禍話リライト:葬儀のあの子
見間違い…ってことにはなってるんですけど…と話し始めたのはAさん。
Aさんが高校生ぐらいまで、とにかく親戚が亡くなることが多かったそうで具体的に数を言わないまでも、あまりにも多すぎると感じるぐらいだった。
危険な職業の方やご高齢の方が多いわけでもない、突然死や自分に非がない不慮の事故などが起こり、父方、母方関係なく平等に…と言ったら失礼かもしれないが亡くなることが多かった。
年齢なども関係なくて自分と同年代の子供も亡くなったりして、頻繁にお葬式に行っていた。
毎回、お葬式に行くと親戚が多いな…とは思っていたのだが行くたびに必ず「今からショッピングモールにでも行くのか?」みたいな私服の女の子がいる。子供でも喪服に近しい服装や学生服だったりするのにである。
いつも、誰もその子の服装に注意することなく、その子も悲しそうに席に座っていたり、葬儀場で見送る際は手を合わせたりしてはいるから、親はどの人か分からないけど、まぁ、服装に関しては宗教上の理由なのかな?と思うようになっていた。
Aさんが高校生ぐらいの時、お葬式が全部終わって家に帰った後に「昔から聞きたかったんだけど…」と私服の子のことを聞いた。隣に座られたこともあるのでほくろの位置まで覚えている。そして「あの子、どこの子なん?」と尋ねると家族は「は?」と言った。
あの子自身は成長しているが服装の感じはあまり変わっていないので柄や特徴などを事細かに伝えたが家族全員「え?」という反応だった。
「この前の葬儀で俺の隣に座ってたじゃん…」と言うと「あんた1番端の席に座ったじゃないか」と言われて初めて、あれ?確かに俺、端の席に座ったわ…と思った。あの葬儀の時はあ、隣に座るんだこの子。頬にほくろがあるな〜とか思っていたのにである。
こういう服装のこういう顔の子だよ!ともう一度伝えたが「そんな子はいないって!怖い!」とお父さんとお母さんが全ての親戚に話したが誰もその子のことを知らなかった。
そして、その話が親戚中に広まった後、
なぜだか分からないが誰も死ななくなった。
不慮の事故や突然死がなくなり、常識の範囲内というか年齢順と言ったら悪いが、そういうお葬式だけになった。
「何というか悪そうなものには見えなかったんですけど女の子は死神だったんですかね…?」とAさんは言った。
Aさん以外、誰も気づいてなかった女の子だが
今、思い出すと怖いな…と思った話があるそうで
「親戚の家でお通夜があった時に俺がトイレに行って出てきたら、その女の子がいたんですよ。あ〜、次にトイレ入るのかな?と思って、どうぞって言ったけど女の子、入らなくて。ずっとトイレの前に俯いて立ってるんですよ。何だろうな…男と女だから恥ずかしいのかな…と思って。
しばらくして使わないから他の親戚が廊下の明かりが消しちゃって。あれ?あの女の子、まだいるよな?と思ってそちらを見たら、まだ立ったままトイレの前にいたんです。親と喧嘩でもしたのかなー?とその時は思ったんですけど今考えると怖いですよね。
…あ、いや、その葬式で亡くなった人なんですけど、そのトイレで死んでたんです。…さすがにお通夜でトイレを使うので後々で聞いたんですけど…」
――――――――――――――――――――――――――――――
こちらはツイキャスで放送されている「禍話」で語られた怪談を元に文章化しました。
出典 禍話フロムビヨンド 第11夜 (2024/9/21) 42:30辺り〜
禍話wikiはこちら
禍話二次創作について