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エッセイ 山吹に誘われて

*はじめに
山吹の写真を撮りました。
あまりにもキレイだったので、
エッセイも書いてみました。
あまり山吹のことは書けてませんが。

暖かな陽に誘われて、
いつもの散歩道を歩いた。

橋のたもと辺りで、

ふと、あの山吹は
どうなったか気になって、

道路を挟んだ向こう側の
川沿いの小道を遠く見る。

すると、
満開の山吹が広がってた。

僕は車が来ないか確認して
道路を渡り、

遊歩道になってる小道へ
降りていく。

先日ここを訪れたときは、
まだ咲き始めだった。

ほんの数輪咲いただけで、
山吹とはこんな感じかと
思ったものだ。

こんなに見事に咲くなんて、
少し意外だった。

山吹は小道沿いに奥まで続く。

きれいな花たちに誘われて、
僕は小道の奥まで歩いた。

すると、
それまで見たことのない、
神社の入り口が突然現れた。

僕はここには
何度か来ているけれど、
神社なんてなかったはずだ。

この遊歩道は茂った林沿いに
道が続き、少し歩くと、
途中で道が途切れていた。

確か、そのはずだった。

それが今日見ると、
小道の途中に○○神社と、
看板が出ていて、
上へと昇る階段があった。

下から見上げると、
鳥居らしきものも見える。
辺りには誰もいない。

違和感を覚えながらも、
好奇心の方が強く、
僕は階段を昇っていた。

階段を昇り切ると
いきなり境内になっていて、
小さな石の鳥居が僕を迎える。

鳥居の先には
小さな社殿があって、

左右には、
さらに小さな祠が
いくつか並んでいた。

雰囲気に特に妖しさはなく、
社殿を照らすやさしい光が、

僕を招いているようにも
思えた。

鳥居も、祠も、真新しく、
社殿は少し、
修理されたような感がある。

石の鳥居の直ぐ脇に、
石碑が建っていた。

読んでみる。

この神社はかなり昔から、
この地にあったものらしい。

最初は木造の鳥居だったのが、
古くなり、

明治の頃に、何某とかいう人に
石の鳥居を寄進されたとのこと。

当時この辺りでは、
石の鳥居が珍しかったらしく、
参拝に来る人が多くいて
お祭りなどもあったらしい。

それが関東大震災で崩落し、
長く立ち入り禁止に
なっていた、

というところまで
書いてあった。

(なぜか写真を撮る気にならず、
メモをする気にもならず、
僕の記憶に頼るのみです。)

たぶん、最近になって、
再建したのだろう。

なぜか安心した僕は、
手を合わせて、お参りをして、
帰ってきた。

気づきにくい場所に
あるにもかかわらず、

帰る途中、
訪れる人を見かけた。

古くからこの街を
見つめてきた神社は、

深い森の中にあったとき、
にぎやかさの中にあったとき、
ひっそりと埋もれていたとき、

それぞれの中にあって、
誰かに支えられていた。

そしてもう一度、
しずかに人の訪れを待つときを、
今、山吹と共にいる。

雨宿りのできる場所はないけれど。


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