エッセイ 冬とダイコン
昨日、車を走らせていたときのこと。
大きめの畑をもつ農家の脇を行き過ぎたとき、大きなダイコンが何本も掘り返されているのを見た。
その真っ白で、立派なダイコンを見たとき、
僕はある物語を思い出した。
昔、「まんが日本昔ばなし」というアニメがあって、毎週欠かさず見ていたのだけど、
そのお話しの中に、題名は忘れてしまったが、弘法大師のお話しが出てくる。
(あらすじ)
「雪深い山奥に弘法大師が訪れたときの事。
深い雪に難渋していた弘法大師はある農家を
訪れて一夜を泊めてもらうことにした。
農家の老人は弘法大師とは知らないけれど、
訪れたお坊さまに何か食事を差し上げたいと思う。
けれど、貧しい暮らしで出せるものが何もない。仕方なく、隣の農家の畑から雪に埋まった大根を拝借し、お坊さまにふろふき大根を差し出す。
老人の足跡が雪に残っているので、盗んだことがバレれば役人に引き渡される。
それを察した弘法大師がそっと、お経を唱えると、先ほどまで止んでいた雪が降り出し、
老人の雪の足跡を消してくれる。」
子どものころ、僕は大根が好きではなかった
けれど、このお話しを見てから大根が好きになり、ふろふき大根は好物になった。
もてなしとは、
慈悲とは、
奇跡とは、
短いお話しの中に、いろいろが詰まっている。今でも覚えているのだから、印象深かったのだろう。
今日の様な寒い夜は、
ふうふう、と大根に息を吹きかけながら
ハフハフ、とおいしく食べたい。
書いていたら食べたくなった。
明日はふろふき大根にしようか。