき、彼女も是非多くの人に聞いてもらいたいということで、校長先生に頼み、白馬に来る日程に合わせて、1年生の生徒に語ってもらいました。
実際のところ、どんな話を聞かせてくれるのか分からかったのですが、管理職に頼んで場を設定し、いろんな人に声をかけ、さらにケーブルテレビの取材まであり、内心不安もあったのですが、高校生でも大人でも元気のもらえる話だったので、紹介します。
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イタリア留学の話
小学校を青森で、中学校を北海道で過ごした彼女は、それなら高校も違う県で過ごしたいと考え、白馬高校に来たそうです。(やるなぁ)
2年生の夏まで寮にいて、イタリアに留学、コロナで途中帰国となり帰国後は下宿で過ごすことに。この長野での出会いが人生を大きく変えたそうです(まだ21歳ですよ。「人生」って・・・)。この白馬滞在中もその下宿させてもらっていたおうちに泊めてもらっています。まるでホームステイですね。今や家族の一員となってるようです。
突然、「みなさん、地域の方に挨拶しますか?」という問いかけがあり、
「下宿の近所のおじさんに毎日挨拶をしていたら、親しくなり、ご飯を一緒にいったり、その方が移られた家にお邪魔したりと、挨拶で人と繋がれるのっていいなあと思いました。」
彼女の人との向き合い方が分かりますね。
次に、高校時代の留学の話に移ります。
サルデーニャ島
行先は、イタリアのサルデーニャ島の科学高校に通い、そこでホームステイを経験します。イタリア本土ではなく、サルデーニャ島というのも、ちょっと魅力ですね。
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愛の表現
「イタリアって家族を大切にする国です。夜ご飯は8時とか9時に家族全員が揃って食べます。夕食はコミュニケーションの場になっていました。
家族や友達を凄く大切にします。親は自分の子どもをめっちゃ褒めます。それは家族が大好きだからです。最初はひとり私だけが取り残されたようで悲しかったんですが、時間が経つと私も家族の一員になり、暖かい場所になりました。」
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言葉の壁・心の壁
言葉はどうだったんでしょう?
イタリア語も英語も分からず、最初はグーグル翻訳に頼っていたそうですが、毎日家族と一緒に食事をし、心を通わせていると、
「言語の壁が心の壁にならなくて、あなたを知りたいとか、私を知って欲しいという気持ちがあれば、言語の壁は取っ払われて、心で通じ合えて、そこから話せるようになっていきました。」
これですよね。ホームステイの醍醐味は。
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「イタリア人と言ったら何を思い浮かべますか?」と問われ、生徒たちは「背が高い」とか「おしゃれ」とか答えていましたが、彼女の答えは「ナンパする」でした!! 彼女自身も、3度ほどナンパされたとか。
「そこで、はい、みなさん! ナンパされたときに話せるためにイタリア語を勉強しましょう!」
ちょっぴりイタリア語講座がはじまりました。
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「・・・
bonoは美味しいです。イタリア人は、ジャスチャーをよくやります。
ボーノのときは、この3つのジェスチャーがあります。
さあ、みなさん、やってみましょう!・・・ 」
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次に彼女が体験したイタリアの3大事件が披露されました。
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巨大台風
悪天候で、予定した飛行機が飛ばないと、初めての海外旅行でなくとも不安だったでしょうね。しかも一人旅なのですから。結局ドバイ経由でフィウミーチ空港からサルデーニャへ飛んだそうです。最初からこんなハプニングだから、そのあとは何があっても怖くなくなったのでは。
盗難
それより、パスポートを盗まれると厄介ですね。聞いてみると、留学団体のツアーに参加したとき、参加者全員のパスポートが盗まれたそうで、再発行に手間取り、それでもかえって長くイタリア本土に滞在できて、ラッキーだったそうです。
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強制帰国
最大のショックは、強制帰国でしょうね。コロナは初期にイタリアで大流行があり、ロックアウトのニュースも流れていましたね。そのコロナのために、強制帰国の連絡が来て15時間以内には帰路の機内にいたそうです。通常の留学だと帰国時は沢山の人の見送りやお別れ会をやってもらえるところですからね。友だちや最初のホストファミリーとの別れの挨拶も出来ずに予定の半分で帰ってきたそうです。
コロナのパンデミック時には、アジア人差別にも遭ったそうです。
タンザニアでの生活体験
ここからは、大学生になってからの話です。
なぜ、鳥取大学にしたかというのは、高校の時と同じ、「まだ行ったことのない県に行きたかったから」だそうな。
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大学入学後も、いろんなボランティア活動やプロジェクトを立ち上げて忙しく活躍していたようです。
そういえば、高校時代も、様々なボランティア活動に積極的だったので、私の呼びかけに答えて、「白馬スーパーボランティアクラブ」略称「はすぼら」を立ち上げたことがありました。名刺まで作って、頑張ろうと言っていた矢先に、留学が決まってイタリアに行ってしまいました。「はすぼら」の方も、その後のコロナ禍で活動は下火になりました。
さて、大学の2回生のとき、アフリカに興味を持っていたところ、たまたまアフリカ大好きな人達が集まるイベントがあり、夏休みにタンザニアに行くというのを聞いて、自分も行きたいと手を挙げたそうです。それは支援という形ではなく、現状がどうなのか、現地で生活体験をするというものでした。
「このとき、両親にも泣いて止められ、大学もコロナ禍だからダメだと言っていたけれど、強制ではないということで行ってきました。」
