禍話リライト:エレベーターの中の女
オフィスに私しか残ってなくて仕事も終わったことだし帰ろうとエレベーターのボタンを押して、上がってくるエレベーターを待ってたんです。
チーンという音とともにエレベーターの扉が開いたら中にガリガリの体育座りの女性が座ってて。
色は忘れちゃったんですけど、どうみても部屋着で裸足なんです。
えっ?と思ったんですけど体は動作を覚えてて、
いつも通りにエレベーターに乗ってしまったんです。
エレベーターの扉が閉まって、もう乗ってしまったので、とりあえず一階のボタンを押してエレベーターは降りていくんですけど、別にその女性が何かを言ってくるわけではないけど自分をジーッと見てるのがわかって。
そのまま私は微動だにしなかったんですけど突然、「このまま降りたらまずい」という気持ちが起きて、あらゆるボタンを押して四階だったかか三階で降りることができたんですが動悸がすごくて。
違う会社のフロアなんですけどトイレは同じ位置にあったのでトイレに入って落ち着くまで座ってました。
その後、エレベーターに乗るのは怖くて階段で一階まで下ったら、自分が一階のボタンを押していたので当然、エレベーターも一階に止まっていて怖いと通り過ぎようとした時に思ったんです。
ものすごく寒いんです。
遅い時間でこのフロアの冷房は止まってるはずなのに異様に寒いんです。そのまま入館口で警備員さんに「お疲れ様です。フロアは私で最後です」と伝えた時に警備員さんも「あれ?すごく寒いな…」と空調を見てたんですけど、やっぱり止まってて。
…このビル、沢山テナントや会社が入ってるんですけど、あの日、多分なんですけど私以外に残ってた誰かがいたとしたら、その人は亡くなってるんじゃないかなって思ってるんです。違う会社の人が家に帰ってから亡くなってたら私は知らないし確かめようはないんですけど…。
あのエレベーターに乗っていた女性、死神というか不幸を呼ぶ人じゃないかって思ってて。
と言うのも、まずいと思ってエレベーターから急いで降りて閉まる直前に私、振り向いたんです。
閉じる扉の隙間から女性が「えらいえらい」と口元だけ動いてたんです。…感心感心みたいな、よく気づいたねみたいな感じでした。私は出会ってはいけない人と出会って危ないところだったんだろうな…って思います。
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こちらはツイキャスで放送されている「禍話」で語られた怪談を元に文章化しました。
出典 真・禍話/激闘編 第8夜
1:06:35辺り〜
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