エッセイ 胸の痛み

胸が痛む。

この痛み。

本当の痛み。

体がやけに重くなり、
胸が苦しくて、
動けなくなる。

心臓の鼓動がはっきりと分かり、
心臓の動悸に体が悲鳴をあげる。

苦しくて、動けなくなって、
クスリを飲んで、横になる。

やがて、少しずつ、おさまる動悸。
何とか落ち着く。

冬は嫌いだ。

僕は山のふもとの街で育ったから、
わりと寒さには強い方だった。

仕事の都合で、
首都圏に引っ越したときには、
こちらの冬は暖かいと感じたことを、
今も覚えている。

でも、最近は、
こちらの冬に体が慣れたのか、
今の冬が以前より寒いのか、
真冬の寒さが体にこたえる。

寒さは、苦手とかなのではなく、
寒さで血圧が高くなり、
心臓の鼓動も早くなり、
胸が苦しくなる。

僕は、あと、どのくらい、
耐えられるのだろう。

考えなくてもよいことを、
考えてしまう。

おととしより、去年。去年より、今年。
少しずつ、少しずつ、体力が落ちている。

遠い昔、僕はバイクで一人旅をした。
テントをもっていき、
キャンプしながらの気ままな旅。

しばらくして、
大人の事情からバイクをオリ、
自分の気持ちに封印をした。
「また、乗れるさ。」と。
いつか、もう一度バイクに乗る日を
思い描いて。

それから15年の歳月が流れた。

もう、乗れない。
体力がない今、とても無理なことを知る。

したくても、できないことがある現実。
昔のようには、動けなくなっていく、
自分の体。

冬の寒さは、僕の体をいじめる。

寝ていても、寒さで目が覚める。
寝不足は、胸の動悸をさらに激しくする。
寝るために、また、クスリに頼る。

僕の旅は終わってしまった。
もう、自由にはなれない。

僕を自由にしてくれる世界を求めて、
僕は詩を書く。

僕は詩を書きながら、
自分が何を求めているのかを知る。

そして、誰か、
僕の詩を読んでくれる誰かと、
同じ世界を分かち合う。

僕は、力を分けてもらう。
明日を生きるために。

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