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アルーシャの街
街は、想像していたアフリカと違って、都会だったので驚いたそうです。
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そこで一緒に行った仲間と、現地の家族のおうちにホームステイ。
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白米を食べますが、日本とは全く違う炊き方で、油たっぷりで塩も入っていてこれだけでも美味しかったそうですよ。
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移動手段はバスとバイクです。バスはぎゅうぎゅう詰め。バイクも三人乗り。
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「写真は控えさせていただきますが、アフリカに来て衝撃的だったのはトイレ問題です。街には水洗もあるけど、村とかお店とかでは、水洗トイレではなく、バケツに水が汲んであって、トイレットペーパーも無くて、その水で洗って、流すという感じでした。」
「家のシャワーは水しか出ないので、冷たい水浴びをしていました。」
日本のトイレは世界からするとむしろ異常に清潔ですよね。
便座の話はなかったですが、私のアフリカ経験では、便座がついていないのがちょっと辛かったですね。
幼稚園にも行って、アルファベットとか算数の勉強に参加したそうです。
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ゴゴ族村
「 ゴゴ族の部落の村にも行きました。
この村でホームステイするには、ホストファミリーの娘や息子にならなければいけなくて、貢物をします。それは何かというと
1.砂糖 2.油 3.豆 4.水 5.ソーラー電球 です。」
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買い物ができる街まで歩いて片道3時間というところなので、みんなが行っても普段の生活が妨げられないようにこうした条件を課しているんですね。
調理はこんな具合。
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これは子どもたちの仕事になっている水汲みの様子。牛に引かせています。
井戸まで片道2,3時間かかるので、朝出て昼に帰ってくるそうです。
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夜は火を焚いて、みんなが集まって、あったかい時間をすごします。
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「子どもたちの様子です。日本ではそれぞれの家族が子どもを育てますが、ここでは、村全体が一つの家族みたいに、みんな一緒に過ごして一緒に成長していきます。繋がりが濃い場所だなと思いました。」
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食事はみな手で食べます。でもよくこぼすので、下手なのかと思ったら、こぼれた食べ物は、掃き集めてニワトリや家畜のえさになるそうです。
黄色いのはトウモロコシの粉でつくった主食の「ウガリ」、緑のものは、そこらの草で作った「ムレーナ?」とか言うものだそうです。
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あと、星の美しさにも感動したそうです。白馬でも綺麗ですが、見上げなければならないけれど、ここでは地平線から上は星空なので、見上げなくてもいいそうです。 (まあ、白馬でも山の頂上からは、そうなんですけどね。)
おまけの話題がありました。
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プロジェクトリーダーの人がサソリに刺されました。サソリにさされると何日も寝込む大変なことなのに、村の人たちは、大丈夫だといって、石油をかけて、玉ねぎを貼り付けました。そこに占い師が来て、この人は今日の6時には治っていると言って去りました。でも6時には治らなかった(笑)
数日してこの人は元気になって、今も活躍されています。
こんな時、何て言うか知ってますか?
ハクナマタタ!
みんさん、覚えて帰ってくださいね。
サファリ
サファリに行って、ライオンがシマウマを食べているところを生で!見てきたそうです。
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サファリって本当に広くて、テレビで見るのと違って、空気も味わえるし、大きさも肉眼で分かる。
ここが気になるなと思ったら、ぜひ自分の足で、自分の目で見た方が絶対おもしろいです。
アフリカ暮らしのまとめ
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最後にアフリカの暮らしに感じたこと、気づいたことをまとめて話してくれました。
●自分が自分を好きになれるなあと思いました。日本やイタリアにいたときは、みんなブランド物で自分を飾ろうとするけど、アフリカの人たちは、自分自身で自分を飾れる、私という存在そのありのままが美しいんだよと教えてくれました。
●私たちが生きているのはあなたがいるから、一緒に共存していくことが大事だなあと思いました。
●日本だと、ありがとう・ごめんなさいをちゃんと言いなさいというんですけど、アフリカの人はあまり言いません。それはなぜかというと、それが当たり前だから。助け合うのが当たり前なんですね。
●大人も子どもたちもみんな素敵な笑顔をしています。私も笑顔を大切にしたいなあと思いました。
●アフリカは何もないと言ったんですが、だからこそ、今生きている時間、営みの中にあったかい時間があって、人との繋がりがつよいなあと思いました。
●一番感じたのは、今ある状況を楽しむことの大切さを学んだことと、そもそも楽しいという概念が変わりました!
ここまで、彼女が海外での体験を生徒たちに語ってくれたところを中心の紹介してきました。その中にもあちこちに散らばっていましたが、彼女が感じている生き方みたいなものに迫る話がこのあと続きます。
「21歳の自分史」 後半は次号につづく