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エッセイ 堤防の上の小道

僕の住んでいる街に流れる川がある。
よく散歩で出かける場所だ。

その川は過去に水害で氾濫したことが
あるらしく、堤防が造られていて、
その頂きは小道になっている。

僕がいつも歩く場所は、
自動車道にある歩道橋から堤防に降り、
堤防沿いに上流に向かって歩いて、
次の橋が架かっているところまで。
だいたい1km~2kmくらいだろうか。

堤防の道は、まっすぐに続き、
堤防と並走する道路との
境には桜並木が続いている。
今は枝だけで寂しいが、
春になると、桜がとてもきれいだ。

土が盛られた堤防だから、
夏になると草が生い茂り、
歩くこともままならない。
そうなると、誰かが草を刈ってくれて、
歩けるようにしてくれる。

対岸は雑木林になっていて、
川側に遊歩道がある。

そちらを見ると、
白い犬を散歩している人がいる。

白い犬の上には雑木林の緑があり、
その上には白い雲が重なり、
さらにその上に青い空が重なる。
絵画のような風景。

でも、
僕が大事にしているこの風景も
変わってしまった。

今日、久しぶりに行ってみたら、
堤防の上の小道は舗装のため、
工事中だった。

舗装されれば、歩き易くなるし、
草が生えることもなくなるが、
慣れ親しんだ風景が変わることは、
なにか寂しい。

僕はこの街に住んで、
10年以上になる。
その間にもたくさんの風景が、
変わっている。

古いものは取り壊されて、
新しいものに置き替えられていく。
置き替えられると、
その前がどうなっていたかも、
思い出せなくなる。

こうして、記憶の中の風景は
塗りかえられていく。

感謝とは、過ぎ去ってから
感じるものかもしれない。

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